親の好き嫌い、子どもの前ではどうしてる?どうするのが正解!?
親であっても、苦手な食べ物がないわけではありません。「たまひよ」アプリユーザーから寄せられた、好き嫌いに関するアンケート結果とともに、保育が専門の大阪教育大学教授の小崎恭弘さんに、子どもの前での親の好き嫌いの対応策について聞いてみました。
親の好き嫌い、子どもの前ではどうしてる?
「あなたには食べ物の好き嫌いがありますか?ある場合、お子さんの前で嫌いな食べ物を我慢して食べますか?それとも、お子さんの前でも残しますか?」と聞いてみると、
1位 自分の嫌いなものは作らない・料理に入れない 34.8%
2位 食べ物の好き嫌いはない 33.4%
3位 子どもの前でだけ、嫌いでも我慢して食べる 18.9%
4位 自分の嫌いな食べ物は食べないで残す 9.3%
5位 その他 3.6%
という結果になりました。
みんなの声を見てみると、
■正直に嫌いなものを伝えています
「プチトマトが苦手です。子どもは好きで食べているので、私が食べられないことは伝えています」(ゆは)
■子どもから逆アドバイス
「私はピーマンが嫌いなのですが、子どもは大好きなので『よく食べられたね!すごいね!』と大袈裟に褒めます。すると子どもが『ごはんと食べるとおいしいよ』などアドバイスしてくれます」(おたか)
■離乳食に取り入れています
「私はピーマンが苦手なのですが、子どもには野菜ミックスに入っているピーマンを離乳食に取り入れて食べてもらっています。嫌いじゃないみたいでパクパク食べます!」(k)
■子どもは気づかず食べています
「私はごぼうが嫌いなのですが、子どもは煮物や味噌汁だと気づかず食べています」(かほ)
■頑張って食べています
「ブロッコリーが苦手。子どもが頑張っているのだから、離乳食を作った日にはシチューに入れて自分も頑張って食べました!」(ともきち)
■苦手なものは無理強いしない
「私自身が無理に食べないので、なるべく無理はさせたくないです。苦手や嫌いな物を好きになるのは苦痛で、困難だと思うので…」(ゆゆ)
■無理して食べるかも
「ホヤが苦手なのですが、まだ出会う機会がないので…。子どもと一緒の時に、出会ってしまったら無理して食べると思います」(カズママ)
■子どもには外食で
「自分の嫌いな貝類は出さないようにしていますが、いずれは外出時に食べさせてみようと思っています」(maru)
■離乳食で食べてもらっています
「好き嫌いはないのですが、好んで食べないものはあります。あと、下処理が大変なものとかは、滅多に食卓に出さないです」(ヨウコ)
■苦手なものは夫と一緒に
「私は固形のチーズが嫌いなのですが、夫は食べられるので、子どもは夫と一緒に食べています。親のどちらかが食べられれば、味や美味しさは伝えられると思っています」(よってぃ)
苦手なものとどのように付き合うのか、子どもに伝えることも大切
ここでは、親の好き嫌いがある時は、どのようにするといいのかを元保育士であり、大阪教育大学教授の小崎恭弘さんにアドバイスいただきました。
「親になって初めて感じることの一つは、親になるということはとても窮屈になるということです。『子どもの見本にならなくては!』『子どもは親の鏡に映る姿!』など、一度は親として感じるのではないでしょうか。その姿勢自体はとても素晴らしいことだと思いますし、そんな思いが親を大きく成長させてくれる、一つの原動力になるのだと思います。
しかし、『親として◯◯でなければならない』など、過度に力が入ったり、また絶対的なルールを作ったりしてしまうことは、時として自分自身を追い込んでしまうことになります。
私は子育てとは『子どもに社会にあること全てを、教える営み』だと考えています。それはよいことや大切なこと、あるいは絶対的な価値観などを伝えることです。
しかし一方で、いい加減なことや時にはずるいことや、あやふやなことも含まれているように思います。
人の生活や営みは、時として正しい姿勢のものであり、また時としていい加減なものです。その間のさまざまな事情に、その都度対応していくことが求められます。
これらを前提として、パパやママの好き嫌いを考えてみましょう。
まずは『好き嫌い』という言葉自体が面白いです。これは厳密に言葉だけの意味をとらえると、『好きなもの』と『嫌いなもの』ということです。つまり食事において、何か嫌いなものはダメなことですが、同時に好きなものもダメということになってしまいます。結局は『どんなものでもきちんと食べなさい』というメッセージが含まれています。
もちろん作ってくださった方の想いや食べ物への感謝を考えると、なんでも美味しく食べられることが良いのは言うまでもありません。
しかし、そのような姿は理想的ではありますが、現実には難しいところもあります。偉そうに書いている私ですが、幼い頃からピーマンが苦手です。だから何か苦手な食べ物のある、子どもの気持ちが痛いほどわかります。
もちろん親としてはいろいろなものを食べて欲しいのですが、そのために子ども自身が負荷を感じたり、また親子がその食べ物についていざこざに発展したりするようなことは、あまり好ましくないようにも思います。
ママやパパも苦手なものや嫌いなものがあります。その苦手なものと、どのように付き合うのか、そしてそれをどのように子どもに伝えるのかが大切なように思います。
時にはそれから逃げ出してもいいですし、また少しだけ挑戦してもいいです。あるいは誤魔化したりしもいいと思います。苦手な食べ物について話し合ったり、攻略法を一緒に考えたり、見せてあげたりすることが、子どもの人生を豊かにすることにつながるのではないでしょうか。
『清く・正しく・美しく』は、とても大切だと思いますが、たまには『ずるく・悪く・だらしなく』も人生には必要な気がします。
パパやママの弱さや、ずるさも人生の大切な教訓です。またそれらに挑戦したり、克服したりする姿も素敵です。『嫌いなものにどう対峙するか』からも、子育ては始めることができます」(小崎恭弘さん)
大人になっても食べられないものは、誰しもあるものです。無理して食べるより、あえて苦手を子どもに伝え、親子一緒に攻略法を考えることが、子どもにとっていい経験になるのかもしれませんね。
(取材・文/メディア・ビュー 酒井範子)
小崎恭弘さん
PROFILE)
大阪教育大学附属天王寺小学校 校長。大阪教育大学教育学部教員養成課程家政教育講座教授。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。ファザーリングジャパン顧問。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をから「父親の育児支援」研究を始め、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて、父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修等で、講演会等を行うように。著書に『育児父さんの成長日誌』(朝日新聞社)、『パパぢから検定』(小学館)など。
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2023年1月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです(有効回答数302人)
※記事の内容は2023年5月の情報で、現在と異なる場合があります。