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小児の10人に1人は持っているというアレルギー結膜炎。どうやって気づいてあげればいい?【ママ眼科医】

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アジアの子供頭
●写真はイメージです
tru168/gettyimages

「子どもの目の病気について正しい情報を」と活動するママ眼科医の先生たちのリレーコラムをお届けします。第2回は「アレルギー性結膜炎」について。ボストン小児病院眼科に現在留学中の眼科医八木瞳先生による、アレルギー性結膜炎とはなにか? どのようにして気づけばいいのか? どうやって治療するのか? についての解説です。

あなどるなかれ!アレルギー性結膜炎

アレルギー性結膜炎は日常診療でよく出会う疾患です。ママ・パパのなかでも「小さいころ目がかゆかった」「今でも春になると目がかゆい」という人もいるのではないでしょうか。
「かゆい」というのは自分で感じることのできる症状(自覚症状)ですので、本人以外は症状がわかりづらい面があります。しかしアレルギー疾患は子どもに多く、小児の10人に1人はアレルギー性結膜炎をもつといわれています。まれに重症化・慢性化することで治療と学業との両立が必要なことがあり、保護者にはぜひ知っておいてほしい疾患です。

アレルギー性結膜炎は異物を排除する体の過剰な反応

アレルギー性結膜炎は、アレルギー反応を起こす物質(アレルゲン)によって白目とまぶたを覆う透明な組織(結膜)に炎症が起こるものです【図1】。
日常の身のまわりには花粉、ダニなど多くのアレルゲンが存在し、体が異物とみなして排除しようとする免疫機能がはたらいている状態です。日本での主なアレルゲンは花粉とダニであり、前者は花粉が飛ぶ時期に限定して(季節性)、後者は1年を通して(通年性)かゆみなどの症状を引き起こします。もし、いくつもの季節性のアレルゲンを異物として認識してしまうと、症状は通年性となります【図2】。
またコンタクトや義眼などの物理的な刺激によりアレルギー反応を起こすこともあります。

【図1】白目とまぶた覆う透明な組織(結膜)の炎症

JAMA.2013;309(20):2176. doi:10.1001/jama.2013.4432

正常な結膜は半透明ですが、さまざまな刺激により炎症が起きた結膜は血管が拡張し、赤くむくんだ状態になります。

【図2】季節性アレルゲンの期間

岸川禮子ほか:花粉誌 2020;65:55-56より

どの花粉がアレルゲンになるかで発症時期が異なります。

どのようなサインに気がつけばいいか?

いちばん多い自覚症状は「かゆみ」です。目をかいているうちに痛みが加わり、目のゴロゴロ感(異物感)が出てきます。しかし小さい子どもは症状を正確に訴えられない場合があります。本人以外も客観的にとらえられる症状(他覚症状)としては「涙目」、「目の充血」、「白目やまぶたの腫れ」「ゼリー状のめやに」などがあります。アトピー素因をもつ子どもが多く、これは食物アレルギー、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などを含みます。とくにアレルギー性鼻炎とあわせて起こることが多いです。

このようなアトピー素因があったり、目をよくかいている、目が赤い、目が腫れている、めやにがでる、など上記に記した状態が当てはまれば病院を受診するようにしてください。症状が起こる一定の時期があるのか、一年を通して症状があるか、物理的な刺激はないかどうかもあわせて確認してみましょう。

検査はどのようなことをするの?

これらのアレルギー性結膜炎に当てはまるようなサイン(臨床像)に加え、眼科では顕微鏡を用いてまぶたの裏や目の表面の特徴的な所見(臨床所見)を詳細に調べます。小さい子どもの診察は手持ち顕微鏡でやさしく診察をし、まぶたの裏まで観察することを試みますが、嫌がってしまう場合は軽く身体を抑えて診察することもあります。
確定診断には結膜をすってアレルギー反応で出てくる炎症細胞がいるかどうかを観察する必要がありますが、侵襲性があり、一般的には臨床像や臨床所見で判断することが多いです。
最近では涙液のアレルゲンに対する反応(涙液中総IgE)を測ることができるようになりましたが、涙を取る時間は数分かかるので、小さい子どもには行いづらい面があります。
推定される特定のアレルゲンに対する皮膚プリックテストや、血液採取して30種類以上のアレルゲンに対する反応(血清抗原特異的IgE値)を測ることでアレルギー素因の有無を確認することができます。

重症化することはある?

アレルギー性結膜炎の重症型を「春季カタル」といい、両目の激しいかゆみを伴います。黒目の部分を覆う透明な組織(角膜)に傷ができることで痛みやまぶしさを感じたり、見えづらさを訴えることがあります。10歳台の男の子に多くみられますが、成長とともに症状がよくなっていくので、角膜の合併症を未然に防ぐことが大切です。

また、顔とまぶたにアトピー性皮膚炎がある場合に起こす、慢性型のアレルギー性結膜炎を「アトピー性角結膜炎」といいます。通年性のかゆみがあり角膜に傷ができることがあります。より長期的な治療が必要となります。

どうやって治療するの?

主な治療は抗アレルギー点眼薬です。副作用は少なく、子どもに対しても安全性が示されています。症状が抑えられない場合のみ低濃度のステロイド点眼薬を追加しますが、こちらは必要最小限に抑えます。花粉が飛ぶ2週間ほど前より点眼を始める初期療法は症状を抑えステロイドの使用頻度を抑えることが期待できます。
アレルギー性鼻炎を伴い、症状も強い場合は抗アレルギー内服薬も併用することもあります。
慢性型、重症型に対しては基本は抗アレルギー点眼薬、症状が悪くなったときに免疫抑制点眼薬、ステロイドの内服等を追加します。
まれではありますが、さらに悪化する場合は結膜の裏側の隆起に対して外科的治療が必要になることもあります。治療のため頻回に外来に通っていただくこともありますが、学業との両立を相談しながら、大切な視機能を守るための必要な治療となります。

可能であれば予防対策を

アレルゲンの暴露をなるべく減らす対策もあります。花粉が多い時期の外出を避けたり、花粉対策用の眼鏡・マスクが有効です。ダニやハウスダストが原因の場合は寝具や室内環境の整備を行います。かゆみを感じた際も眼をこすらないようにし、冷たいタオルや冷蔵保存した目薬で冷やすことでかゆみをやわらげることができます。
子どもが嫌がる場合や、子どもが保育園や学校に行っている場合は難しいこともあるので、無理のない範囲で行うように、と伝えています。

また、より初期の対策に関しては、乳児湿疹に対して皮膚科やアレルギー科を受診し、適切な治療を行うことが大切です。乳児湿疹があると外界からの異物に対する免疫反応が起きやすくなり、アレルギー疾患の発症と関連していることがわかっています。

監修・文/八木瞳先生 構成/たまひよONLINE編集部

充血・めやにが起こる疾患はアレルギー性結膜炎以外にもあります。細菌性結膜炎やウイルス性結膜炎は抗生剤による治療が必要だったり、ほかの人に病気を広げてしまう可能性もあるので、いつもとの違いを感じたら眼科を受診するようにしましょう。

●参考文献
日本眼科アレルギー学会診療ガイドライン作成委員会. アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)
岸川禮子ほか. 花粉誌 2020;65:55-56
Patel, D.S., et al. (2017). Allergic eye disease. BMJ 359, j4706. 10.1136/bmj.j4706.
Saunes, M., et al. (2012). Early eczema and the risk of childhood asthma: a prospective, population-based study. BMC Pediatr 12, 168. 10.1186/1471-2431-12-168

八木瞳先生(やぎひとみ)

PROFILE
眼科医。2017年慶應義塾大学眼科学教室入局、2018年国立成育医療研究センター眼科、2022年よりハーバード大学ボストン小児病院眼科にて研究留学。日本眼科学会専門医。眼科医の兄がおり2人の名前をあわせると瞳(ひとみ)を護(まもる)。子どもの眼をまもるために日々奮闘している。3歳男児のママ。

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