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ADHDと診断された二男。保育園のお迎え時、先生に「お母さん!」と呼び止められるのがこわかった【発達障害体験談】

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あっくんは絵が得意。写真は大学1年生のときにアクリル絵の具で描いた、あっくんのおじいさん。

土崎幸恵さん(52歳)には、3人の子どもがいて、23歳になる二男のあっくんは、小学3年生のときに発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)と診断されています。
土崎さんは、あっくんの子育て経験をいかして、2018年に東京都東村山市にNPO法人すくすくはあとを設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業所「すくすくキッズ」の責任者および「すくすくキッズ第二」の管理者兼児童発達支援管理責任者、「すくすく相談室」の管理者を務めています。
土崎さんに、あっくんが生まれたときのことや乳幼児期のことについて聞きました。3回シリーズの1回目です。

離乳食やミルクを受けつけず、飲むのは母乳だけ。後に感覚過敏と判明

普段、絵を描くときのあっくんの洋服。

あっくんが生まれたのは、2000年6月。土崎さんが29歳のときの出産でした。

「あっくんは二男で、長男とあっくんは2歳違いです。妊娠7カ月の妊婦健診のときに子宮口が2cmぐらいと開いていると言われて、長男を実家に預けて、すぐに入院することになりました。
出産したのは妊娠37週に入ってから。陣痛促進剤を使って出産しました。私は、産後5日ぐらいで退院したのですが、あっくんは黄疸(おうだん)が出ていて、生まれたときに心拍が弱いと言われて、私よりも2日ほど退院が遅れました。体重は3500gぐらいありました」(土崎さん)

あっくんを育てていて、上の子と何か違うと思ったのは、まず食べないことだったと言います。

「離乳食の開始時期になり、食べさせようとして、口の中に入れてもベ~と出してしまいます。ミルクも飲みません。本当に母乳しか飲まないんです。
しかし、私の食べ物の影響なのかわかりませんが母乳を飲ませると、あっくんにじんましんが出ることがあって。じんましんの原因がわからず、母乳しか飲まないので不安で不安でしかたなかった時期もあります」(土崎さん)

あとになってわかったのですが、あっくんには味覚過敏がありました。
味覚過敏は、口の中の感覚過敏です。好き嫌いとは異なり、舌触り、歯ごたえ、味などに不快感を覚えて、あっくんのように食べ物を受けつけなかったりします。ミルクを飲まなかったのも、哺乳びんの乳首や感触が嫌だったのか、ミルクの味やにおいに抵抗があったのかもしれません。

保育園でも給食を食べず、多動傾向がありジャングルジムから落ちたことも

土崎さんは仕事をしていたので、あっくんは生後9カ月から保育園に通い始めました。土崎さんは、保育園のお迎え時に担任の先生に呼び止められてばかりいました。

「あっくんは保育園でも、給食をほとんど食べません。連絡帳に先生が園で食べた量を書き込んでくれるのですが、給食ゼロ、おやつゼロと書かれることも多々ありました。あっくんは、豆腐や野菜、果物、魚などはまったく食べませんでした。白米は食べるのですが、ごはんに具材を混ぜると食べません。私もどうしたらいいのかわからずに悩んでいました」(土崎さん)

またあっくんは多動傾向があり、けがが多かったと言います。

「先生に呼び止められるのは、食べないということだけではありませんでした。落ち着きがない、すぐにかんしゃくを起こすというようなことも言われます。
あっくんは1歳のときには、園庭にあるジャングルジムから落ちて顔を4針縫うけがをしました。友だちとのトラブルも絶えず、おもちゃの取り合いなどでかんしゃくを起こすと、床や壁に何度も自分の頭を打ちつけたりします。
発熱やけがで、勤務先に保育園から電話がかかってくることはしょっちゅうでした。担任の先生は、私の顔を見るたびに『お母さん、ちょっといいですか』と声をかけてくるんです。
担任の先生から言われることは『家庭で、食事はどうしていますか?』『工夫をしないから食べないのではないでしょうか?』などのようなことです。
当時は、発達障害という言葉が広く知られていなかった時代です。先生は、私の子育ての問題と思っていたようです。私はいつしか『先生に見つからないように』と願うような気持ちで、送り迎えをするようになりました」(土崎さん)

「ママ」などの一語文は出たけれど、二語文は出ない。「しつけの問題」と言われたりして八方ふさがり

土崎さんが、上の子との発達の違いをさらに感じたのは発語です。

「あっくんが『わんわん』『ママ』などの一語文を話し始めたのは、1歳ごろでした。上の子とだいたい同じ時期です。しかし『わんわん いた』などの2語文がなかなか出ません。
あっくんとの会話のやりとりはスムーズにできず、ちょっとしたことでかんしゃくを起こすので、あっくんが一語文で伝えてくる欲求に振り回されるような日々でした」(土崎さん)

そのようなあっくんの発達の様子は、乳幼児健診のときも土崎さんを憂うつにさせました。

「あっくんがADHDと診断されたのは、小学3年生のときですが、私はそれまで病院を受診したり、専門機関で相談することに不安や戸惑いがありました。当時は今のように十分なサポートが受けられない時代です。『相談したからって何が変わるの?』『様子を見ましょうと言われるだけでしょ?』『しつけの問題と言われて、私が悪いと言われるだけでしょ?』という悶々(もんもん)とした思いを抱えていました。

乳幼児健診のときは、母子手帳に発達の様子を保護者が記して担当の小児科医や保健師さんに見せますが、できていなことなのに『できている』と記したこともあります。『子育てで悩みはありますか?』と聞かれても『ありません』と答えていました。どうせ『悩みがある』と言っても、最後はしつけや子育ての問題と言われてしまうと思っていました」(土崎さん)

あっくんの成長とともに、土崎さんは八方ふさがりになっていきます。

「仕事で忙しい日は、私の実家に子どもたちを預けていたのですが、多動傾向のあるあっくんを見るのは、母にとってかなり負担だったようです。
『あっくんの面倒を見ると、お母さんが体調を崩して熱を出すから、もう子守りはできない』と父に言われました。
夫の実家も私の実家も、あっくんのことはかわいがってくれるのですが、食事のとき座らずウロウロ動き回ったり、食べないあっくんを見て、怒ったりするんですよね。好き嫌いが多いのは、私の育て方のせいだと言われたこともあります。
診断がつくまでの幼児期は、今、振り返ってもかなりつらい時期でした」(土崎さん)

『一口だけ』と誘われ、頑張って食べると『すごい! もう一口食べてみよう』と言われて人間不信に

あっくんは今、23歳です。土崎さんが責任者を務める、NPO法人すくすくはあとで、児童指導員として働いています。年に数回、親子で講演会を行い、あっくんの目線で当事者だからわかることを伝えたりしています。

「講演会でも話したことがあるのですが、あっくんは味覚過敏で食べられないものが多くあります。
でも当時は、私も味覚過敏とはわからず偏食が多い子と思っていました。保育園では、どうにか少しでも食べてほしいという思いから『一口だけ食べてみない?』と誘われ、あっくんも『一口だけなら』と我慢して食べると、『すごい! 食べられたじゃない! もう一口食べよう』と言われるのが嫌だったと言っています。一口だけって言ったのに! うそつきだ!と人間不信になったと言っていました。
自分が嫌なこと、苦手なことを頑張ってやっとクリアしたら、すぐに約束を破られて『もう1回!』と言われたら、大人だって裏切られた!とショックですよね。

私は今、支援者として発達に特性がある子どもやママ・パパたちとかかわっていますが、支援で大切なことはあっくんに教えられることが多いです」(土崎さん)

お話・写真提供/土崎幸恵さん 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

あっくんに診断が出る前は、あっくんに気になる言動があると、「しつけのせい」「子育てのせい」と言われることが多く、その言葉が土崎さんを苦しめたと言います。しかし支援者となった今では、同じような悩みを抱えるママに「発達障害はしつけのせいではありません。仮にしつけのせいと言うならば、パパだって子育てをしているし、保育園や幼稚園に通っていたら先生の影響だって受けています。ママだけに責任を押しつけるのはおかしい!」と伝えているそうです。次回は「あっくんの就学と診断」について紹介します。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年11月の情報であり、現在と異なる場合があります。

『発達かあさん―ソーシャルワークで起業する-』

ADHDと診断されたあっくんを育てていく中で、直面した数々の壁。その経験を生かして、NPO法人すくすくはあとを設立し、支援者として活動するようになるまでを描いたノンフィクション。
土崎幸恵著/1650円(世音社)

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