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「食べられない、眠れない」二男は、ADHDだった。障害を受け入れ、好きなことを伸ばすまで【発達障害の子育て体験談】

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高校2年生のとき 東京都高等学校文化祭美術・工芸部門中央展に飾られたあっくんの自画像。

土崎幸恵さん(52歳)の二男のあっくんは、幼児期から多動傾向があり、小学3年生のときに発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)と診断されました。あっくんは現在23歳ですが、幼いときから好きだった絵画を学ぶために大学は美術系へ。これまで自身のことを描いた『あっくんはたべられない 食の困難と感覚過敏』『あっくんはねむりたい 眠りの困難と発達障害』の2冊の絵本を出版しています。
土崎さんに、あっくんの進学や自立、絵本の出版について聞きました。3回シリーズの3回目です。

「好きなことは伸ばしてあげたい!」という思いで、小学1年生から近所の絵画教室へ

あっくんは幼いときから絵を描くのが大好きでした。土崎さんは「好きなことは伸ばしてあげたい!」という思いから、絵画教室にあっくんを通わせ始めます。

「二男のあっくんは、小学3年生のときにADHDと診断されたのですが、手先が不器用でコンパスや分度器、鉛筆けずりなどの道具が上手に使えません。コンパスを使うと、何回も針を指し直すのでノートは穴だらけ。くるっとコンパスを器用に回して円を描くことができません。
鉛筆けずりもハンドルを器用に回せないので、電動の鉛筆けずりに変えたら、今度はけずり過ぎて、すぐに鉛筆が小さくなってしまうんです。授業中、席に座り続けるのも困難で、気がつけば勉強についていけなくなっていました。とくに算数の図形で、見えない部分を想像して体積を求めたり、国語で行間から登場人物の思いを読み取るのが苦手でした。
でも絵を描くのは好きだったので、『好きなことは伸ばしてあげたい!』と思って、近所の絵画教室に小学1年生から通わせ始めました」(土崎さん)

あっくんは物事を順序立てて話すのが苦手です。そのためわかりにくいときは、土崎さんは「絵で描いて説明して」とあっくんに言っていました。4コマで書いてとシーンを分割するようにしたこともあるとか。

「大学生のときに、あっくんは交通事故にあったことがあります。あっくんは自転車に乗っていて、相手はオートバイでした。
救急搬送されたのですが、あっくんはパニック状態で、事故の状況を聞いても『僕が悪い!』の1点張り。そのため『あっくん絵に描いて説明して』と言って、あっくんの絵を見ていたらオートバイが逃げているシーンがあったんです。『あれ? オートバイが逃げてる。これってひき逃げでは?』と思って警察に言ったところ、目撃者がいて裏づけがとれました。オートバイは一度逃げて、30分ぐらいしてから現場に戻ってきたようですが、あっくんの絵がなければ真実は闇の中でした」(土崎さん)

勉強は苦手だったけど、美術の特別推薦で都立高校へ。指定校推薦で美術系の大学にも進学

大学の卒業制作。東京五美術大学連合卒業・修了制作展にて。

あっくんは世界児童画展など小学生、中学生のときにいくつかの絵画コンクールで入賞しています。

「中学時代は一時、不登校になっていたのですが、高校は美術の特別推薦を行っている、都立大泉桜高等学校に推薦で入学できました。
大学も指定校推薦で、東京造形大学美術学科に入学し、4年で卒業できました。
大学生のときから、グループホームで暮らしています。最初は、『嫌がるかな?』と思っていたのですが、家よりもグループホームのほうが大学に近く、体験で入居したとき居心地がよかったようで、嫌がらずに入居しました」(土崎さん)

土崎さんは、2018年7月に東京都東村山市にNPO法人すくすくはあとを設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業所「すくすくキッズ」の責任者および「すくすくキッズ第二」の管理者兼児童発達支援管理責任者、「すくすく相談室」の管理者を務めています。あっくんも大学卒業後は、そこで児童指導員として働いています。
あっくんは予定通りに行動することはできるのですが、急な予定の変更が苦手です。しかし職場では、急な予定変更はしばしばあります。

「以前、仕事の流れであっくんの昼休み時間が短くなったことがあります。本当は1時間の休憩なのですが『子どもたちが来る時間には戻ってほしいから、休憩は40分しかないよ』と伝えると、イライラし始めたのですが、外を走ると気持ちが落ち着くとわかったようで、今ではそのようにして自分の気持ちをコントロールしています。仕事を通して成長しているなと思います。
またあっくんの子どもたちへの対応は、見ていて勉強になります。たとえば、あっくんは『なんでやったの?』『どうして、そう思ったの?』など、子どもから理由や気持ちを聞くとき、子どもと同じ目線に立って話を聞いています。上から目線でアドバイスをしたりしません。気分が乗らなかったり、マイペースな子には、じっくり待って話を聞いてあげたりしています。そうした対応が、子どもたちからの信頼につながっていると思います」(土崎さん)

「味覚過敏」と「睡眠障害」のことを知ってほしくて2冊の絵本を出版

あっくんが制作した絵本「あっくんはたべられない」(世音社)。

あっくんは得意の絵を生かし「味覚過敏」と「睡眠障害」のことを知ってほしくて、『あっくんはたべられない 食の困難と感覚過敏』と『あっくんはねむりたい 眠りの困難と発達障害』の2冊の絵本を出版しました。

「どちらの絵本も、絵はあっくんが描きました。気分が乗らないと暗い絵になってしまい、描き直しを依頼したこともあります。嫌がるかな、と思ったのですが『仕事だから!』と言いながらと納得して、描き直していました。『仕事だから!』は私の口癖です。私の口癖がうつってしまったんだな~と思いました。

文は、私と編集者があっくんにインタビューして、あっくんの言葉を紡いで文章にしました。
あっくんは絵本の中で、キウイはジョリジョリが刺さる、トマトはベシャッとつぶれるなど、味覚過敏の人にしかわからない表現をしています。
あっくんは幼いときから、野菜や果物を食べず、肉だけは食べていました。少しでも野菜を食べてほしいという親心で、ハンバーグにトマトを小さく刻んで入れたりしていたのですが、それもすごく触感が気持ち悪かったようです。野菜をこまかく刻んで混ぜごはんを作ったこともあるのですが食べません。『何が入っているかわからないものはこわくて食べられない』と、大きくなってからあっくんに言われたことがあります。そういう理由で食べないんだ!ということが、やっとわかりました」(土崎さん)

笑顔で楽しく過ごせる家庭は、子どもを伸ばす

2022年12月、文部科学省は「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」発表しています。
それによると、知的発達に遅れはないものの学習面または行動面に著しい困難を示す小学生の割合は10.4%にのぼるとしています。土崎さんもママ・パパから多くの相談を受けるそうです。

「私は現在、子どもの発達特性に悩みを抱えるママ・パパの相談にのっていますが、発達に特性がある子を育てるうえで、最も大切なのは、ママ・パパはもちろん、子ども自身も楽しく笑って過ごせることだと思います。楽しく笑い合って過ごせる家庭は、どんな療育よりも子どもを伸ばします」(土崎さん)

お話・写真提供/土崎幸恵さん 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

あっくんはグループホームで暮らし、自立の道を歩んでいます。土崎さんは「私だって歳を取るので、ずっとあっくんの面倒を見るわけにはいきません。あっくんは困ったときにまわりに助けを求めることができるので、この先もきっと大丈夫だと思います。保育園、小学生のときはあっくんのことが心配で、先生からは年中呼び出されて、私自身疲れきっていましたが、まさかこんな日が来るなんて思いもしませんでした」と言います。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年11月の情報であり、現在と異なる場合があります。

『発達かあさん―ソーシャルワークで起業する-』

ADHDと診断されたあっくんを育てていく中で、直面した数々の壁。その経験を生かして、NPO法人すくすくはあとを設立し、支援者として活動するようになるまでを描いたノンフィクション。
土崎幸恵著/1650円(世音社)

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