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昨年、わが子の発達障害を公表。息子を助けるためには社会の理解が必要、と動き出したワケ【フリーアナウンサー・赤平大】

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石鹸の泡のために手を伸ばす幼児の女の子
●写真はイメージです
Hakase_/gettyimages

フリーアナウンサー・赤平大さん(44歳)の息子、太一くん(仮名・12歳)は、4歳のとき発達障害と診断されました。そして赤平さんは、2022年に太一くんが発達障害であることを公表しました。太一くんの小学校時代の様子や、赤平さんが太一くんを助けるために行ってきたことなどについて聞きました。

小学校6年間登下校を付き添い、小1のときは毎日学校に電話して確認

小学生のときの太一くんのある日の予定を書き込んだホワイトボード。“指示の見える化”は行動を切り替えるのに役立ちます。

――太一くんは4歳のときに発達障害と診断されました。小学校入学前に、太一くんにそのことを話したそうですね。

赤平さん(以下敬称略) 公立小学校に入学したのですが、入学前に区から、「一般クラスに在籍しながら、週2回発達上特性のある児童が通う教室で指導を受けることになります」という通知が届きました。このことは太一に説明する必要がありますから、「太一はADHDなんだよ」と話しました。
できないことがあったり、衝動的に行動してしまったりするのは、太一の脳の特性によるもので「僕はダメなんだ」と思う必要はないと説明しました。そして「持って生まれたものすごい才能がある」と毎日伝え、他人と比べないように習慣づけました。当時の太一は理解していたのかわかりませんでしたが、小学校卒業のときのタイムカプセルに、「自分を見失わない」と書いたメモを入れていたので、人と比べない自分だけの価値観を持ってくれたのかなと、うれしく思っています。

――小学生になっての生活はいかがでしたか。

赤平 予想を上回る大変さでした。まず登下校時に衝動的に道路に飛び出してしまうので、保育園時代同様、毎日送り迎えが必要でした。また、先生が言ったことを覚えていられないから忘れ物が多いし、宿題もわからない。1年生のときは毎日担任の先生に電話して、学校でのできことや家でやること、用意するものなどについて確認していました。

――太一くんは予定どおりに行動するのも苦手だとか。

赤平 検査でわかったのですが、太一はワーキングメモリ(※1)が非常に高いのに、インプットした情報を処理する機能が相対的に大幅に低いという脳の特性があります。すると膨大な情報の中から必要なものを選ぶことが難しくなるんです。「脳内ケスラーシンドローム(※2)」と私は呼んでいますが、そのせいで先の見通しを立てて行動を切り替えたり、予定どおりに行動したりするのが苦手です。「おやつを食べたらスイミングに行くよ」と言葉で説明しただけだと、おやつを食べたあと違うことを始めてしまうんです。

そこで、“指示の見える化”を行いました。太一がやらなければいけないことをホワイトボードに書いておいて、「ほら、次はこれをやる時間だよ」とホワイトボードを見せながら説明する。すると「あ、そうだった」と思い出し、予定していたことを始めることができます。学校関係のことは太一の部屋のホワイトボードに、生活全般のことはリビングのホワイトボードに書いています。今も続けています。

※1:作業などに必要な情報を一時的に保存し処理する脳の能力
※2:「ケスラーシンドローム」は、宇宙ゴミの密度がある限界を超えると宇宙ゴミが爆発的に増えて、宇宙開発が行えなくなること。これを脳の情報処理になぞらえたもの

息子をいじめる同級生と僕が仲よくなることで、いじめを防いだことも

――授業中など、赤平さんがサポートできない学校生活はどうだったのでしょうか。

赤平 相当に苦戦していたようです。「同じ姿勢を維持すると苦痛に感じる」「聴覚過敏で大きな音がつらい」などの発達障害の影響で、授業中に座っていられなくて、どこかに行ってしまうんです。太一が歩き回るとクラスの子が注意する。それが2人になり3人になり・・・と増えていくうちに、注意の言葉が過剰にエスカレートして、「罵倒」になってしまうこともありました。
それに太一は声をかけてはいけないタイミングで話しかけたり、相手の気持ちを察することができなかったりするので、いわゆる「空気が読めないヤツ」と思われ、相手をイラつかせることもあったと思います。
実際、「お前気持ち悪いんだよ」「こっち来るな」と太一がのけ者にされ、いじめられているのを目撃してしまったことが何度かありました。「僕、何も悪いことしてないのに、なんでかなぁ…」と涙を流す息子を見て、親としてはかなりつらかったです。

――太一くんがいじめられていることに対し、赤平さんはどのように対応したのでしょうか。

赤平 太一をいじめている子と仲よくなることを考えました。父親が仲よくなれば、いじめにくくなるんじゃないかなと考えたんです。毎日送り迎えをしていましたから、いじめている子を見かけたら声をかけて、顔見知りになっていきました。僕は昔から子どもに好かれやすい“タチ”なので、何度か話をしているうちに親しくなり、校門で太一を待っていると、その子たちのほうから「赤平はもうすぐ出てくるよ」などと話しかけてくれるようになりました。
また、保護者会では「うちの子は発達障害なので、いろいろとご迷惑をかけることがあると思います」とカミングアウトして、理解を求めました。

――2022年に太一くんが発達障害であることを公表しました。これも広く理解を求めるためでしょうか。

赤平 そうです。太一が発達障害だとわかったときから発達障害について勉強を始め、発達障害を正しく理解してもらうための活動を行ってきましたが、太一のことは公表していませんでした。でも、発達障害の子どもを持つ当事者の声であることを知ってもらうほうが、説得力があると考え、昨年公表しました。

発達障害の特性は十人十色。そのことを周囲の人が理解して接することが重要

――発達障害についてスマホで学べる動画を制作する会社を設立し、2023年5月時点で450本以上配信しています。

赤平 発達障害の特性を周囲の人が理解し、適切なかかわり方をすれば、本人の生きづらさや、親など周囲の人の心配や苦悩がかなり減らせるはずなんです。
でも、発達障害の子どもを持つ親はかたときも目が離せないので、じっくり発達障害について学ぶ時間を取ることは困難です。また、発達障害の子どもに教育現場でかかわる先生たちも、通常業務で忙しく、発達障害のことを学ぶ時間を取るのは難しい状況です。
ちょっとしたすき間時間に「ながら見」「ながら聞き」ができる動画があれば、もっと理解が深まるはずと考えて作ったのが「インクルボックス」の動画です。すべての動画にナレーションと字幕をつけているので、家事をしながら音声だけ聞いたり、子どもの添い寝をしながら音を消して見たりもできます。発達障害の子どもへのかかわり方に困ったときに、短時間で解決のヒントを得ることができる、ほしい情報がワンストップで簡単に手に入るメディアになることをめざしています。

――発達障害の子どもが困っていることは一人一人違うから、周囲の人が理解を深めることが大切なんですね。

赤平 そうなんです。発達障害の子どもへのかかわり方に一つの正解はありません。さまざまな特性が組み合わさって個性を作り出しているから、その子に必要なサポートを考えなければいけないんです。発達障害とひとくくりにできず、“オーダーメード”のサポートが必要なのが、発達障害の難しいところです。

――日本では発達障害の人への理解やサポートは不足していると思われますか。

赤平 当事者として、まだまだ不十分だと感じています。野村総合研究所が2021年に発表した報告書には、日本は発達障害に関する知識がたりず、発達障害人材の活躍機会を用意できていないために、2.3兆円の経済損失が出ているとあります。これは発達障害の人だけでなく、日本人すべての不利益につながる話ですよね。発達障害の人が自分の能力を生かして幸せに暮らしていけるようになることは、日本人すべての幸せにもつながると思うんです。

先日太一が、「失敗が多すぎるから一つ一つ反省していたら心がもたない。だから忘れるように努力している」と言っていました。そんなことができるくらい成長したんだなと感慨深かったです。
太一が大人になるころには、発達障害について十分な理解がされている社会になっていてほしい。そのために僕はこれからも活動を続けていきます。

お話・写真提供/赤平大さん 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

太一くんの特性を理解し、前向きに生きていけるように寄り添い続けている赤平さん。発達障害を理解する社会になれば、発達障害の子どもが自分らしく生きられるようになり、当事者だけでなく、社会全体の幸せにつながる可能性があるようです。

赤平大さん(あかひらまさる)

PROFILE
テレビ東京でアナウンサーを務めたあとフリーアナウンサーに。発達障害学習支援シニアサポーターなどの資格を持つ。発達障害支援者向け動画メディア「インクルボックス」を運営。

インクルボックス

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