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妊娠18週で突然告げられた赤ちゃんの異変…。日本に数人しかいない「ムコ多糖症7型」と診断されるまで【体験談】

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非常勤で訪問看護の言語聴覚士として働く傍ら、小児専門のオンライン相談サービス「ことばの相談室 Hopal(ホパール)」を運営する佐々木美都樹さん。3歳半の息子・しょうくんは妊娠中に異常が見つかり、生後5カ月で超希少進行性遺伝子疾患「ムコ多糖症7型」と確定診断されました。母親の美都樹さんに、しょうくんの妊娠から出産、病名が確定するまでのお話を聞きしました。

特集「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

※ムコ多糖症7型の「7」は、正式にはローマ数字での表記になります。

妊娠18週で「赤ちゃんのおなかに水が溜まっている」突然告げられた胎児の異変

妊娠中の美都樹さん。赤ちゃんの異変を告げられてからは、不安な日々を過ごしていました。

子どもから大人まで、言語障害、音声障害、摂食・嚥下障害、聴覚障害のある人に対して機能の回復・改善を図る言語聴覚士(Speech Therapist:ST)として、病院や施設などで勤務していた美都樹さんが胎児の異変を告げられたのは、妊娠18週目でした。

「エコー検査で赤ちゃんのおなかに水が溜まっているかもしれないと言われ、大きな病院を紹介されました。その際、羊水検査も行いましたが、特に異常はなく、原因不明のまま、『今ある症状に対処していきましょう』と医師からお話がありました」(美都樹さん)

その後、おなかだけでなく肺にも水が溜まっていることがわかり、24週の時に、美都樹さんのおなかに針を刺して、子宮内にいる赤ちゃんの肺の水を抜く手術を受けたそう。その後、1日でも長くおなかの中で過ごせるよう安静に過ごすものの、胎動が減り血流も悪くなってしまった30週に帝王切開で出産しました。

出生体重は1846g だったそうですが、生まれた後に赤ちゃんのおなかの中には600mlもの水が溜まっていたことがわかり、赤ちゃんの体重は1200gほどしかなかったのではと言われたそうです。

迷わず決断した妊娠継続、そして出産後の安堵感「もう私一人でこの子を守らなくていい」

生まれた直後のしょうくん。手足にはたくさんの管がつなげられていました。

実は異変がわかった18週の時点で、医師からは妊娠の継続と中断の選択を迫られたと話す美都樹さん。仕事柄、病気や障害のある人たちと接することが多かった美都樹さんは、迷うことなく継続を選んだそうです。

「病気や障害のある人が世の中にはたくさんいます。その方たちが不幸せかといえば、決してそんなことはありません。それは仕事を通して感じていたことだったので、病気や障害を持った子どもと生きていくことに抵抗はなかったです」(美都樹さん)

妊娠中、腹水や胸水が溜まる“胎児水腫”であるとわかってから、美都樹さんはインターネットで「赤ちゃん 腹水」など検索をかけたり、文献を読み漁ったりと情報を得たそう。そこには、予後不良や生存率が低いという情報ばかりが出てきて、自分でも驚くほど涙を流したと言います。

その後、おなかの中で育てるには限界が訪れ出産。そのときは、しょうくんの心臓が動いてくれていたこと、またこれからは美都樹さん一人がおなかの中でしょうくんを守るのではなく、医師や専門家によって最善の処置をしてもらえると感じ、心底ホッとしたと振り返ります。

「進行する病気でなければいい…」確定診断が下されるまで祈り続けた日々

NICUでは3カ月を過ごしましたが、この頃はまだ病名がわかりませんでした。

出産後、ただちにNICU(新生児集中治療室)へ運ばれたしょうくん。初めて対面したときには、人工呼吸器の装着をはじめ、手足にはたくさんの管がつなげられていたそうです。

「胎児水腫がわかったときから、何らかの病気や障害を持つとは思っていたので、健康な子ではないという点は、妊娠時から冷静に受け止めていました。ただ、夫とは進行する病気でなければいいねと話していました」(美都樹さん)

しかし、しょうくんがNICUで3カ月過ごし、一般病棟に移り2カ月経った頃、医師から超希少進行性遺伝子疾患の「ムコ多糖症7型」と告げられます。そのときのことを、美都樹さんは「頭が真っ白になり、今思い返しても、その時の記憶がない 」と話し、涙を流す日々だったと言います。

絶望の淵で誓った新たな決意「やれることは何でもやろう」

自宅で一緒に生活できるようになってからは、酸素吸入などは美都樹さんが行います。

発症率が2~5万人に1人というムコ多糖症とは、どのような病気なのでしょうか。

「ムコ多糖症は、本来、体の中で分解されるはずのムコ多糖の分解に必要な酵素が生まれつきなかったり、足りなかったりするため、皮膚や骨、関節、肝臓などの臓器の細胞にムコ多糖が蓄積されることで、全身にさまざまな症状がみられる病気です。7つの型に分類されており、型によって症状は異なるのですが、息子はその中でも希少とされる7型で、国内でも5人前後しかいないと言われています」(美都樹さん)

患者数や症例も少なく、おなかのふくらみや発達の遅れといった他の病気でもみられる症状が多いことから、しょうくんの確定診断が下されるまで5カ月を要したそう。当時のショックは計り知れないものだったと明かす美都樹さんですが、確定診断されたことで、それまでできなかった治療が開始されます。

「確定診断と同時に、大阪の病院ではムコ多糖症の進行を抑制する治験が行われていると医師から教えてもらいました。夫とも『やれることは何でもやろう』と話し合い、すぐに大阪の病院を紹介してもらいました。そして、生後7か月から2週間に1度の治験を受けたところ、1回目から効果が表れ、腹水が止まったときはとてもうれしかったです」(美都樹さん)

おなかのふくらみがなくなったしょうくんは、寝返りを打つなど運動発達が見られるように。自宅に帰り一緒に生活できるようになってからは、美都樹さんが酸素吸入や鼻からチューブを挿入する経鼻経管栄養法などを実践。今でも2週間に1度は通院し、酵素補充を行っています。

胎児に異変があると告げられてから今日まで、日々繰り返し訪れるネガティブな感情に負けてしまいそうになることもあると美都樹さん。そんなときは、育児とは関係ないお笑い動画を観るなど、気分転換を図る時間を作るようにしていると言います。

ママ友から「ぎっくり腰になったら子どもの面倒を見られなくなるから大変だよ」とアドバイスをもらってからは、体のメンテナンスも兼ねて、ご主人と交替でマッサージに通ったりすることも。そうやってリラックスする時間や何も考えない時間を作ることが、リフレッシュになると教えてくれました。

写真提供/佐々木美都樹さん、取材・文/佐藤文子、たまひよONLINE編集部

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年7月の情報で、現在と異なる場合があります。

佐々木美都樹さん

北里大学言語聴覚療法学専攻を首席卒業。言語聴覚士免許(国家資格)及びパーキンソン病治療「LSVT®LOUD」ライセンス所持。マカトン法ワークショップ基礎1、PECS®レベル1ワークショップ修了。成人を対象とした外来リハビリテーション施設・訪問リハビリテーション施設・介護老人保健施設、小児を対象とした児童発達支援事業所に勤務。息子の病気をきっかけに、小児専門のオンライン相談サービス「ことばの相談室 Hopal」を開業する。

「ことばの相談室Hopal」

佐々木さんのInstagramアカウント

しょうくんの成長記録を投稿しているInstagramアカウント

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