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障がいのあるなしに関わらず「エンタメの魔法」で、個性を活かして輝ける社会にするのが私の使命!きょうだい児の挑戦

更新

吉川莉奈さんが代表を務める『FaiRy』のメンバー。「障がいのある方もない方も一緒に活動し、それぞれができることで補い合ってパフォーマンスしています」(莉奈さん)

2019年、障がいに対する差別や偏見、就職難などの問題をダンスや音楽などのエンタメで個性が輝く社会を作りたいと『FaiRy(フェアリー)』を立ち上げた、ダンサーの吉川莉奈さん(28歳)。
24時間介助が必要な重度心身障がい者の妹さんが2人いて、1人は一緒に暮らし、もう1人は幼少期から今も医療機関に入所しています。

“きょうだい児(※1)”として、誰にも言えないしんどい思いもしてきた莉奈さん。
なぜエンターテイメントチームを立ち上げたのでしょう? そのきっかけや活動を機に莉奈さんに起きた心の変化、活動内容などをお届けします。

特集「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

エンタメの力で悩みが吹っ切れた!

『FaiRy』の活動を始める前の莉奈さん。「テーマパークダンサーを中心にさまざまなエンターテイメントの舞台に立ち続けてきました」(莉奈さん)

莉奈さんが『FaiRy』を立ち上げたのは、お母さんの願いでした。

「テーマパークダンサーを引退し、一緒に暮らす妹が盲学校を卒業して作業所に通い始めたころでした。母から“障がいのある人もない人も、みんな一緒にダンスが楽しめる場所をつくってみない?”って言われて。

母は妹たちが小さいころから、健常者と障がい者が触れ合うことを大事にしていて。それで障がいのある方が、ダンスや音楽を楽しむ機会が少ないと感じていたんだと思います。何よりも障がいのあるなしにかかわらず、みんなが一緒にダンスや音楽を楽しめる環境をつくって欲しいという想いがあったようです。

実際の話が知りたくて、妹の友だちに聞いてみたら、“ダンスも音楽も好きだけど、活動する場所も通える場所もない”と言うんです。それで“やってみよう!”って始めました」

作業所に通う莉奈さんの妹さんや妹さんの友人をはじめ、次々とメンバーが加わり、活動は本格化していきます。

妹たちの存在を公言した途端に変化が

2人の妹さんの誕生日、医療施設に入所中の妹さんと面会した様子。「15分だけ面会できて。2023年撮影、最新の3ショットです」(莉奈さん)

莉奈さんはずっと妹さんたちの存在を友人などに話せずにいましたが、『FaiRy』の活動を始めると心に大きな変化が起こります。

「ホームページやSNS、パフォーマンスなどで妹たちの存在を公言する機会が増えた途端、“公言したくないというわけじゃないんだけど、自然に隠してしまう”自分の気持ちが吹っ切れて、心が軽くなったんです。それと同時に、ずっと存在を明かさずにいた妹たちに申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

小さいころからずっと抱えていた心の葛藤が、エンタメを介したらあっという間になくなって…。
改めてエンタメの力ってすごいなと実感しました」(莉奈さん)

障がいの有無は関係なし! 一緒に楽しく過ごすと仲良しに

「『FaiRy』のパフォーマンスは一人一人が楽しく輝いていればOK。障がいのある2人の妹がいる私に“揃える”という概念はないんです」(莉奈さん)

『FaiRy』の活動は、イベントなどでのパフォーマンスを中心に、福祉施設に出向きダンス指導を行う訪問型ダンスレッスン、障がいのあるアーティストや障がいのある方がいる家族への支援などがあります。

パフォーマンス活動のレッスンは公共施設で週1回。メンバーの子どもたちは健常の子も障がいのある子もいて、家族全員が健常者という子も参加しています。

「レッスンを始めたころは、健常の子と障がいのある子の間に少し壁があったんですが、一緒に活動するうちに自然と打ち解けて。障がいのある子がみんなを笑わせたり、健常の子が障がいのある子の手を引いて移動したり、出番を待ったり…。

みんなが優しい心を持って自主的に行動していて、それがパフォーマンス本番にも出ているんです。
そんな子どもたちのなにげない様子を観てもらうことも、活動する意義の一つかなと思っています」(莉奈さん)

障がい者の運動不足に着目した活動は大好評

障がいのある方が運動不足傾向にあることに着目した莉奈さん。
福祉施設を訪問してダンスレッスンを行っています。

「東京都が行った『18歳以上の都民の2022年スポーツ活動に関する実態調査(※2)』を見たら、障がい者のスポーツ実施率は2022年が35.2%、2021年は35.4%、2020年では31.4%と低い結果だと知り、活動を始めました。

妹がお世話になっている作業所でレッスンしてみたら、みなさんとても喜んでくださって。今はいろいろな施設に伺っています。

障がいのある方向けのダンス教室はあっても、障がいの種別や等級が決められていて参加できないといったケースも多いんです。なので、生活環境や障がいの等級にかかわらず、たくさんの方に運動する機会をつくりたいと思っています」(莉奈さん)

訪問型ダンスレッスンは、いい効果も出ているそうです。

「普段はずっと座っている方がダンスのときはずっと立っていたり、いつも物静かな方が“今度は●●の曲でやりたい”などと自発的な発言が増えたり…。
“ダンスの日をみんな楽しみにしてるよ”
“ダンスのときはみんなイキイキしてる“って施設の職員さんから言っていただくと、さらにやりがいを感じます。

何より、ダンスをするみなさんが心からの笑顔を見せてくれるのが本当にうれしくて。
肢体不自由な方は、体を動かすことはできないけれど、楽しそうに手や指を一生懸命動かしていて…。そのときの笑顔は本当に輝いていて。涙が出るくらいうれしかったです。
こちらが元気をもらいに行っているような感覚になります」(莉奈さん)

就労の難しさを解決したい!

『FaiRy』で一緒に活動する、ドラム演奏者の城太郎さん(24歳)。視覚障がい者です。「彼の優しさが伝わる演奏が、パフォーマンスをより盛り上げてくれます。」(莉奈さん)

厚生労働省が発表した『令和4年障がい者雇用状況の集計結果(※3)』によると、民間企業では雇用障がい者数が前年より1万6172人多い61万3958人、実雇用率2.25%と過去最高の実績となりました。
でも、莉奈さんの身近にいる障がいのある方は、就労の難しさを抱えているそうです。

「選べる職業が少なくて…。そして、特技や才能があっても、挑戦する機会に恵まれないケースや離職率も目立ちます。一緒に暮らす私の妹もそうですが、とくに視覚障がいがあると就職率が低いんです。
たとえば、目が見えないという個性があるからこそ音楽の才能があるなら、その力を活かして働ける仕組みが必要だと確信しています。
個性や特技が仕事になるように、アーティストという職業の選択肢をつくる活動をしているところです」

障がいのある方の家族も、就労しにくい現実があります。

「介助や付き添いなどでどうしても時間に制約があるので、就労しにくいのが実情です。パフォーマンスの様子を楽しみながら、介助や付き添いが仕事となるような就労環境を整えています」(莉奈さん)

原動力はたくさんの笑顔!一方で人材や資金面に厳しさも…

「笑顔で踊って観ている方も笑顔にするダンスが好きなので、『FaiRy』のパフォーマンスでもそれを大事にしています」(莉奈さん)

『FaiRy』を立ち上げてよかったこと、大変なことを莉奈さんに尋ねると、

「みなさんの笑顔に出会うたびに“立ち上げてよかった!”って心から思います。
最近とくに印象的だったのは、私と同じような想いをしているきょうだい児と障がいのある本人が入会してくれて。家族で楽しんでいる様子を見れることです」

人材不足や練習場所、資金面に気がかりも…

『FaiRy』のパフォーマンス。

チームの立ち上げから約4年。活動が広がるにつれ、マンパワーや練習場所、活動費に厳しさを感じることもあるそうです。

「今『FaiRy』のスタッフは私1人。メンバーへのダンス指導や振り付け、イベント主催者との交渉など、すべての業務を1人でこなしていて…。そして、活動の多くはボランティアで行っている状況です。

先日、活動の様子をネットでの生配信に挑戦したんです。メンバーのサポート、盲人の誘導、パソコンや音響操作などを1人でやりながら出演もして…。そのとき、さすがに“限界だな”って思いました」(莉奈さん)

活動を実りあるものにするために、チームの想いに共感し、応援してくれる企業やスタッフと巡り会いたいと莉奈さん。

「サポートしていただくことで、いいアイデアやいろいろな価値観が加わって、よりよい活動ができるようになったらとてもうれしいです」

練習場所がないことも気がかりだそうです。

「いろいろ探しても、活動しやすい練習場所ってなかなかないんです。
参加したいと思ってくださる方が躊躇なく参加できる練習場所があったらなと…。

だから、寝たきりの方や大型車いすで移動する方など、誰もが気軽に通いやすいバリアフリーのダンススタジオとシアターをつくることが私の夢なんです。広い駐車場と大型エレベーター完備で!(笑)」

いろいろな人との触れ合いを大切に

『FaiRy』のパフォーマンス。

内閣府が行った『障がい者に関する世論調査(※4)』(令和4年11月調査)によると「世の中には障がいのある人に対して、障がいを理由とする差別や偏見があると思う」と回答した人が約9割という結果でした。
この現実を莉奈さんはどのように捉えているのでしょう?

「障がいのある方のほうが人口の割合を見ても少ないので、どうしても特別視されやすいのかもしれません。ただ、障がいのある方と普段かかわっている私から見て、差別や偏見があるのは実感しています。

一概には言えませんが、そういった環境の中で、障がいのある方だけでチームをつくるのではなく、障がい者も健常者も一緒に活動することで、より多様な社会を推進できるのではないかと考えました。

『FaiRy』を立ち上げる前に、健常者を対象に障がい者に対するイメージ調査を独自に行ったんです。すると、“話しかけにくい”“いきなり大声を出したり暴れそうで怖い”といった意見が目立ちました。意見をまとめると、“触れ合うきっかけがないから接し方がわからない”ことが大きな課題ではないかと。

障がいの有無にかかわらず、つながるきっかけをつくって共に楽しむことで、接し方もわかってくるし、自然と打ち解けられるのではないでしょうか」

障がいのある人もない人も、いろいろな人と触れ合う経験をして欲しいと莉奈さん。

「とくに子どもたちには、いろいろな方と触れ合ってもらえたらなと思います。その経験を積んだ子が増えれば増えるほど、これからの未来や社会はとても豊かになっていくと信じています。

『FaiRy』の活動は、障がいのある2人の妹とエンタメの道を与えてくれた母がいる家庭で生まれ育った、私にしかできない人生の使命。

活動を通じて、みんなが自分の個性を活かして活躍できる社会をつくり、それを日本からニューヨーク、そして世界中に発信していきたいです。今後も人生をかけて活動していきます」

「日々の活動をサポートしてくれている親御さんには、せめて本番当日だけは観客に徹して楽しんでもらうのが私のこだわりで。ただ、大きなイベントのときは私1人ではサポートしきれないので、メンバーのきょうだいたちにお手伝いをお願いするんです。障がいのある子のきょうだいもいれば、障がいのない子のきょうだいもいます。
そうすることで、いろいろな方と触れ合うきっかけになるし、多様性も育つ。世代育成にもつながると思っています」と莉奈さん。

これまでかかわりのなかった方と接する機会があるときは、思い切って飛び込むことで、新たな学びが得られたり、誰もが活躍しやすい社会の実現につながっていくかもしれませんね。

取材協力・写真提供/FaiRy 取材・文/茶畑美治子

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年12月の情報で、現在と異なる場合があります。

※1 きょうだい児
兄弟姉妹に障がい児、障がい者がいる人のこと。

※2  都民のスポーツ活動等に関する調査結果<速報>について

※3  令和4年障がい者雇用状況の集計結果

※4 障がい者に関する世論調査

吉川莉奈さん

1995年生まれ。エンターテイナー、振付師。
某テーマパーク、某キャラクターミュージアム、キャラクターショー、ダンスやミュージカルイベントへの出演などの活動を経て、2019年にFaiRy代表に就任。就任後は、東京2020パラリンピック閉会式、UN77 Celebration Music Festival for SDGs 2022,World Singing Day 2023 in Japanといった国際的なイベントなど、数多くのイベントやフェスティバルなどに出演。自治体や企業と連携したダンス教室やイベントも多数開催。福祉施設や特別支援学校、大学、小学校、幼稚園などで講義やダンス指導も行う。
テレビ朝日「気づきの扉」、JCOM「デイリーニュース」「ジモトトピックス」をはじめ、TOKYO854やFM西東京などのラジオ番組への出演、情報誌などの特集でも注目を浴びる。

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