競争しない、給食はビュッフェ式のスウェーデンの小学校。日本の短期留学で感じた違いとは?【YouTuberふたりぱぱ】
日本人のみっつんさんとスウェーデン人のリカルドさんは国際同性婚カップル。スウェーデンの法律のもと2011年に結婚した2人は、2016年にアメリカでの代理母出産により男の子を授かりました。現在家族3人で、スウェーデンのルレオで暮らしています。7歳の息子くんは2023年の春の3カ月間を日本の小学校で過ごしました。そのときのことについて、YouTube『ふたりぱぱ FutariPapa』で発信をしているみっつんさんに話を聞きました。
日本の小学校の書類の多さにびっくり!
――息子くんは2023年の4月から6月まで日本の小学校で過ごしたそうですね。
みっつんさん(以下敬称略) はい。息子はスウェーデンの小学校の準備学級であるFörskoleklass(フォシュコーレクラス)に在籍していて、2023年の夏休みが終わると1年生に進級するタイミングでした。1年生になる前の4月から6月までの期間、準備学級に長期休みの申請をして、日本の小学校に短期留学をしました。
息子がちょうど7歳で日本の小学校1年生の年齢なので、ほかのお友だちと一緒にひらがなから学べるいい機会だと思ったのがきっかけです。息子には日本のことも経験してほしいという思いもありました。
日本での滞在先は決まっていたので、そこからいちばん近い公立小学校を調べました。そしてその小学校のホームページに掲載されていたメールアドレスに「短期留学」をしたい旨の問い合わせをしました。昨年の冬ぐらいのことです。
――同性婚カップルで、ふたりぱぱだということも伝えたのでしょうか?
みっつん 最初のメールではとくに伝えていなかったと思います。隠していたわけではないんですが、スウェーデンに住んでいるとパパが2人いる家庭はまったく特別じゃないので、その感覚で、子どもの受け入れが可能かどうかを問い合わせただけでした。
――いよいよ入学というときに、スウェーデンとの違いを感じたようなことはありましたか?
みっつん 入学式前の校長先生との面談のときに、目の前に置かれた膨大な量の資料には圧倒されました。A4サイズの書類がたくさん入る大きめの茶封筒で渡されたのですが、茶封筒の表には同封書類の内容が20項目くらい書かれていました。そして中には学校案内、PTAの会則、警察からのお知らせ、入学式の持ち物、準備する学用品などの資料が入っていました。給食のアレルギーについての書類などサインして提出するものもあり「これ全部読んで入学の準備しなきゃいけないのか!!」とかなりびっくりでした。実際入学式当日まで書類の記入などにかなりの時間を使いました。
――スウェーデンでは書類配布はあまりないですか?
みっつん 日本のような大量の書類はないですね。子どもたちの情報はパーソナルナンバーに登録されているので、入学式や入学説明会など学校のお知らせはアプリとメールで自治体から送られてきます。
日本の小学校では、学年だより、学級だより、保健だより、給食だよりなど、お知らせがたくさんありますよね。読むのは楽しいけど、作っている先生方はきっと大変だろうな〜と感じました。息子が通うスウェーデンの学校では、学校のアプリ内のブログに先生が児童たちの様子をアップしていて、保護者はSNSを見るような感覚でチェックできます。
日本のランドセルは重い・・・でも運動会は楽しかった!
――学用品についてはどんな違いがありますか?
みっつん スウェーデンではランドセルや通学帽、体操服、上履きなどの学用品はありません。教科書も個人で所有するのではなく、学校のものを借りる形です。教科書の貸与にあたっては、子どももわかるような言葉で「教科書は大切なものだからちゃんと大事に扱います」というような内容が書かれた契約書が配布され、親と子のそれぞれのサイン欄があります。子どもに対して、社会のしくみを教える一つの手段でもあると思いました。
ランドセルは中学生になったばかりの僕のおいっ子に譲ってもらったんですが、昔と比べてだいぶ軽くなっているとはいえ、やっぱり息子にとっては日本の学校のランドセルは重そうでしたね。その上さらに手さげカバンや水筒なんかを持つ必要があったから「重い」と文句は言っていました(笑)
――日本の学校で過ごす3カ月の間に運動会にも参加したそうですね。
みっつん はい。1年生はジャンボリミッキーと徒競走、1・2年生合同のダンスの種目もありました。運動会に向けてのダンスの練習では、息子はみんなで一つの目標に向けて練習に取り組んだことが楽しかったようです。息子が通うスウェーデンの小学校では運動会や発表会はないし、みんなで協力して取り組むような集団行動もないんです。
――スウェーデンでは運動会はないんですか!?
みっつん スウェーデンの学校では順位を競うようなことは避ける傾向にあります。マラソンのイベントもあるけれど、みんなで走って全員がフルーツの参加賞や賞状をもらいます。
だから息子は、日本の運動会で初めて徒競走に参加したんです。「どうだった?」と聞いたら「疲れたけど最後まで走れたよ」という感想でした。彼が今までに経験したことのない、順位をつけられるという経験によって、走るのが嫌いになってしまわないか、と僕としてはちょっと心配していたんですが、そうならずによかったです。
日本語に、給食に、宿題に、と大変だったけど・・・
――今回の短期留学で息子くんにとって大変だったこと、楽しかったことはどんなことでしたか。
みっつん 最初は日本語の学校に行くこと自体、あんまり乗り気じゃなかったようです。言葉もそうだけど、とくに給食が心配だったみたい。スウェーデンの給食は食堂でビュッフェ形式で自分で食べたいものを選べるんです。でも日本の給食はみんな同じメニューを配膳されますよね。僕は日本の給食は栄養面で世界的に見てもすばらしいと思うけれど・・・息子は牛乳も苦手なので、飲まないといけないことも嫌だったみたいです。
宿題もはじめは本当に大変でした。でも毎日1枚、宿題のプリントに取り組むうちに日本語がすごく上達して、それが彼の自信になったようです。
――日本の学校で過ごして、帰国後の息子くんの様子に何か変化はありましたか?
みっつん 日本で過ごす期間、街中で家族3人で歩いていると声をかけてもらうことが多かったし、小学生たちにとってYouTuberのステータスが高くて「YouTubeで見た!」と言われることも多かったらしく、息子は自分がYouTuberであることを自覚したみたいです。スウェーデンに帰国後にYouTubeの撮影に対して以前よりずっと積極的になって、視聴者の方から「どんどん日本語が上手になってるね」とほめてもらい、自信をつけています。
子育てをするにあたって、僕もリカも、息子が何か自信を持てるような成功体験をさせたいと思っていたので、息子が日本で頑張った3カ月間が、今の彼の自信につながっていることは本当によかったです。
「はい」と返事をしてから立って発言する日本式授業!?
――日本の小学校の授業参観にも参加しましたか?
みっつん はい。学校公開という名前で月に1回開催されていて、僕は2回、リカも1回参観できました。
リカは授業の様子を見て「とても日本らしいね」と感想を言っていました。日本の学校の授業で発言するときに、手を挙げて、先生に指名されたら「はい」と返事をして、起立して発言しますよね。これはスウェーデンの学校とは大きく違うところです。先生が「発言している人のお顔を見ましょう」と礼節についてもきちんと指導しているところがとても日本的だという印象だったようです。
息子も返事をすることが身についたようで、短期留学前と比べてきちんとお返事をするようになったことは大きな変化です。スウェーデンに帰ってきてから、息子が遊んだブロックを出したままにしているとき「これ、片づけられる?」と聞いたら、嫌そうにしつつも「はい」と返事をするようになりました。
――先生の対応で違いを感じたところは?
みっつん 息子が熱で数日間お休みしたことがあったんですが、先生が毎日のように「具合はどうですか?」と電話をくれたんです。毎日アプリで欠席連絡をするときに、体温や症状なども連絡しているんですが、電話をくれるその気づかいに驚きました。
先生は「授業や宿題のプリントがたまっているから、届けにいきますね」と来てくださって、こんなにも子どもの様子を気にかけてくれているんだと、と驚くとともに、とてもうれしくも感じました。
お話・写真提供/みっつんさん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
今回の3カ月の滞在中、リカさんは仕事の都合で途中帰国して運動会を見られなかったのだとか。「リカは運動会の録画を見て『その場で一緒に見たかった』と残念そうでした」とみっつんさんは言います。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年10月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
ふたりぱぱ
PROFILE
スウェーデン人のリカと日本人のみっつんと息子くんの同性婚ファミリーYouTuber。みっつんとリカは結婚後、代理母出産により息子くんを授かり、リカの故郷スウェーデンへ移住。スウェーデンで現在7歳になる息子の子育てに奮闘する様子をYouTubeやブログで発信している。
『ふたりぱぱ ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る』
スウェーデン人男性と同性婚をしたみっつんの人気ブログ『ふたりぱぱ』の連載「サロガシーの旅」の書籍化。ゲイが子どもを授かる方法、サロガシー(代理母出産)のプロセスなど、ゲイカップルが子どもを授かるまでの“旅"をリアルに語るエッセイ。みっつん著/1870円(現代書館)