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妊娠8カ月のエコー検査で二つ目の心疾患が判明・・・。健康以外に望むことなんて何もないと思い、「つむぎ」と命名【医師監修・体験談】

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長野県立こども病院に入院中の、生後4日のつむぎちゃん。生後7日には1回目の手術を。

ママのおなかにいたときに、「修正大血管転位症(しゅうせいだいけっかんてんいしょう)」、「大動脈弓低形成(だいどうみゃくきゅうていけいせい)」という二つの大きな心臓の病気が見つかった、西田つむぎちゃん(仮名)。生後8カ月のとき長野県立こども病院で、世界初の高難度の同時手術を行い、成功しています。
つむぎちゃんの病気が判明したときのことや手術までのことについて、夫の隆さん、妻の美穂さん(ともに仮名)に話を聞きました。3回シリーズの2回目です。

赤ちゃんが生まれたあとの生活を考えて、長野県立こども病院に転院

長野県立こども病院に入院中、生後1カ月のつむぎちゃん。

つむぎちゃんに先天性心疾患「修正大血管転位症」が判明したのは、美穂さんの実家がある四国の大学病院です。美穂さんは里帰り出産のために帰っていました。大学病院では、今後のことについて話し合いました。

「医師からは『ここの病院でも手術はできるけれど、かなり症例が少ない、難しい手術であること。そして手術後も経過観察や定期的な検査なども必要な病気であること』などを説明されました。また、全国での小児の心疾患手術の実績が多い病院なども教えてくれました。

医師からは『産後、自宅に戻って子育てをするならば、自宅近くの大きな病院に転院したほうがいいでしょう。自宅から通える範囲には、長野県立こども病院があります。どうしますか? 長野県立こども病院は、小児の心疾患手術でかなり実績がある病院です』と言われました。

長野県立こども病院は自宅から車で通えるので、紹介してくださいとお願いすることにしました。医師からは『長野県立こども病院で、しっかり検査を受けたほうがいい』とも言われました」(美穂さん)

長野県立こども病院は、1993年の開設以来小児の心疾患の手術総数は6000例を超えています。
美穂さんは、四国での里帰り出産の予定を変更し、妊娠8カ月に入り隆さんが待つ自宅に戻りました。 そして紹介状を持って長野県立こども病院を夫婦で受診します。そこで、もう一つの大きな病気が見つかります。

何度も行ったエコー検査で、二つ目の先天性心疾患「大動脈弓低形成」が判明

夫の隆さんと美穂さんが、長野県立こども病院を初めて受診したのは、妊娠8カ月に入ってからです。

「長野県立こども病院では、エコー検査を何回も受けました。おなかの赤ちゃんが動いたり、心臓が見えにくい姿勢になっていたりするので、何回か検査をしますという説明でした。
何回目かのエコー検査で、もう一つの先天性心疾患の大動脈弓低形成が見つかり ました。『心臓に二つも大きな病気があるの?』と動揺しました」(美穂さん)

最初、つむぎちゃんに見つかったのは修正大血管転位症です。修正大血管転位症は、左右の心室が入れ替わってしまっている難病で、原因は不明です。
手術をしなければ、心不全や不整脈を発症する可能性もあります。またこの病気は、さまざまな心疾患を合併しやすいため、病院ではエコー検査をていねいに行いました。

そこで見つかったのが大動脈弓低形成です。大動脈の一部が生まれつき細く、下半身に十分な酸素を含む血液が送れず、何もしなければ生後1カ月以内にほぼ100%の子が亡くなってしまうといいます。

「最初のうちは、左の心室と右の心室が入れ替わってしまっているということが、どういうことなのか、それによってどんなことが起こるのか本当にわからなくて。先生の説明も何度も聞きましたし、いろいろ調べて、少しずつ理解できるようになっていきました」(隆さん)

大動脈弓低形成は、長野県立こども病院では、年間10名ほど診察すると言います。つむぎちゃんのように修正大血管転位症と大動脈弓低形成を合併するのは本当にまれで、日本で3~4年間に生まれる赤ちゃんのうち1人程度だそうです。

「長野県立こども病院では、産科外来と胎児心臓外来に通いました。
医師からは『赤ちゃんがおなかの中にいるときは、動脈管が全身に新鮮な血液を送ってくれるから心配はないので、経腟分娩で出産できます。ただ生後1~2日で動脈管は自然に閉鎖してしまい、下半身への血流が妨げられるので、すぐにNICU(新生児集中治療室)に入院して手術をする必要があります』と言われました。

そのほかにも、出産後に必要な手術やケアの説明を受けたり、私たちも情報を集めたりしながら、1週間に1回、産科に通い妊婦健診を受け、エコー検査を受けていました。病気がわかったことから、病院側も出産後の体制をいろいろ整えてくれている感じでした。不安はもちろんいっぱいありましたが、生まれる日を待ちました」(美穂さん)

予定日より1週間ほど早く、つむぎちゃんが誕生

4カ月のつむぎちゃん。生後7日の手術後は、腕や足に点滴をして血液のめぐりをよくします。

つむぎちゃんが生まれたのは、2022年1月6日のお昼過ぎです。予定日より1週間ほど早い出産でした。

「医師から『年末年始になるから、念のため入院しておきましょう』と言われて、急きょクリスマスの日に入院することになりました。

私自身の体調はよかったので、病院のベッドの中で赤ちゃんの名前を考えていました。女の子とはわかっていたので、 夫とずっと名前のことは相談していましたが、いいなと思う名前が浮かんでも画数がよくなかったりして、なかなか決まらなくて・・・。
でも病院のベッドの中で『つむぎ』っていいかもと、突然ひらめいたんです。なんかふっと思いついたような、降ってきたような感じです。そこですぐ画数を調べてみたら、健康運がよかったんです。人との縁、出会いをつむぐという意味もあり、この名前しかない!と思って夫に相談して、つむぎに決めました。

修正大血管転位症、大動脈弓低形成という二つの大きな先天性心疾患が見つかってからは、健康以外に望むことなんて何もないと思っていました」(美穂さん)

年が明けて1月5日のお昼前に破水して、翌日の早朝から陣痛が強まり始め、経腟分娩でつむぎちゃんが生まれました。出産には夫の隆さんも立ち会いました。

「つむぎは体重3174g、身長49cmで生まれて、見た目は元気な赤ちゃんに見えました。産声も聞こえましたし、ほっとしました。でも、すぐにNICUに入院しました」(美穂さん)

生まれてすぐにNICUに入院し、生後7日で両側肺動脈絞扼術を

6カ月のつむぎちゃん。入院中だけど、ミルクの飲みがよくすくすく成長。

つむぎちゃんは生まれてすぐにNICUに入院し、生後7日に、両側肺動脈絞扼術(姑息術)いう手術をします。美穂さんは、産後1週間で退院しています。

大動脈弓低形成は、大動脈の一部が生まれつき細いために下半身に十分な酸素を含む血液が送れなくなる病気です。生まれてすぐに手術が必要になります。

「医師からは、まずは1回目の手術として、両側肺動脈絞扼術(姑息術)を行うと説明されました。肺に流れる血液の量を減らし、心臓への負担を軽減するために必要な手術という説明でした」(隆さん)

手術は3時間かかり、無事成功しました。

「『小さい体でよく頑張ったね』といっぱい声をかけてあげました」(美穂さん)

つむぎちゃんは、1回目の手術が終わったからといって、退院することはできません。下半身への血流を維持するためには入院して点滴治療が必要です。そして1カ月後に、足のつけ根から心臓にカテーテルを通す手術をします。

「医師から『この手術は、酸素濃度を上げるために必要』と説明されました。 しかしカテーテルがうまく通らずに、予定よりも早く手術が終わってしまいました」(隆さん)

「説明されていた手術の時間は2時間ぐらいとのことでした。でもこのときは、手術が30分ほどで終わってしまい、うまくいかなかったという説明がありました。大変な疾患だということは理解していても、少しでも順調に治療が進んでほしいと願っていたので、かなりショックでした。『つむぎはどうなるの?』と涙が止まりませんでした。長野県立こども病院には、さまざまな大きな病気を抱える子どもたちが入院していて、心臓疾患についても闘っている子どもたちが多くいます。この手術も、つむぎの体調もあるのでしょうが、予定が数回変更されたうえでの手術だったので、どうか成功してほしいという願うような気持ちだったんです」(美穂さん)

それから1カ月後に、同じ手術が行われて無事、成功します。
そして世界初の三つの高難度同時手術に備えます。修正大血管転位症に2つの手術、大動脈弓低形成に1つの手術が必要なのです。

「医師には『手術をするには、とにかく体力が必要で、体重が10kgぐらいになるまで待たないといけない』と言われました。私たちは、『どうなるんだろう・・・』という不安を抱えながらも、つむぎの成長と手術の日を待つしかありませんでした」(隆さん)

【小沼武司先生から】妊娠中に早期発見できたことが救いに

つむぎちゃんに見つかった修正大血管転位症は、さまざまな心疾患を合併することが多い病気です。つむぎちゃんの場合は、大動脈弓低形成を合併していました。つむぎちゃんは妊娠中に病気が見つかりましたが、出産後に診断されて、時に命に関わる事態となることもあります。医療技術の進歩のおかげで、早期発見できると命が救える病気になっています。

お話/西田隆さん、美穂さん 監修/小沼武司先生 協力/長野県立こども病院 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

隆さんと美穂さんの心の救いは、つむぎちゃんの日々の成長でした。「つむぎと名前を呼ぶと目で追ったり、ニコッとかわいい笑顔を見せてくれたり。この尊い命をどうにか守りたいと思った」と言います。

シリーズ3回目は、長野県立こども病院で行われた、世界初の高難度の同時手術について紹介します。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

小沼武司先生(こぬまたけし)

PROFILE
長野県立こども病院 心臓血管外科部長。医学博士。1996年秋田大学医学部卒。同年4月、東京女子医科大学心臓血管外科入局。三重大学胸部心臓血管外科准教授などを経て現職。心臓血管外科修練指導者・専門医、日本外科学会指導医・専門医、日本循環器学会専門医。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年5月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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