「マイナス15度でも赤ちゃんは外でお昼寝?!」2人のパパと息子で暮らす3人家族、驚きのスウェーデン流子育て【YouTuberふたりぱぱ】
2011年に結婚し、2016年にアメリカでの代理母出産で男の子を授かった国際同性婚カップルのYouTuberふたりぱぱ。日本人のみっつんさんとスウェーデン人のリカルドさんは、現在7歳になる息子くんと家族3人でスウェーデン・ルレオで暮らしています。みっつんさんに、スウェーデンでの子育ての様子や日本との違いについて話を聞きました。
育児休暇を取得して、パパ2人と息子くん3人の生活がスタート
――アメリカでの代理母出産で息子くんを迎えたみっつんさんとリカさんは、イギリスからリカさんの故郷スウェーデンに移り、家族3人の生活を始めたそうです。育休などはどんな状況でしたか?
みっつんさん(以下敬称略) 僕たちは、会社員のリカは1年の育休を取り、フリーランスの僕もしばらく仕事を入れずに2人一緒に育児を始めました。1年間どっぷり子育てしました。
スウェーデンでは子どもが8歳になるまでに両親合わせて480日間、手当を受給しながら育休を取れます。同性婚カップルも当たり前にこの権利が認められています。女性の場合は産前産後休暇があり、それは僕たちは取れませんが、育休は僕たちも2人合わせて480日取ることができました。ただ、僕たちは最初はイギリスに住んでいた時期もあったので、ちょっと複雑な部分はありましたが・・・。
――リカさんと2人でどんなふうに育児を分担しましたか?
みっつん リカは朝型タイプ、僕が夜型タイプなので、夜遅くまで起きている僕が深夜2時くらいにミルクをあげて、朝早く起きるリカが4時〜5時ごろにミルクをあげる、という感じでした。シフト制のように交代で育児をしていたので、お互い睡眠も取れていました。
ミルクをあげた時間や量、うんちの回数やおむつ替えのタイミングは育児ノートに書いて共有していたので、スムーズでしたね。息子はよく寝てくれて夜泣きをほとんどしない赤ちゃんで、生後数カ月から、夜に6時間くらいまとめて寝てくれるような子だったのも助かりました。
――スウェーデンの離乳食は日本とは違いますか?どんなふうに進めますか?
みっつん スウェーデンではオーツ麦のやわらかい食感のおかゆのフレークがあるので、それを利用してあげたり、豆をすりつぶしたものを食べさせたりしました。
でも僕は、息子に日本のおだしの味を知ってほしかったので、離乳初期にはだしを取って10倍がゆを作って食べさせてもいました。スウェーデンの市販のびん詰めのベビーフードなども食べさせていたので、日本式とスウェーデン式と半々ぐらいだったと思います。
手づかみ食べができるようになったころには、きゅうりを持たせてかみかみさせてみたり、違う味のいろんなものをつかんで食べさせていました。
――初めての子育てで大変だったことはありますか?
みっつん 育児の大変さはそれほどなく、僕にとっては新しい環境で新しい言語での生活がスタートしたことの大変さのほうが大きかったです。息子が生まれるまではリカと2人でイギリスで暮らし英語を話す生活でしたが、息子と一緒に暮らし始めたスウェーデンでは、公用語のスウェーデン語もわからないし、気候もかなり違います。とくに、秋冬の日照時間の少なさ、暗さには、暮らし始めて7年たった今も慣れません。
真冬でも赤ちゃんは屋外でお昼寝?!
――スウェーデンは日本とは日照時間が大きく異なるんですね。息子くんの生活リズムなどはどのようにしていったのでしょうか?
みっつん 僕たちが住んでいるルレオは、日照時間が1年で大きく変化します。最も短いのは12月で1日の日照時間はわずか3時間 ほど、最も長い6月は23時間ほどにもなります。夏は夜中の0時になってもずっと明るいから、目がさえてテンションが上がっていろんなことをやりたくなります。でも、9月、10月くらいからはどんどん夜の時間が長くなって、ずーっと暗いんです。12月は日照3時間といっても日が出ているのは地平線スレスレ。だから、夕方の明るさのような状態が3時間であとはずっと真っ暗、という感じです。
ただ、子どもたちの生活サイクルは、日照の状況に関係なく、朝起きて夜寝る、規則正しい生活が推奨されています。夏の期間は遮光カーテンを閉めて部屋を暗くして寝ます。
四季の変化がしっかりあり、朝夜がはっきりしている日本の状況とはかなり違います。
――秋からあたりが暗くなると、子どもたちの遊ぶ場所はどうなりますか?
みっつん スウェーデンでは、幼児期の子どもたちは夏でも冬でも、太陽が出ている出ていないにかかわらず、外で遊ぶことが推奨されています。子どもたちはマイナス10〜15度の日でも、防寒スーツを着て外で遊びます。
息子は2年前までフォシュコーラ(förskola)と呼ばれる就学前学校(幼保一体化のプリスクール)に通っていましたが、お迎えに行くと子どもたちは真っ暗な中、ライトで照らされた園庭で遊んでいました。日本の感覚だと、真夜中の公園で子どもたちが元気に遊んでいるようなイメージでしょうか・・・。
――ほかにもスウェーデンの子育てで、驚いた慣習などはありますか?
みっつん スウェーデンでは「赤ちゃんは外で昼寝させるのがいい」と考えられているそうです。真冬でもマイナス15度くらいまでなら、赤ちゃんをしっかり防寒して顔の目と鼻と口だけが出るような状態で毛布でぐるぐる巻きにして、ベビーカーに入れて屋外で寝かせるんです。大人は部屋の中で過ごし、ベビーカーにつけたモニターを見て赤ちゃんが泣いたり起きたりしたら迎えに行きます。
就学前学校に息子をお迎えに行ったときにも、お昼寝中の赤ちゃんが入れられたベビーカーが屋外に並んでいる光景は何度も目にしました。呼吸器を強くするためと言われていますけど・・・驚きましたね。スウェーデンだけでなく、フィンランドやノルウェーも同じらしいです。もちろん僕たちも、息子は外でお昼寝させました。
スウェーデンでは冬でも屋外に出かけるのが当たり前なので、お昼寝タイムの子どもに防寒着を着せてソリに寝かせて、大人はそれを引っ張りながらお散歩することも普通です。そりやベビーカーに乗せてお散歩すると、揺れが心地よくて寝やすくなるから、寝かせる目的で外に出てお散歩する人は多いです。日本人からしたら驚きますけど、でも東京の真夏の36度以上の環境よりはよっぽど安全かもしれませんね(笑)。
赤ちゃんの40度の発熱でも、なかなか病院に行かない
――息子くんが始めて熱を出したときなどは受診しましたか?
みっつん 息子は生後9カ月のころに初めて40度くらい発熱したことがありました。でも、スウェーデンでは赤ちゃんが発熱したとか、風邪くらいではあんまり病院に連れて行かないんです。
スウェーデンには、医療ガイド電話の「1177」という番号があって、そこに電話をして症状を伝えると、医療者が受診したほうがいいのか、自宅で様子をみていいのかを案内してくれます。
子どもの風邪や発熱の場合は、「その症状なら薬局でこういう種類の薬を買って飲ませて、症状が1週間治らなければまた電話してください」という感じで教えてくれます。
「1177」は現在ではインターネットサイトにもなっていて、症状ごとの対処法を検索できます。調べた結果受診が必要な状況なら、そのサイトから近所の医療機関を検索でき、予約もできるシステムです。
息子が発熱したときには「1177」のサイトを調べました。熱があってもミルクを飲んで水分がとれていれば、様子をみて、40度の熱が3日以上続くようなら病院で受診する、と書いてありました。心配だったけれど、自宅で様子を見ていたら、3日目くらいで熱が下がりました。そのときは結局受診はしませんでした。
――乳幼児健診や予防接種を記録する日本の母子健康手帳のようなものはありますか?
みっつん 母子健康手帳はありません。スウェーデンでは子どもが生まれるとパーソナルナンバー(日本でいうマイナンバーのようなもの)が発行され、この番号は一生変わりません。パーソナルナンバーに基づいて予防接種や受診記録などがすべて電子カルテに記録されます。未成年の子どもの電子カルテには親がアクセスできるので、どのワクチンを接種したのかもすべてチェックできます。パーソナルナンバーは役所の手続きや銀行でのやり取りなど生活のあらゆるシーンで必要で、パーソナルナンバーがないと生活ができないという感じです。
――日本とは大きく異なる医療環境ですね。
みっつん 日本のように症状があったらすぐに受診できるわけではなくて、大人でも慢性的な腰痛などの場合は予約してから受診できるのは3週間後だったりします。でももちろん重傷のけがや症状が重い病気のときには救急機関や大学病院などですぐに医療を受けることができます。
子どもが高熱を出したときは心配だし、単なる風邪ではなくて重大な病気だったらどうしよう、という不安はたしかにあります。日本のようにすぐに受診できたら安心だな、とも思いますが、病院に行っても対症療法の薬をもらうのなら、薬局で買って自宅で様子を見るようなスウェーデンの方法も理にかなっているのかな、と感じます。
お話・写真提供/みっつんさん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
みっつんさんが語ってくれたスウェーデンでのリアルな育児の様子はとても興味深く、日本では想像できないようなエピソードも盛りだくさん。「寒さには慣れたけど、秋冬の暗さはいまだに苦しくて季節性のうつにもなってしまうほど」とみっつんさんは話します。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年8月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
ふたりぱぱ
PROFILE
スウェーデン人のリカと日本人のみっつんと息子くんの同性婚ファミリーYouTuber。みっつんとリカは結婚後、代理母出産により息子くんを授かり、リカの故郷スウェーデンへ移住。スウェーデンで現在7歳になる息子の子育てに奮闘する様子をYouTubeやブログで発信している。
『ふたりぱぱ ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る』
スウェーデン人男性と同性婚をしたみっつんの人気ブログ『ふたりぱぱ』の連載「サロガシーの旅」の書籍化。ゲイが子どもを授かる方法、サロガシー(代理母出産)のプロセスなど、ゲイカップルが子どもを授かるまでの“旅"をリアルに語るエッセイ。みっつん著/1870円(現代書館)