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男の子のママ・パパに知っておいてほしい、精巣捻転とは? 精巣を救うリミットは6時間【ママ泌尿器科医】

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ベッドに横たわっているボディスーツで泣いている小さな新生児のクローズアップ肖像画
Prostock-Studio/gettyimages

ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載第39回。今回は、男の子の保護者の方に知っておいていただきたい、精巣捻転のお話です。「お母さん(お父さん)のためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#39です。

精巣捻転は、特に新生児期と思春期に多く発症

男の子の生殖器官である精巣。「タマタマ」と呼んだりもしますね。
陰嚢(いんのう)という表現もありますが、これは精巣を包んでいる袋状の部分を指します。
精巣自体は白くてツルツルとしており、とてもキレイな臓器。精子や男性ホルモンをつくる大切な役割を持っています。

この精巣に繋がる血管などが入った部分が捻じれるのが精巣捻転です。血流が途絶え、時間が経つと精巣が壊死してしまいます。
指の付け根に輪ゴムをきつく巻きつけると、指先がどんどん変色して痛みや痺れが出て来ますよね。あれよりずっと深刻で重大な血流不足が精巣に突然起こるのです。
精巣捻転は生後から20歳代くらいまで起こりますが、特に新生児期と思春期に多く発症します。
症状としては強い陰嚢部分の痛みや腫れ。夜から明け方にかけて、突然発症することが多いです。

精巣捻転で重要なのは、いかに早く捻じれを直して精巣への血流を取り戻せるか。
捻じれてから6時間以内に治療にたどり着けるかで、精巣を救えるかどうか結果が分かれると言われています。

知っておいてほしい、精巣を救うための4ステップ

発症してから治療までには、

①子どもが痛みを保護者に伝える

②保護者がすぐに受診が必要だと認識する

③適切な医療機関にたどり着く

④医師がしっかり診断し適切な治療を行う

という過程があります。
このリレーをいかにスムーズに行えるかが勝負ということですね。

①子どもが痛みを保護者に伝える

日頃から子どもに「タマタマはとても大事なところだから、もし少しでも痛かったり様子がおかしかったらすぐに教えてね」と伝えておきましょう。
痛みを言葉で伝えられない新生児・乳児の場合は難しいですが、いつもと違って全然泣き止まなかったり、不機嫌な場合はどこかに痛みがあるのかもしれません。オムツ替えの時に陰嚢の色がいつもと違ったり、腫れていたりした場合にも精巣捻転を疑います。

②保護者がすぐに受診が必要だと認識する

精巣捻転は夜~明け方に多いため、保護者にとって対応の難易度が上がります。
「明日の朝、かかりつけの小児科に行こう」では大きな時間のロスになってしまいます。
子どもが「お股・タマタマが痛い」と言い出したら、すぐに病院に連れて行ってください。
泌尿器科の手術ができる総合病院の泌尿器科(夜間や祝日なら救急外来)がベストです。地域によってはどこを受診してよいか見当もつかない場合もあるでしょう。子どもが激しく痛がる場合にはパニックになってしまうかもしれません。その場合は救急車を呼んでも大丈夫です。消防庁が提供している「Q助」という、症状ごとの対応を教えてくれるサイト・アプリがあります。

この中でも「こども」→「腹痛」→「おまた(股の付け根、陰嚢など)がふくらんでいますか」で「はい」を選ぶと「いますぐ救急車を呼びましょう」が表示されます。
念のため現役の救急隊の方にも確認しましたが、「精巣捻転で救急車を呼んでも問題ない」というお返事でした。

さらに難しいのは、精巣はおなかとも繋がっているため、最初は「おなかが痛い」と訴えることも少なくないこと。嘔吐を伴う場合もあります。
「精巣(たまたま)が痛い」という訴えを聞けば、「もしかして精巣捻転?!」と疑えても、「おなかが痛い」と言われたらまず「食あたり?胃腸炎?」と思ってしまうでしょう。嘔吐まで伴っていたら、もう消化器以外の問題を疑う方が難しいような状況です。
実際「おなかが痛い」といって病院を受診し、医師も「胃腸炎でしょう」と言って精巣捻転を見逃してしまったという裁判事例もあります。

研修医の最初に、「男児の腹痛はパンツを脱がせ」と指導されました。
精巣捻転は疑わなければ診断ができません。
「夜~明け方」「突然」の腹痛の場合は、「たまたまは痛くない?」と聞いて実際におまたを確認することを頭の片隅に置いておいてください。
(胃腸炎でも夜中に突然腹痛・嘔吐の場合があるので難しいですが・・・)
最初は腹痛のみで、少し時間が経ってから陰嚢の痛みや腫れが出てくることもあります。時間を空けて症状を確認してください。

③適切な医療機関にたどり着く→④医師がしっかり診断し適切な治療を行う

精巣捻転の治療は基本的に手術です。精巣の捻じれを戻して、もう捻じれないように反対側も含めて固定をします。
残念ながら時間が経って壊死している場合(黒く変色しています)には摘出します。
手術をせずに手で捻じれを直す方法もありますが、迷った場合には手術で確実に治療します。
実際には、精巣上体炎や精巣炎など、病原体の感染が原因で精巣が腫れたり痛がったりすることもあります。その場合は緊急手術は必要ないのですが、腫れ方や痛がり方だけで精巣捻転か否かを判断することは医療者でも難しいものです。

子どもの病気で「かかりつけ小児科ではなく大きな病院へ」「知っているか否かが結果を分ける」という精巣捻転。
もしもの時のために、ぜひ知っておいてください

文・監修/岡田百合香先生

構成/たまひよONLINE編集部
●記事の内容は2023年10月の情報で、現在と異なる場合があります。

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