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パパエコノミストが作成した「赤ちゃん物価指数」が話題。止まらない育児用品の値上げ、6月は一般的な物価指数と比べて3倍の上昇率に【専門家】

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自身に赤ちゃんが生まれたことをきっかけに、赤ちゃん用品の価格がどんどん上がっていることに気づいた浜銀総合研究所研究員の遠藤裕基さんは、独自に「赤ちゃん物価指数」を作成し、2023年6月に発表しました。この指数が表していることや、赤ちゃんがいる家庭に必要な支援などについて、実体験をもとに聞きました。

子どもができたことで、赤ちゃん用品の価格と値上げ状況に注目するように

総務省が発表している「消費者物価指数」から赤ちゃん用品5品目の価格を抜き出し、前年と比較した「赤ちゃん物価指数」。(遠藤さん作成)

――遠藤さんが「赤ちゃん物価指数」を作成しようと思い立ったのは、自身が赤ちゃん用品の値上がりを実感したからだとか。

遠藤さん(以下敬称略) 2022年5月に1人目の子ども、息子が生まれたんです。赤ちゃん用品を買いに行く機会が増え、それらの価格を意識して見るようになると、「赤ちゃん用品の価格上昇率は、総合的な物価上昇率より、かなり高いのではないか? 」と感じるように。育児世帯の負担増を数字で表してみようと考え、「赤ちゃん物価指数」を作成したんです。

――「赤ちゃん物価指数」は総務省が毎月発表している消費者物価指数を元に、2023年5月までの数値で作成したとのこと。まず、消費者物価指数について教えてください。

遠藤 消費者物価指数は物価の変動を示す指数です。582品目の商品やサービスの価格を調べ、それを平均し、前年同月と比べた価格の上昇率・下降率を算出します。

582品目の中に含まれている赤ちゃん用品5品目(粉ミルク、乳幼児用の紙おむつ、乳児服、人形、玩具自動車)の価格をピックアップし、合成したのが「赤ちゃん物価指数」です。
離乳食についても調べたかったのですが、582品目の中に離乳食は含まれていません。離乳食で使うことが多い食品を対象としようかとも考えましたが、赤ちゃんの消費分だけピックアップするのが難しく、今回は5品目で調べました。

総務省が発表した5月の消費者物価指数は、2022年5月に比べて3.2%上昇していました。一方、私が作成した「赤ちゃん物価指数」は6.9%の上昇。赤ちゃん用品の価格上昇率は物やサービスの平均的な価格と比べて、ほぼ2倍の伸び率だったことがわかりました。
また、赤ちゃんに欠かせない粉ミルク、紙おむつ、乳児服に限定して算出した「赤ちゃん物価指数」も前年と比べて6.0%の上昇率でした。「赤ちゃん物価指数」の作成に必要な統計がそろう1990年以降で、最も高い伸び率となっています。
私だけでなく、多くのママ・パパが感じていたであろう「赤ちゃん用品の価格がどんどん上がっている」という感覚が、数字で確認できたことになります。

――消費者物価指数の調査対象に含まれていない赤ちゃん関連商品で、価格が上がっていると遠藤さんが実感しているものはありますか。

遠藤 チャイルドシートやベビーカーですね。もともと赤ちゃん用品の中では高額商品ですが、原材料の価格や物流費が高くなっている影響を、もろに受けている商品です。それに、チャイルドシートやベビーカーは海外ブランド製品も人気ですよね。輸入品は円安の影響を直接受けますから、値上がり幅が大きくなっていると思います。

6月時点で赤ちゃん用品の物価上昇率は、一般的な物価上昇率の3倍に!!

総務省が価格変動を調べている582品目に含まれる赤ちゃん用品は5品目。それぞれの価格伸び率を示すグラフ。(遠藤さん作成)

――遠藤さんが「赤ちゃん物価指数」を初めて発表したのは6月末で、その時の最新データが2023年5月でした。その後、6月の消費者物価指数も発表されました。

遠藤 2023年6月の消費者物価指数は、前年比3.3%の上昇率でした。これに対し、「赤ちゃん物価指数」は9.3%の上昇となりました。消費者物価指数も上昇していますが、「赤ちゃん物価指数」の上昇率はとくに大きく、消費者物価指数より3倍近い伸び率を示しました。まさに「赤ちゃん用品の価格がどんどん上がっている」という状況です。

――赤ちゃん用品の価格が上がり続けている理由として、考えられることを教えてください。少子化も理由の一つでしょうか。

遠藤 原材料と電気代の高騰、人手不足による人件費の上昇などが考えられます。価格は需要と供給のバランスによっても左右されますが、今のところ少子化は、赤ちゃん用品の価格には影響していないようです。

――6月に算出した「赤ちゃん物価指数」の中では、粉ミルクが17.2%の上昇率で飛び抜けて高いようです。

遠藤 実は、消費者物価指数の元になる582品目は、それぞれ調査対象となる商品が決まっています。粉ミルクの調査対象となっている商品が5月に値上がりしたので、その上げ幅が6月の物価指数に反映されているんです。すべての粉ミルクの価格が2割近く上がったわけではないのですが、ある商品が値上がりすると、それを追いかけるように、同じ種類の商品の価格も上がるのが常ですから、ほかの粉ミルクの価格も近々上がるでしょう。

――乳児服は反対に3.5%下がっています。下がった理由は何でしょうか。

遠藤 私の推測ですが、粉ミルクや紙おむつは替えがきかないから、常に購入しなければいけませんが、乳児服はおさがりをもらったり、フリマアプリで安く購入したりすることができますよね。そういうケースが増えているのではないでしょうか、先ほど説明したように、商品の価格は需要と供給のバランスで決まりますから、店頭での販売数が減ることで、店頭価格が下がったのではないかと考えています。
ちなみに、消費者物価指数の582品目はほとんどは店頭販売されているもので、ネット販売されるものはごく一部しか含まれていません。

赤ちゃん用品の値上がりが子育て家庭を直撃。物価高に対する子育て支援を

――「赤ちゃん物価指数」によって、物価高が育児世帯の家計を圧迫していることがわかりました。

遠藤 一般的に、景気がいいと消費者の購入意欲が高まるので様々な物やサービスの価格が上がり、消費者物価指数が上がります。反対に、景気が悪いと買い控えが起こるので物の価格が下がり、消費者物価指数が下がります。そのため、消費者物価指数は「経済の体温」といわれているんです。
でも、現在の消費者物価指数は景気のよ さを反映しない場合もあります。この場合、物の価格は上昇しているのに、それに見舞うだけの収入の上昇はないわけですから、家計負担が非常に大きくなっています。

――国は児童手当として3歳未満の子どもには1人当たり1万5000円を支給しています。

遠藤 国の支援はありがたいと思っていますが、赤ちゃん用品の価格は昨年より約10%上昇しているわけですから、ごく単純に考えると、去年の6月より児童手当の価値が10%目減りしていることになるんです。月に1500円分赤ちゃんに使える金額が減るという計算です。入り枚数によりますが、紙おむつ1パック分くらいに相当するのではないでしょうか。

――物価上昇に対応する子育て支援が必要でしょうか。

遠藤 はい。といっても、児童手当をすぐに上げるのは難しいかもしれません。児童手当は数年先のことまで見越して金額を決める必要があるからです。児童手当の金額を変更するには、たくさん議論が必要になるので、短期間でできることではないと思います。
物価高への対応策は今すぐ必要なものなので、私は紙おむつや粉ミルクを現物支給したり、商品と交換できるクーポンを配ったりするという方法がいいのでないかと、考えています。
国より自治体のほうが小回りがきいて、スピーディーに動けると思うので、各自治体がそれぞれの状況に応じて、子育て家庭に対する物価高対策を講じてほしいと思っています。

お話・監修・写真およびグラフ提供/遠藤裕基さん 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

遠藤さんが考案して浜銀総研が発表した「赤ちゃん物価指数」によって、子育て世帯は物価高の影響を大きく受けていることがわかりました。赤ちゃんの健やかな成長のためにも、国や自治体が速やかに支援に動いてくれることを期待したいです。

遠藤裕基さん(えんどうゆうき)

PROFILE
浜銀総合研究所 調査部 上席主任研究員。慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了後、同研究所に入社。雇用、労働問題および神奈川県経済の分析を担当。2022年5月に1人目の子どもが生まれ、3カ月間の育休も経験。

●記事の内容は2023年8月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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