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ワンオペ育児で離婚危機。ストレスによる体調不良の日々、大泣きする出来事が…。『ほしいのはつかれない家族』の著者・ハラユキさんにインビュー

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ハラユキさん著「つかれない家族」(講談社)より。
ハラユキさん著「つかれない家族」(講談社)より。

イラストレーター・コミックエッセイストのハラユキさんは、夫婦関係や子育てで生じるさまざまな問題をテーマに作品を発表しています。一児の母として子育てに奮闘するなかで「どうすれば“つかれない家族”でいられるのだろう?」と考えるようになり、国内外での取材や発信を続けてきました。そんなハラさんに、ご自身のこれまでの夫婦関係や育児について伺いました。

「ワンオペ育児上等!」のはずが、体が悲鳴を上げて…

「つかれない家族」(講談社)より。育児疲れに気づかなかったころ。
「つかれない家族」(講談社)より。育児疲れに気づかなかったころ。

 会社員の夫と、現在11歳の息子「ぽうちゃん」と暮らすハラユキさん。ここまでの夫婦の道のりは紆余曲折あったと振り返ります。

「夫は昔から激務で、残業も海外出張も多い人。共働きなのに、いつのまにか私だけが家事をする体制になってしまっていました。妊娠中の両親学級にも出られないほどだったので、私も『夫は忙しいから、きっと1人で育児するんだろうな。でも体力あるから何とかなるかも~!』って軽く考えていたんですけど、今思うと本当に何もわかっていなかったですね…(苦笑)」

 2012年2月にぽうちゃんを出産。ハラさんはフリーランスのため育休ゼロ、産後1か月半にして早々に仕事復帰しました。ワンオペ育児、家事、仕事、その合間に保育園探し…と、怒涛の育児生活に突入。その一方で夫の意識は変わらず、いつまでも家事・育児を自分ごとにしてくれないことから、産後クライシス問題(※)へと発展してしまいます。

「靴下を洗濯かごにもっていかない、夜のごはんはいらないと連絡をしない、食べたものを片づけない…。せめて自分のことはやってよ!!って、よく揉めていました。同じワンオペ仲間のママ友は『男なんてそんなものだよ』『あきらめたほうがラクだよ』とはげましてくれて、その気持ちはうれしいと思いつつ、家族なのに家族をあきらめるってなんだろう?って、すごくモヤモヤしていました」

 それでも「なんとかやっていこう」と日々の家事育児をこなしていたハラさんでしたが、体はいつの間にか悲鳴を上げていました。産後3か月ころから、ストレスによる帯状疱疹や胃腸炎になったり、謎の発疹が出るなど、体調を崩してしまいます。

「夫にはイライラするけど、子どもはとにかくかわいいし、育児は楽しい。だからこそ、ひとりで育児できる、このまま頑張れると思ってました。でも、本当に意識が甘かったです。いざ自分が体調を崩したときに誰が子どもの面倒を見るのかとか、まったく念頭に入れていなかったことが私の大きな反省点です」

※産後クライシス問題…出産・育児を経て夫婦関係が難しくなり、離婚にまで発展しかねない状況のこと。

「ごめんね、ごめんね」と大泣きした日

「つかれない家族」(講談社)より。保育園のお迎えのときに…。
「つかれない家族」(講談社)より。保育園のお迎えのときに…。

 決定的な出来事は、1歳のぽうちゃんを自転車に乗せて帰ろうとしたときのこと。睡眠不足と疲れもあって、自転車を倒してしまいました。ぽうちゃんはびっくりして泣きだしたもののケガはなく、すぐに泣き止みましたが、ハラさんは自分のワンオペ育児の限界を痛感したといいます。

「『ごめんね、ごめんね』って大泣きしながら、大通りを自転車をこいで家まで帰りました。実は0歳のときも、私が風邪をひいて寝込んでいるときに、ぽうちゃんが高いところから落下してしまったことがあったんです。幸い、夫のコートがクッション代わりになって大事に至りませんでしたが、2回も危ない目に合わせてしまったことを後悔しました。

 私は自分の負担を減らしたいと思って、夫に『もっと家事育児して!』って伝えてきました。でもそうじゃなくて、大事な子どもの安全と命を守るためにも、夫が家事育児を担うことが必要なんだと思いました。夫には無理だって私があきらめてしまうことは、子どもを危険にさらすことと同じだと感じたんです」

 それ以降、ハラさんはあきらめずに夫に伝え続け、その末に「やっぱり無理だ!」と離婚届を手渡したことも。そんなハラさんの本気が伝わり、夫は多忙な中でも料理を担当したり、家事育児への参加が増えて、だんだんと夫婦間のバランスが取れるようになっていきました。

「もう、やーめた!」と、ふっきれた

「つかれない家族」(講談社)より。親子3人でスペイン暮らしに。
「つかれない家族」(講談社)より。親子3人でスペイン暮らしに。

 しかし2017年、ぽうちゃんが5歳のときに、劇的な環境の変化がハラ家に訪れます。

「夫の仕事の都合で、スペインのバルセロナに家族で短期赴任することになったんです。スペインは大好きな国でうれしかったのですが、私はスペイン語がわからないし、夫は相変わらずの激務。再びワンオペ育児を経験することになってしまい、仕事を辞めるべきか、最初のころはすごく悩みました」

 また振り出しに戻ったような育児生活。しかし現地で新たにママ友や知り合いができ、いろいろと話をするうちに、ハラさんの好奇心に火がつきました。
「とても夫婦仲が良かったり、家事育児の分担が満足にできている人たちを見て『どうやってるんだろう? うちの参考にしたい!』と興味を持ちました。スペインのほかにもフランス、アイスランド、スウェーデンなど、いろいろな国のリアルな夫婦関係や育児事情を、東洋経済オンラインの『つかれない家族』という連載で紹介しました。

 『つかれない家族』でいるにはどうしたらいいんだろう?って、夫とも話し合うようになりました。取材で聞いた夫婦の方法を試してみたり、自分たちに合わなかったらやめてみたり。こうして私たちなりの方法を模索していきました」

 スペイン発の「つかれない家族」の記事は、SNSで大きな話題になりました。各地で取材を続け、十人十色の夫婦関係を知り、夫とその内容を共有して夫婦で試していくうちに、ハラさん自身の内面にも変化が生じたといいます。

「なんかもう、やめようって思ったんです。ワンオペしなきゃって無理したり、家事をする夫にいちいち『ごめんね』と言ってしまったりするのを全部やめよう。夫の仕事は応援するけれど、自分のやりたいことも主張しよう。自分で自分を縛るのやーめた、私だって仕事ガンガンするしスペインも楽しむ、私の人生だもん!って、思い直すことができました」

正解はないからこそ、話し合って前に進んでいく

「つかれない家族」(講談社)より。スペイン生活は徐々にハラ家の意識も変えていきました。
「つかれない家族」(講談社)より。スペイン生活は徐々にハラ家の意識も変えていきました。

 2年間のスペイン生活を経て日本に帰国後、ハラさん夫婦の関係性はより良くなっていきました。

「帰国後しばらくしてコロナ禍が始まってしまったのですが、在宅ワークに切り替えた夫が家の中を片づけだしたり、家族を代表して買い物でまとめ買いをしたり、常備菜のストックを作ってくれるようになりました。おかげで家事分担に関しては今、まったく不満はありません」

 育児や夫婦関係に正解はないからこそ、夫婦間の話し合いが大事だと今のハラさんは考えます。

「家庭によって、家事育児のベストな配分は違うので、必ずしも半々の分担がいいわけじゃありません。バリバリ働くパパと専業主婦のママの夫婦は“イマドキじゃない”って言われるかもしれませんが、それで本人たちが満足していたら全然いいですよね。自分たちにはどの形が合っているのか、夫婦で話し合って試していくことが大事だと思うようになりました。

 それでも予期しないことは起こるし、子どもが大きくなったら学校のPTAとか受験とか、次々新たな問題が出てきます。そのたびに話し合って、やり方を変えて、変化し続けることが大切なのかな。そうしてお互いの答えを探りながら、『たとえつかれたとしても、幸せでいられる家族』でいられたらいいなと思います」

(取材・文 武田純子)

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年5月の情報で、現在と異なる場合があります。

ハラユキさん

コミックエッセイスト&イラストレーター。編集プロダクション勤務を経て2003年に「カワハラユキコ」名義でイラストレーターとして独立。2017年、現在の「ハラユキ」に改名。2008年に結婚、2012年に男児出産。一児の母。著書に「ほしいのはつかれない家族」(講談社)など。家事育児と家族のコミュニケーションをテーマとしたオンラインコミュニティ「バル・ハラユキ」運営中。

コミックエッセイスト&イラストレーター・ハラユキ公式サイト

東洋経済オンライン ハラユキさんページ

バル・ハラユキ(ハラユキさんがオーナーを務める“架空バル”のオンラインコミュニティ)

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