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ヘルパンギーナ、RSウイルス感染症が大流行。夏のお出かけは無理をしないで! 現地で入院することも【小児科医】

更新

アジアの下痢病の子供の患者、病院のベッドに横たわっている子供の入院患者。医療疾患のヘルスケアの概念。
●写真はイメージです
Pornpak Khunatorn/gettyimages

「今年の夏は、久しぶりに帰省しよう」「久々に家族旅行を楽しもう」と計画しているママ・パパも多いと思います。しかし子どもたちの間では、ヘルパンギーナやRSウイルス感染症が大流行していて、旅先で入院してしまうケースもあるそうです。
佐久総合病院佐久医療センター 小児科医長 坂本昌彦先生に、夏のお出かけのときに注意したいことや気になるヘルパンギーナについて聞きました。

旅先で熱性けいれんなどを起こして入院した子も

坂本先生は小児科医として、時間外の小児救急外来も担当しています。休みになると、旅先で具合が悪くなり、救急外来を受診するケースもあるそうです。

――ヘルパンギーナが大流行している今、救急外来を受診する子どもたちには、どのような様子が見られますか。

坂本先生(以下敬称略) ヘルパンギーナは夏風邪の一種ですが、急な発熱を起こしますので、それで救急外来を受診するケースが少なくありません。多くは軽症で、実際に入院となる可能性があるのは熱性けいれんが起きたときや重い脱水症状があるときです。
またRSウイルス感染症も流行しています。こちらのほうが入院のリスクは高く、注意が必要です。低月齢の子は重症化しやすく、苦しそうな呼吸や哺乳ができなくなって救急外来を受診することがあります。

私が勤務する病院は、長野県佐久市にありますが、隣が観光地の軽井沢です。
そうしたことも影響していて、休みともなれば、救急外来を受診する患者さんの中に遠方から観光に来た子もいます。
休み中に熱性けいれんを起こす子の多くは、夏風邪などの子どもの感染症による発熱です。その中にはヘルパンギーナも含まれます。話を聞くと、出発の前日から発熱していたけれど、朝になったら熱が下がって元気になったから、家族で旅行に来たというケースもあるようです。
ただ子どもの熱は、治っていなくても朝は下がっていることも少なくありません。午後になると熱が出てきたりします。せっかくホテルを予約してキャンセルするのがもったいないとか、子どもを楽しませたいという気持ちも十分、わかるのですが、結局無理しても途中で体調をくずしてしまうことが多いです。
結果、楽しいはずのレジャーがホテル、場合によっては病室での看病で終わってしまうこともありますので、子どもの体調が悪いときはキャンセルする決断が大事です。

――熱性けいれんで救急外来を受診すると、入院が必要になるのでしょうか。

坂本 熱性けいれんの場合、短時間に何度もけいれんを繰り返したり、意識の回復が悪い場合には入院が必要になります。ただし入院の判断は病院によって微妙に異なりますので担当医に確認してください。

――子どもにどのようなサインが見られたら、旅行などはキャンセルしたほうがいいでしょうか。

坂本 出発前日に熱があった場合には、旅行はキャンセルしたほうが無難です。先ほども申し上げたように、たとえ翌朝、熱が下がって元気に見えても、午後から再び発熱する可能性が高いからです。それから「食う・寝る・遊ぶ」がうまくできていない状態の場合も外出は控えたほうがいいと思います。判断に迷うときは、かかりつけの小児科で相談しましょう。

高熱でも元気で水分がとれていれば、あわてて受診する必要はありません

2023年7月18日現在、子どもたちの間でヘルパンギーナの流行が止まらず、患者数は過去10年で最多といわれています。

――ヘルパンギーナは、なぜこんなに流行しているのでしょうか。

坂本 ヘルパンギーナにかかわらず、今はさまざまな感染症が流行しています。その最大の理由は人々の往来が活発になったからです。これまで感染対策していたのが緩んだので、感染症が流行するのは当然のなりゆきと言えます。

新型コロナの感染対策によって、子どもたちの免疫が低下し、子どもたちが弱くなっているから、ヘルパンギーナやRSウイルス感染症の大流行が起きたという報道が一部にあります。ただしその解釈には注意が必要です。

今起きていることを、1歳くらいから保育園に通っている子と、3歳過ぎてから幼稚園に入園する子を例に説明したいと思います。1歳くらいから保育園に通っている子は、入ってしばらくは風邪を繰り返しますが、3歳くらいになるとかなり免疫もしっかりついて風邪をひく頻度が減ってきます。一方で3歳から幼稚園に入り、初めて集団生活をする子は、入ってからしばらく風邪を繰り返します。3歳前後の風邪のひきやすさだけ取り上げると、幼稚園から入園した子のほうがよく風邪をひいています。1歳から保育園に通い、3歳になって風邪をひく頻度が減った子と比べると一見弱く見えるかもしれませんね。
でも、小学校に上がるころには、どちらもほとんど風邪のひきやすさには差がなくなります。小学校で「あの子は幼稚園から入っているから、保育園から来た子より免疫が弱いんだ」とは言わないですよね。それと同じことです。

この例で言うと、コロナ禍前の状態が「保育園から入園した子」の状態で、コロナ禍で集団生活を控え感染対策した状態が「幼稚園から入園した子」の状態です。今、感染症の流行で子どもたちもつらい状態が続いていますが、いずれは落ち着きます。だからママやパパには、感染のピークを下げるためにも基本的な手洗いなどの感染対策をしっかりとしていただいた上で、「今の状態は、子どもの免疫が弱くなった状態だ」と過度に不安に思う必要はないということを伝えたいです。

――ヘルパンギーナについて、主な症状や治療法を教えてください。

坂本 ヘルパンギーナは、夏風邪の一種で、急な高熱(38度以上)が特徴です。基本的にせきは出ません。発熱と同時に口の中に水疱ができて、なかには飲んだり、食べたりするときに痛がって不機嫌になったり、泣く子もいます。一方で、痛みを伴わない子もいます。

原因となる主なウイルスはコクサッキーウイルスA群などエンテロウイルス属というグループに属するウイルスですが、これらのウイルスを直接退治する抗ウイルス薬は今のところないので、対症療法が原則です。処方では解熱鎮痛剤が出されることが多いです。一般的には熱は2~4日ぐらいで下がり、口の中の水疱は3~7日ぐらいで治ることが多いとされています。

急に高熱が出るので驚いて「診察時間外でも受診しなくては!」と思うママ・パパもいるかもしれませんが、熱があっても元気で水分がとれていれば、あわてて受診する必要はありません。「食う・寝る・遊ぶ」ができていれば大丈夫です。逆に「ぐったりしている」「水分がとれない」ときは、至急受診してください。
家庭で様子を見るときは、こまめに水分補給をして脱水症に注意してください。

ヘルパンギーナの予防には、アルコール消毒は効果なし! 正しく予防しよう

ヘルパンギーナは、乳幼児がかかりやすい夏風邪です。正しい予防を知って感染対策をしましょう。

――ヘルパンギーナの予防について教えてください。

坂本 ヘルパンギーナの原因となる主なウイルス、コクサッキーウイルスA群の感染は新型コロナと同じくだ液などの飛沫や接触により広がります。そのため予防は手洗いによる予防策が中心です。しかし注意すべき点があります。それは、このウイルスは「ノンエンベロープウイルス」といって、アルコール消毒が効かないタイプのウイルスだということです。
したがって、予防効果がないのにアルコール消毒して感染対策した気分になってしまうのが落とし穴です。この機会に手洗いの大切さを改めて強調したいです。

――ヘルパンギーナは、子どもがかかりやすい夏風邪ですが、家族間で感染が広がると考えていいのでしょうか。

坂本 ヘルパンギーナは保育園や幼稚園で子ども同士でうつしあって広がっていきます。ただ、感染は子ども同士だけではありません。知らないうちにママやパパなど家族を介して感染が広がることがあるのです。このウイルスが厄介なのは、感染しているのに症状が出ない不顕性感染が多いことです。ママ・パパは、子どものころにたいていヘルパンギーナにかかっているため、感染しても症状が出ない人が多く、気がつかないうちに、大人から子どもにうつしていることもあるというわけです。

ヘルパンギーナの原因ウイルスは腸の中で増殖しますので、便から外に排出されます。したがって便を介した感染に注意が必要です。おむつ交換をしたり、トイレで用をたしたときに、手指にウイルスがついて、感染を広げることにつながります。トイレから出たり、おむつを交換したら、すぐにハンドソープを使って、ていねいに手洗いをしましょう。

子どもの鼻水やせきなどの症状がひどいときは、熱がなくても保育園や幼稚園を休ませて自宅で安静に過ごすことが感染症をこじらせないために大切です。またママ・パパも、風邪の症状があるときはマスクを着け、まわりにうつさない努力が大切です。ここ数週間、医療機関の外来はごった返していて、重症の患者さんも多い一方、入院先が見つからない事態も起きています。少しでもピークを下げ、そうした事態を改善するためにも、感染症の流行期には、マスクや手洗いなどの基本的な感染対策を心がけていただければと思います。

お話・監修/坂本昌彦先生

取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

今年のヘルパンギーナは、症状は例年と変わらないものの患者数が多いのが特徴です。坂本先生は「ヘルパンギーナは夏風邪のウイルスですが、中には熱性けいれんを起こしたり、脱水になる子もいるので、小児科医の立場から、たかが夏風邪とはいえません。またRSをはじめ、ほかのウイルスもいろいろと流行しているので、基本的な手洗いや、年長児や大人でせき、鼻汁、発熱など症状のある方はマスクなどの感染対策をしっかりしてください」と言います。

●記事の内容は2023年7月25日の情報であり、現在と異なる場合があります。

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