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幼稚園の昼食はイタリアンのフルコース!?友だちより恋人より、家族を大事にするのがイタリア流【イタリアと日本の育児の違い体験談】

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イタリアのおばあちゃんと一緒にニョッキ作り!

22歳の娘と19歳の息子を育てる歯科医師のファストロ滋子さん。25年前に結婚したイタリア人の夫は東京・神楽坂の人気イタリア料理店のオーナーシェフ。滋子さんは日本にいながら娘をトリリンガル、息子をバイリンガルに育て、娘はオペラ歌手をめざして現在イタリアの国立音楽院に留学中です。「イタリアは日本にたりないものを教えてくれた」と言う滋子さんに、日本とイタリアの子育ての違いなどについて聞きました。全2回のインタビューの1回目です。

仕事よりも、友だちよりも、恋人よりも家族優先!?なイタリア

長女が1歳半のときにイタリアの教会で結婚式を挙げたときのようす。長女が泣きやまず、抱っこしたままの式に。

――夫ステファノさんとの出会いについて教えてください。

滋子さん(以下敬称略) 20代後半のころ、歯科医師として国際学会での英語力を高めるために、勤務していた大学病院をやめたタイミングでイギリスに語学留学した時期のことです。イギリスの語学学校で出会ったのが、4歳年下のイタリア人のステファノでした。子どものころから柔道を習い日本文化が大好きだったステファノは、ずっと「日本に行きたい」と思っていたらしく、私に「日本語を教えてください」と声をかけてくれました。

その後、友人のパーティーをきっかけに何度か会うようになりましたが、私は帰国が決まっていたので、お付き合いすることはないだろうと思っていました。でも、私が帰国して1年ほどたったころ、ロンドンにいる彼から「日本に行きます!」と連絡をもらいました。

――来日したステファノさんからのアプローチで結婚することになったのでしょうか?

滋子 イタリア人男性というと女の子にすぐに声をかけてどんどんアプローチする、というようなイメージがあるかもしれませんが、彼は全然そういうタイプではないんです。私よりも時間をきちんと守るし、仕事に対してもとても真面目です。

彼は来日して東京近郊に住んで、私は岩手で歯科医をしていたので遠距離で連絡を取り合いながら、お互いに自然に結婚することになった感じです。ちょうどそのころ、私も千葉にあるクリニックからお誘いがあったので、結婚して東京の彼の家に住んで千葉へ通勤することに。知り合ってから約2年くらいで結婚しました。

――イタリア人の男性との結婚に不安はありませんでしたか?

滋子 私は日本人の医者で、彼はイタリア人の料理人。育った環境も言葉も、職業も全然違うから、結婚してやっていくことができるのか、と少し不安はありました。

知り合ったのはイギリスだったし、イタリアのことをあまり知らないままに結婚したようにも思います。ただ、イタリア人男性はママが大好きというイメージがあったので、結婚するときには「私はあなたのお母さんにはならないからね」とだけは言いました(笑)
夫の母親のことも家族のことも結婚してから仲よくなっていった感じではありますが、夫はマンマ(母)のことが大好きなことは違いありません。

結婚後ですが夫から聞いたエピソードを一つ紹介します。
夫が10代のころのイタリアは、まだ徴兵制度があって、夫も18歳のときに軍隊に入りました。入隊して2~3週間、訓練で時間がなく実家に連絡できずにいたら、母親から軍隊に電話が入り、その後長官から「なんでお母さんに連絡しないんだ!」と怒られたんだそうです。軍隊といえどもマンマは最優先事項のようですね。

母子3人でイタリアの夫の実家へ、半年間の長期滞在

イタリアの幼稚園でのイベントのひとコマ。先生と手をつないでいるのが長女の彩来さん。

――結婚後、娘さんと息子さんが生まれ、夫婦での家事や育児はどんなふうに分担していましたか?

滋子 娘の彩来(さら)が2001年の10月、息子の礼(れい)が2004年の5月に生まれました。夫は来日してからの4年間は神楽坂のイタリア料理店に勤め、2004年に自分の店をオープンしました。だから子どもたちが生まれたころは仕事がとても忙しく、朝出勤してから帰宅は深夜になることもしょっちゅう。私はほとんどワンオペ状態だったので、自分の仕事は、子どもたちに手がかかる時期は一旦やめたりして調整していました。

だけどそんな忙しい中でもすごく助かったのは、彼が子どもたちとの時間を積極的に作ってくれていたことです。自宅も職場から近く、午後3時から5時までの休憩時間に、彼は家に帰ってきて、子どもたちとの時間を作ってくれていました。職場近くの公園で一緒に遊んでくれたりも。これも、家族や子どもとの時間を大事にするイタリア人らしさだったのかもしれません。だから1人で育児をしてる感じは全然なかったです。イタリア人は家族をとても大事にします。友だちよりも恋人よりも家族の用事を優先するほどです。

――滋子さんは、彩来さんが4歳、礼さんが2歳のときにイタリアに半年間長期滞在したそうです。きっかけは?

滋子 急に思い立ったんです。今振り返れば、夫の故郷になじんでほしい思いがあったのかもしれません。仕事がある夫を日本に残し、6カ月間、夫の実家でお世話になりました。それまでも、夫と結婚してからは毎年1年に1回はイタリアの夫の実家に行っていたはいたんですが、長期滞在はしていませんでした。

夫のマンマはすごく優しくて世話好きな人。6カ月の滞在中も、洗濯もアイロンがけも料理も、私たちの身のまわりのことをなんでもしてくれました。私は何もすることがなくて、食器洗いをするぐらいで・・・。イタリアでは洗った洗濯物はパンツまでビシッとアイロンをかけるんですが、私たちが洗濯物を出すと、マンマがビシッときれいにアイロンをかけた服を渡してくれました。

日本では夫の実家では嫁が動かないと、のようなイメージがあるかもしれませんが、夫の実家ではそんなことがまったくありませんでした。イタリアのほかの家庭がどうなのかはわからないんですけど・・・私の周囲のイタリア人夫と日本人妻のカップルに話を聞いても、マンマがお世話をしてくれるという話はよく聞きます。

――長期滞在の間、彩来さんや礼くんはどのように過ごしましたか?

滋子 彩来はイタリアで幼稚園に通いました。イタリアの幼稚園で印象的だったことは食事です。1時間ほどの食事の時間に、前菜、パスタとリゾット、メインの肉か魚、ドルチェといったメニューが用意され、子どもたちは好きなものをプレートに取って食べるスタイル。イタリアの”食“へのこだわりに驚きました。

幼稚園ではイタリア語でコミュニケーションを取る必要がありましたが、娘はあまり話せなくて嫌だったようです。パパやおばあちゃんが話すイタリア語を聞いているから、先生やお友だちが話す内容は理解できていたけれど、言葉は話せなかった、と。帰国直前になってようやく少し話せるようになったようでした。

イタリアのカフェでは、子どもの声は気にならない

イタリアでは日常的に友人や親戚を家に招き大勢での食事を楽しみます。

――日本とイタリアの子育て環境で感じた違いはありますか?

滋子 長期滞在中にも夫の実家には、マンマの友人や近所の人が入れ代わり立ち代わり訪ねてきていたんですが、その知人たちから「子どもが1歳を過ぎたら母乳をあげるのはやめなさい、ごはんを食べないから」と言われていました。私は娘は2歳まで、息子は3歳まで母乳をあげていたんですけど、イタリアでは1歳過ぎて母乳をあげている人はあんまりいないようです。

また、イタリア人は家族で過ごす時間をとても大切にしています。夕食は必ず家族全員で食べて、親子でいろんなおしゃべりをします。
日本は子どもの塾や部活などで家族の夕食がバラバラだったりすることもありますよね。イタリアにはそもそも学習塾に通う文化がありません。

もちろんイタリアも核家族化はしていますが、おじいちゃんおばあちゃんが近所に住んでいることが多く、親の仕事の都合で子どもの面倒を祖父母に頼ることもよくあります。

――小さい子どもを連れて外出や外食するときなど、街中での周囲の反応はどうでしたか?

滋子 子どもが静かにするべき場所で騒いだら、親も周囲もその子どもに対して「騒いではいけないよ」と注意しますけど・・・そもそも子どもを連れて行くことができるカフェなどでは、大人のほうがおしゃべりの声が大きくてにぎやかです。だから子どもが騒いでも気にならないんじゃないかな(笑)

静かなレストランへは、子どもを家で寝かせて大人だけで出かけることが多いようです。だから私はイタリアのレストランで子どもが騒がしいという場面に出会ったことがない気がします。TPOに合わせて子どもが入れるところとそうじゃないところを選んでいるのかもしれませんね。

お話・写真提供/ファストロ滋子さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

滋子さんの話からは、イタリアの家庭の温かさが伝わってきます。イタリアでは周囲とかかわり合いながら、子育てを助けてもらうことが当たり前なのだそうです。滋子さんのイタリア流子育てのお話は、今の日本で希薄になりつつある、家族や親せきとの温かいつながりの大切さを教えてくれているのではないでしょうか。次回の内容は、2人の子育てについてです。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年12月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

ファストロ滋子さん(ふぁすとろしげこ)

PROFILE
秋田県生まれ、岩手県育ち。歯科医師、分子栄養療法医。夫はイタリア人オーナーシェフ、2人の子どもの母。日本にいながら、 娘をトリリンガル、息子をバイリンガルに育て上げる。 娘は現在、イタリアの国立音楽院に留学中。

『イタリアの子供は「宝物」と呼ばれて育つ 』

イタリア人の夫を持つ著者が、イタリアでの滞在や2人の子育てで経験したさまざまなエピソード通して、イタリア人的思考やイタリア人的生き方をまとめた一冊。ファストロ滋子著/1650円(かざひの文庫)

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