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世界中で麻疹ワクチンの接種率が低下!このあと何が起きる!?【小児科医】

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健康状態の悪い女の子
●写真はイメージです
yamasan/gettyimages

新型コロナウイルス感染症が落ち着いてきたかと思われる今、世界中でワクチンの接種率の低下が問題となっているそうです。太田先生は「とくに麻疹ワクチンの接種率の低下が問題です。世界では何が起きているのか、日本では何が起きるのか心配です」と言います。
「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」連載の#32です。

※日本では麻疹予防ワクチンは、風疹も防げるMR(麻疹・風疹混合)ワクチンを使っているので、以下MRワクチンと記載します。

コロナ下で、MRワクチン接種率が低下。集団免疫の危機が!?

先日、わが国の2021年度のMRワクチンの接種率が下がっていることがわかりました。新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)が広がり始めたあとに、世界的に麻疹を含むワクチン接種率の低下傾向がみられています。
日本も例外ではありません。厚生労働省が公表した令和3年度(2021年度)のMRワクチンの予防接種の実施状況によると、第Ⅰ期のMRワクチン実施率の全国平均は93.5%であり、MRワクチンの2回接種を開始した2006年以降で最低だったとのこと。

麻疹に対する集団免疫を維持し、麻疹排除状態を続けていくためには95%以上の接種率が必要だとされています。また風疹は、ほぼ5年ごとの流行が見られていて、前回の大流行から10年たっているので、このままではまた流行して先天性風疹症候群(CRS)の赤ちゃんが生まれる可能性が高まると心配されています。

千葉市のデータでも接種率の低下がわかる

接種率低下は、私のクリニックがある千葉市でも同様です。千葉市の調査ではMRⅠ期の接種率は、2019年が95.5%、2020年が98.5%だったものが、2021年には92.0%と突然下がっていることがわかりました。
千葉市の出生数は2021年で5940人。前年より6.5%低下したということは、この年に接種対象となる年に生まれた386人が麻疹・風疹に対して無防備なまま日常生活を送っていることになります。麻疹は命にかかわることもある病気ですし、子どもが風疹にかかると母親もかかる確率も高まり、次の子を妊娠していればCRSの赤ちゃんが生まれる確率も高まります。

コロナの流行とコロナワクチンに関連して、接種控えが!?

コロナ流行初期は、発熱患者の大半はコロナ陽性者で、ほかの病気、たとえば麻疹も風疹もインフルエンザもほとんどお目にかからないという特異的な状況でした。
コロナ流行当初は、医療機関受診を避ける傾向もありましたが、ワクチン接種率への影響は軽微でした。しかし2021年になっての接種率が低下しています。これはなぜ起こったのでしょうか。
あくまで個人的な推測ですが、コロナ流行の途中から子どもの患者も増えて、小児科への受診控えが加速したのが原因ではないかと思っています。
さらにコロナワクチン完成後、成人は必死でワクチン接種を受けましたが、子ども用ワクチンの開発は遅くなり、その間にコロナワクチンに対する信頼度が下がり、ワクチンへの不安(たとえば副反応)も募り、すべての定期接種ワクチンも接種をしないと決めたという人が徐々に現れているのではないかと推測しています。

世界のあちこちで、麻疹のアウトブレイクが確認されている

コロナの影響で、人の動きの減少や外出行動の制限等があり、 2020年には世界の麻疹発生報告数は減少し、2021年もその傾向が継続しました。
しかし、コロナ対策の影響などで、2021年には、本来なら麻疹ワクチンを受けられていたはずの4000万人の子どもが接種機会を失ったと報告されました。その影響だと考えられますが、2022年に入り、 アフリカ地域や東地中海地域を中心に大規模な麻疹アウトブレイクの発生が確認され、 世界的に症例報告数が増加している状況です。
この傾向は20年以上前に麻疹排除国となっていた米国でさえ起こっていて、一部地域で麻疹の感染拡大が起こっています。
2023年3月26日には、ニューヨーク州ロックランド郡で、4月9日には、大都会のニューヨーク市でも,麻疹の流行に対しての非常事態宣言発出にまでに至っているのです。今後さらに感染拡大が起きるのではないかと懸念されています。

集団免疫がおびやかされている日本に、麻疹ウイルス・風疹ウイルスが持ち込まれたらどうなるか

今後もMRワクチン接種率が下がったままだと、海外から国内に麻疹ウイルス・風疹ウイルス持ち込まれることによる流行発生が心配されます。麻疹・風疹から子どもと妊婦を守るには、あらかじめワクチン接種しておくことが重要です。
接種率が下がったままでは国内でも麻疹・風疹の大流行が起こるかもしれません。1歳になったお子さんのMRワクチン接種は済んでいますか。就学前年の年長さんのⅡ期接種も済んでいますか。ほかに接種を忘れているワクチンがないでしょうか、今一度、母子健康手帳の予防接種記録ページを開いて接種歴を確認しましょう。未接種のままのワクチンがあれば、急いで小児科にワクチン接種の相談をしてください。

文・監修/太田文夫先生

構成/たまひよONLINE編集部 

麻疹、風疹はもちろんのこと、予防接種は感染症から子どもたちをそして社会全体を守るために大切なものです。接種もれがないか確認をしましょう。

参考/
・NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会HPのNEWS一覧
・予防接種推進専門協議会HPのお知らせ
・IASR Vol. 43 p209-210: 2022年9月号

●記事の内容は2023年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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