「報酬制おこづかい」「月1回渡す」はNG⁉ 4歳から始めるおこづかい。「娘は2歳から始めました」というFPが、子どもが成長する“金銭教育”を教えます【後編】
4歳なんて数字もわからないのに、おこづかいをあげる意味あるの? と、思われるかもしれませんが、「大切なのは“お金を数えること”ではなく、おこづかいを通して“モノの価値を知ること”」と、ライフスタイルアドバイザーで1級FP技能士の前田菜穂子さんは言います。
前田さんは娘さん(10歳)が2歳の頃から金銭教育をしているそうです。前編は4歳から始める理由や、上手な始め方&ルールを教えていただきました。後編は実施テクニックとともに現代っ子の金銭感覚などについて伺いました。
4歳から始めるおこづかい。その内容とルールをおさらい
前田菜穂子さんが活動に参加している「FPmama Friends」では、「親子おこづかいセミナー」を開催しています。前田さんは主に幼稚園児~小学校低学年の親子に向けてセミナーを担当。そこで推奨しているのが「定額制おこづかいの導入は4歳から」です。
【前編】では、4歳からおこづかいを始める理由として「多くの4歳児は、お店屋さんごっこやレジスター遊びで“モノを買う時にお金が必要”と認識できている」とし、さらに「金銭教育とは“お金の数え方を教える”のではなく、“お金を通して得られるモノの価値を教える”こと」と、教えていただきました。
4歳から始めるルールとして
・お金には限りがあり、すべては買えないと教える。
・モノにはニーズ(生活に必要なモノ)とウォンツ(喜びや好奇心を満たすもの)がある。ニーズは親が支払うもの、ウォンツはおこづかいで買うモノと教える。
・おこづかいの使い道は子どもに一任し、親は口を出さない。
「金銭教育で教えるのは、欲しいモノを手に入れたときの胸が高鳴る気持ちであり、失敗を通して“自分が本当に欲しいもの”を見極める力を養うこと。こうした経験が、やがては将来の進路で“自分がやりたいこと”を見極める力に昇華される」と、教えていただきました。
※詳しくは4歳から始めるおこづかい。「娘は2歳から始めました」というFPが、子どもが成長する金銭教育を教えます!【前編】
後編はおこづかいの実施テクニックや、現代っ子あるあるのお金エピソードなどを伺います。
「少額・多頻度」でのおこづかいがおすすめ
「おこづかいは月1回というイメージですが、幼い子は少額&多頻度がおすすめです。
例えば毎週土曜日と日曜日に10円(1ヶ月で約100円)とすると、1ヶ月以内で減ったり貯まったりを体感でき、とくにお金が貯まっていく体感は、幼い子どもにとってワクワク感を与え、やがては『やりくりして使おう』という発想につながります。
ちなみに我が娘(10歳)のおこづかいは月2回。第1火曜日に200円、第3木曜日に200円、合計400円です。
当日、本人が申告しないと没収という厳しいルールがあり、娘とモメることがたびたびあります(笑)」
多頻度がめんどくさいときは「狭範囲・短期」で練習
「例えば駄菓子屋さんで100円渡し『100円以内でお買い物』、ガチャガチャの前で100円渡して『好きなガチャガチャを選びなさい』などです。
おすすめは動物園などレジャー施設へ行った際に500円~1500円を『今日のおこづかい』として渡して、動物とふれあえるコーナーのエサ代、ジュース代、おみやげ代など、やりくりを体験させることです。金額などは、子どもの理解度にあわせて柔軟に対応しましょう」
レジの並び方、支払いの仕方もしっかり教えてトラブル回避
「おこづかいを使う際には子ども本人に支払わせましょう。レジの並び方、支払い方法などをしっかり教えてあげてください。
私の知り合いのエピソードで、低学年の子どもが友だちとコンビニでアイスを買いたいと言うので、少し多めにお金をもたせました。帰宅しておつりを返してもらいましたが足りません。レシートを見ると友だちの分まで支払っていたそうです。
実は“友だち同士で買い物して、友だちの分も本人が気づかずに払っていた……”は、低学年の子どもの金銭トラブルではあるあるなのです。
【前編】でもお話しましたが、金種(10円玉、100円玉、1000円札など)をしっかり認識できるのは小学2年生前後。さらにレジで支払う経験が乏しいために、お釣りをちゃんと数えられず気づかなかった、というのがパターンです。
金銭教育ではお金の使い方だけでなく、買い物の仕方もしっかり教えることも重要です」
「おこづかいは貯金する」はNG⁉ おこづかいを使いたがらない現代っ子たち
前述したとおり娘さんのおこづかいは月400円ですが、学校で使うノートはおこづかいから出すシステムになっています。勉強で使うノートならニーズ(親が支払うもの)では? と思いますが、ちゃんと理由がありました。
前田さんによると、
「私と娘がお出かけすると、私はニーズとウォンツをしっかり分けて買い物をします。けれども夫と互いの両親(娘にとって祖父母)は、娘にかな~り甘い(笑)
娘はクレーンゲームが大好きなんですが、夫や祖父母は(上限はありますが)財布のひもを緩めて『自由にやっていいよ~』というスタンス。そうなると『クレーンゲームがしたい時はパパやおじいちゃんたちに頼もう』と、なる。
実はセミナーでも『おこづかいを減らしたくない』『おこづかいは貯金します』と言う子がときどきいます。しっかり者と言いたいのですが、よくよく聞くと『欲しいものがあったら誰かに買ってもらう』と言うのです(笑)
6(シックス)ポケット(両親、両家の祖父母と合計6つの財布)と、言いますが、現代っ子は自分で買わなくても欲しいものが手に入ることがあり、ちゃっかりした思考になるのも仕方がないこと。
けれども娘におこづかいを与えているのは、お金を使う経験をさせるため=金銭教育のためです。そこで『学校のノートはおこづかいで買う』というルールを作ったのです」
とのこと。
すると娘さんはノートは大型スーパーの文房具売り場で買うよりも100円ショップで買った方が安いと気づくなど、色々と考えて買い物をするようになったそうです。
報酬制おこづかいはNGってほんと⁉ 理由はきちんとした対価を得られないから
「私はお手伝いをしてくれたら○○円という家庭内アルバイト、いわゆる報酬制おこづかいは推奨していません。理由は2つあります」
①お金は家庭の外からいただいてくるもの。家の中から湧いてこない
「4歳児でも、お金は仕事をして得るものと知っているようです。相手ができないことを代わりにやり『ありがとう』『助かりました』の報酬としていただくのが本来のお金の姿です。
親が子どもの園や習い事の送迎をしても報酬がでないように、子どもが家事をやっても報酬はでない、と私は娘に教えてきました」
②お手伝いの押し売り&手抜きになることも
「『お手伝いをした』と言うけれど、手抜きだったり、ズルをしたりでお金を払うレベルじゃないというのは、報酬制おこづかいではあるある話。
手抜きのお手伝いを押し売りして荒稼ぎして浪費癖がついたり、お手伝いを頼むたびに『いくらくれる?』と、交渉するちゃっかりさんになった、という例もありました。
揉めるぐらいなら報酬制おこづかいはNGとしたほうがいい、というのが私の考えです。
とはいえ、我が家も『夜9時30分までに就寝したら+10円』と、お金でつることもあります(笑)
家庭内アルバイトを全否定はしませんが『ルールづくり(=手抜きは支払わない、など)』『お金は外からいただくもの』を徹底して教えることが大前提と言えそうです」
娘さんにインタビュー「迷ったら買う? 買わない?」その答えは……
せっかくなので前田先生の娘さんにインタビューを試みました。
――「おこづかいを使うのは楽しいですか?」
娘さん「お金が少なくなるのはイヤだけど、ほしいものが手に入ると楽しくなるから、いいかな……」
――「最近、買ったものを教えてください」
すると2冊の書籍を見せてくれました。
実は2000円の図書カードをいただいたので、母である前田さんと本屋さんへ。どうしても2冊欲しいけれど合計金額は3300円(税込)。1300円予算オーバーです。
前田さんはニーズとして買ってあげようかな、と心が揺らぎながらも「1冊にしたら」とアドバイスしたそうですが、娘さんは「どうしても2冊ほしくて、自分のおこづかい※を使いました。とてもおもしろくて、買ってよかったです」と2冊とも購入。
※普段のおこづかいとは別に、お年玉などでもらったお金のうち5000円をこういった高額商品を買う用に常備しているそうです。
――「では、お店で買うか買わないか迷う時はどうしていますか?」
娘さん「おもちゃやゲームだったら、動画やSNSでおもしろいか調べて、値段も考えて決めています」
欲しいものは即決。迷う時は立ち止まる。失敗を含めたこれまでの体験を通して、しっかりとした金銭感覚が育まれているようです。
「しっかり者のように見えますが、祖父母たちが年金生活と知ると『早く私も年金生活になりたい!』と、言いだしたり(笑) 保険料を納めるというルールをすっ飛ばして結果だけを求める、ちゃっかりした部分はあります(この時には社会保障制度についてお勉強タイムを開催)。ただ、これから親同伴なしで友だちと買い物に出かける機会があると思いますが、安心して送り出せそうです」と、ほっとした表情の前田先生でした。
家族間でお金の話をオープンにすることで、子どもの未来を応援する
「小さい頃から金銭教育をしっかりすれば、感謝してお金を使う習慣が身に付きます。家族、友情、健康など『お金で買えないもの』『お金にかえられないもの』があることも、自然と理解できるようになります。
そして、親子でお金の話をオープンにできる環境を作ることができます。
昨今は闇バイトに手を染める若者のニュースを耳にします。
安易に大金を手に入れようなんて考えが甘い、と思いつつも、私は、家族に心配かけまいとして『お金がない』と相談できなくて、闇バイトに手を染める若者もいるのでは、と考えてしまうのです。
日頃から、親とお金の話ができる関係であれば、将来の進路で『奨学金を借りてでもA大学へ行きたい』『働いて返すのでどうしても留学したい』と、相談しようと思えます。
けれどもお金の話がしにくい関係だと、親に相談することなく『ほんとはA大学へ行きたいけど、お金がかかるからB大学にしよう』『留学したいけど、あきらめよう』と、なり、最悪の場合は自分で何とかしようとして甘言に騙されて……ということも考えられます。
是非、明日と言わず今日から、お子さんとお金の話を始めてほしいと思います」
前田菜穂子
みつめFP事務所代表で、1級FP技能士(国家資格)、CFP®(日本FP協会)、育勉®インストラクター、日本学生支援機構認定スカラシップ・アドバイザー(平成29年10月~令和7年9月)FPmamaFriendsおこづかい教室認定講師。猛烈に働いた13年間の会社員生活での挫折や長く続いた不妊治療経験など、人生の壁にぶつかったことをきっかけに、金融業界未経験ながら5年間猛勉強してFPの資格を取得。“今より幸せで円満な家庭づくりのお手伝い”をモットーとし、娘として、妻として、母として、そして専門家として広い視野をもち、親子や夫婦でも話題にしづらい「お金のハナシ」に向き合うきっかけを提供しています。プライベートでは一児の母。
取材・文/川口美彩子
※この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
※記事の内容は2023年8月の情報で、現在と異なる場合があります。