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「子どもの偏食はしつけのせいではなく、理由がある!」。自身の会食恐怖症の経験と、1000人以上の食の悩みを聞いて見えてきたこと

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Vadym Petrochenko/gettyimages
Vadym Petrochenko/gettyimages  ●写真はイメージです

子どもの好き嫌いや偏食に悩むママ・パパは、意外と多いものです。「食べられるものを増やしたいけれど、どうしたらいいかわからない」「保育園の給食で食べられるものが少なくて困っている」と悩んでいるママ・パパもいるのではないでしょうか。
食べない子専門のカウンセラーとして活動する、一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事 山口健太さんに、乳幼児の好き嫌いや偏食の主な原因と克服法について聞きました。

自身の会食恐怖症の経験から、子どもたちの食の悩みを聞くように

山口健太さんは、管理栄養士など栄養の専門家ではありませんが、食べない子専門のカウンセラーとして活動しています。活動を始めたきっかけは、自身の会食恐怖症の経験からです。

――山口さんが、食べない子専門のカウンセラーとして活動するようになった理由を教えてください。

山口さん(以下敬称略) 私自身、幼いころから小食でした。好き嫌いが多いというよりも、量があまり食べられないんです。小学生のころは、完食するまで帰れない居残り給食をさせられたこともありました。現在では、居残りさせてまで給食を食べさせる教師はいないと思いますが、私が小学生のころは、そうした対応をする教師もいました。

私は幼いころから野球をしていて、高校でも野球部に入りましたが、野球部では体を作るためにごはんをたくさん食べるように指導されます。合宿中は、毎日、お茶碗いっぱいの白米を朝2杯、昼2杯、夜3杯食べなくてはいけません。高校1年生のとき、初めて参加した合宿で食べきれずに、指導者にしかられました。「食べなきゃ! 食べなきゃ!」と思うほど、どんどん食べられなくなってしまい、食堂のにおいをかぐだけで気分が悪くなるようになってしまいました。症状はどんどん悪化して、しまいには誰かと一緒に食事をとることができない「会食恐怖症」に。会食恐怖症とは、社交不安症の一種です。

私は、会食恐怖症を薬を使わず自力で克服しました。そうした経験をもとに会食恐怖症で苦しむ人たちの支援活動を行っているのですが、その中で「うちの子も、小学校で給食が食べられないのですが、会食恐怖症ではないでしょうか?」という悩みを聞くようになりました。
しかしママ・パパから話を聞くと、背景にあるのは偏食です。「偏食の子って、こんなにいるんだ」と初めて知りました。

――子どもの偏食で悩むママ・パパは、そんなに多いのでしょうか。

山口 私はSNSや対面などで食の悩みに答えたりしていますが、これまでのべ1000人以上のママ・パパから子どもの好き嫌いや偏食の相談を受けています。アドバイスをするとママ・パパから「偏食について、こんなにわかりやすく教えてもらえたのは初めてです」と言われることもあります。
ママ・パパも学校などで、食べられないものを増やす方法なんて習ったことがない人がほとんどでしょうし、教師や保育者も子どもの偏食対応について、教わる機会はほとんどありません。みなさん我流で、どうにか頑張って好き嫌いを減らそうとしているのですが、なかなか効果が得られないのが現状だと思います。

そしゃくやえん下など機能的な問題で、好き嫌いが多い子も

山口さんは子どもの好き嫌いや偏食には、理由があると言います。その一つが、そしゃくやえん下(飲み込み)など機能的な問題です。

――好き嫌いと偏食は違うのでしょうか?

山口 本来、好き嫌いは食べられる食材が20品目以上あり、栄養面などに問題がない場合。偏食は食べられる食材が20品目未満です。これは神奈川県立こども医療センター偏食外来の大山牧子先生の書籍を参考にしています。

しかし好き嫌いが多い子でも、偏食の子でも原因は同じです。
また味覚が発達する2歳ごろから、好き嫌いが増える傾向があります。2歳ごろになって、これまで食べていたものを急に食べなくなった経験をしたママ・パパも多いのではないでしょうか。

――乳幼児の好き嫌い・偏食の主な原因を教えてください。

山口 原因はいくつかありますが、一つは「機能的な問題」です。
離乳初期(5~6カ月ごろ)は、とろとろのポタージュ状やぽってりとしたペースト状
離乳中期(7~8カ月ごろ)は、指でラクにつぶせる絹ごし豆腐ぐらい
離乳後期(9~11カ月ごろ)は、指でつぶせるバナナぐらい
離乳完了期(1歳~1歳6カ月ごろ)は、スプーンでラクに切れる煮込みハンバーグぐらい
幼児食(1歳7カ月~2歳ごろ)は、フォークで切れる焼きハンバーグぐらいなど、乳幼児期は月齢に応じて食材のやわらかさの目安があります。しかしこれはあくまでも目安です。

わが子のそしゃくや飲み込むときの様子をよく見てあげてください。口腔機能が未発達でまだ上手に食べることができないものを無理して食べさせると、子どもはうまく飲み込めません。「いつまでも口の中に残っていて気持ち悪い」という嫌な経験から、その食材を食べなくなってしまうこともあります。
また飲み込みにくい肉や魚などは、吐き出す子もいます。しかしママ・パパに「ちゃんと食べなさい」としかられると、「しかられたくない」という思いから、肉や魚などを口に入れたくなくなる子もいます。

そのため好き嫌いや偏食が気になるときは、まずは子どものそしゃくや飲み込むときの様子をよく見ましょう。「かみづらそう」「上手に飲み込めていない」と思ったときは、食材の形態を食べやすいものに工夫してみましょう。
また幼児で、そしゃくや飲み込み方が気になるときは、小児歯科医に相談してみるといいでしょう。

食べられる食材を増やすには、調理法を変えるのもおすすめ!

子どもの好きな食感からスタートする、ほうれん草の調理法の一例。

子どもの好き嫌いや偏食は、調理法を変えることで食べられるものが増えることがあります。

――幼児の好き嫌い・偏食で、ほかに原因はありますか。

山口 ほかには「感覚的な問題」もあります。ママ・パパでも「ネバネバした食感は苦手」などありますよね。子どもも同じです。またにんじんを食べて「甘い」と感じる子もいれば、「苦い」と感じる子もいます。
感覚的な問題で好き嫌いや偏食がある場合は、その子の好きな食感に合わせて、食べられるものを広げて行くことがポイントです。たとえばじゃがいもを食べないときは「うちの子は、じゃがいもが苦手」と決めつけずに調理法を変えてみましょう。肉じゃがは苦手だけど、フライドポテトなら食べる子もいます。

ほうれん草もくきの部分を細切りにして揚げる→くきの部分を細切りにして、子どもの好きな味つけで炒める→ほうれん草炒めにする→ほうれん草を煮るといったように、子どもが食べそうな調理法から少しずつステップアップすることで、ほうれん草の煮びたしなどが食べられるようになる子もいます。
調理方法を変えるだけで、食べられる食材が増える子は意外と多いです。

お話・監修/山口健太さん イラスト/佐々木奈菜さん 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

山口さんは高校時代、食べられずに悩んでいることを友だちに相談したら、みんな真剣には取り合ってくれずに、ショックを受けたことがあるそうです。「食の悩みは当事者しかわからないことが多いいです。子どもだってママ・パパや保育園・幼稚園の先生などに理解されずにつらい思いをしているかもしれません」と言います。

山口健太さん(やまぐち けんた)

PROFILE
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事。食べない子専門のカウンセラー。食育研修講師。『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』編集長。全国の保育園などで講演会も行う。

山口健太(やまけん)Instagram

『子どもも親もラクになる 偏食の教科書』

子どもの偏食改善の方法をイラストや図を使ってわかりやすく解説。子どもの食の悩みを解決するアイデアが満載。
山口健太著、藤井葉子監修/青春出版社(1870円)

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