SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 薬が効かない「薬剤耐性菌」が世界中で増加傾向に。死者を減らすために私たちができることは?【薬剤師】

薬が効かない「薬剤耐性菌」が世界中で増加傾向に。死者を減らすために私たちができることは?【薬剤師】

更新

これまで有効だった抗菌薬が効かない「薬剤耐性菌」。薬剤耐性菌による感染症の拡大が、世界的な問題となっています。今回は、薬剤耐性菌が広がる理由や拡散防止のために私たちができること、感染症に負けないからだづくりのポイントなどを解説します。

薬剤耐性菌について知ろう

日本において、年間約8000人が「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症」と「フルオロキノロン耐性大腸菌」という2種類の薬剤耐性菌によって死亡していることが、2019年に国立国際医療研究センターによって報告されました(※1)。この国内推計は2種類の菌に限られているため、実際はより多くの薬剤耐性菌が死者を出している可能性があると予想されています。

また、英国の薬剤耐性(AMR)レビュー委員会は、このまま対策を講じなければ、全世界における死者数は2050 年までにおよそ 1000 万人以上となり、がんによる死亡者数を上回ると推計しています。(※2)

薬剤耐性菌とは

薬剤耐性菌とは、抗菌薬が効かない(耐性を持っている)菌のことです。抗菌薬は細菌の細胞壁を壊したり、菌の増殖を妨いだりして効果を発揮しますが、薬剤耐性菌は自身のDNAや細胞の構造を変化させて抗菌薬への耐性を獲得しています。そのため、薬剤耐性菌に抗菌薬を使っても効果はありません。

薬剤耐性菌はなぜ広がる?

薬剤耐性菌が広がる主な原因として、医療者側の「不必要な抗菌薬の処方」と患者側の「抗菌薬の不適切な服用」の2つが挙げられます。

抗菌薬にはさまざまな種類があり、菌の種類によって適切な抗菌薬は異なります。そのため、原因菌の種類に応じた適切な処方をしないと菌が生き残ってしまい、耐性をつけた菌の拡大につながるおそれがあるのです。

また、医師から「飲み切るように」と指示された抗菌薬を患者や家族が自己判断で中断したり、勝手に量を減らして飲んだりすると、菌が死滅せずに耐性を持ち、薬が効かない菌がばら撒かれることにつながります。

薬剤耐性菌を増やさないための取り組み

薬剤耐性菌を増やさないためには、社会と個人がそれぞれの立場から行動することが不可欠です。行政などの取り組みや、個人ができることについて解説します。

世界や日本が行っていること

世界保健機関(WHO)では毎年11月18〜24日を「世界AMR(薬剤耐性)啓発週間」として、薬剤耐性への理解を深めるキャンペーンを行っています。日本でも11月を薬剤耐性(AMR)対策推進月間と定め、薬剤耐性菌に関する啓発活動を実施しています。(※3)

日本政府は2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を制定し、継続的に薬剤耐性の動向調査や研究開発などの取り組みを行ってきました。薬剤耐性菌が水や土壌にどの程度拡大しているか調査したり、医療関係者に抗菌薬の適正使用に関する研修を行ったりするのがその一例で、今後も国際的な協力のもと、継続的に薬剤耐性菌への対策を進める見込みです。(※4)

個人ができること

薬剤耐性菌を増やさないためには、抗菌薬を使わないで済むようにすることが大切です。
そのためには、感染症にかからないように心がけましょう。手洗いやうがい、マスクの着用、人ごみを避けるなど、一人ひとりの感染予防が薬剤耐性菌対策につながります。

また、医療機関を受診するときは自分の症状を正確に伝え、不要な抗菌薬を処方してもらわないことも重要です。抗菌薬が処方された場合は医師、薬剤師から指示された用法・用量を守って服用し、自己判断による用量調節や服用の中断などは避けてください。

なお、風邪をひいたときは「風邪だから飲んでおこう」などと自己判断で抗菌薬を服用してはいけません。一般的な風邪の原因はウイルスのため、抗菌薬を服用しても効果がありません。

感染症に負けないからだづくり

日頃から「感染症に負けないからだづくり」を心がけて感染予防に努めることも、薬剤耐性菌対策のひとつです。

<健康的なからだをつくるポイント>
・適度な運動を習慣づける
・ストレスをためない
・健康的な食生活を維持する
・からだを温めて血流をよくする

運動には筋肉を強くしたり血液やリンパの流れをよくしたりする効果があり、健康維持には欠かせません。ただし、激しすぎる運動はストレス源になってしまうため、ウォーキングや水泳などの有酸素運動を適度に楽しむといいでしょう。

また、ストレスは免疫機能に悪影響を及ぼす可能性があるので、日頃からこまめにストレスの解消を心がけてください。食事はたんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランスよく補うと、免疫機能の維持やストレスの緩和などにつながります。

からだを温めると血流がよくなり、免疫細胞が血流に乗って全身を巡りやすくなるため、血流促進効果のある食材(青魚やアーモンド、アボカドなど)を食べたり、半身浴をしたりして、冷え対策もきちんと行いましょう。

薬剤耐性菌の拡散を防ぐためには、正しい知識と行動が大切

薬剤耐性菌は世界的に増加しており、大きな問題となっています。薬剤耐性菌の拡大防止のためには、抗菌薬の適切な使用が欠かせません。一人ひとりができる取り組みとして、抗菌薬は処方通りに正しく服用し、自己判断で用量調節や服用の中断などをしないように徹底しましょう。

<参考文献>
※1 日本における薬剤耐性菌による死亡数の推計について|NIID国立感染症研究所
※2 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン|国際的に脅威となる感染症対策の強化のための
国際連携等関係閣僚会議

※3 令和5年(2023年)11月の行事概要|政府広報オンライン
※4 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027) 概要|首相官邸

PROFILE

あんしん漢方薬剤師 山形 ゆかり

薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ入り、牛角・吉野家他薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-Youtubeチャンネルで簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=211332f2tmhy00010048
●Medical Health CH:https://www.youtube.com/playlist?list=PLha9jt4tT7-xa-y83vBY8Ir-1-FqAYyWj

※記事の内容は2023年10月の情報で、現在と異なる場合があります。

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。