【大人気YouTuber理央奈ちゃん・6歳】低身長症や側弯症などの病気を抱えても「人間の価値は身長で決まらない」という医師の言葉が支えに
パパに鋭いつっこみをしたかと思えば、メイクやファッションが大好きな一面も見せてくれる、6歳のYouTuberちいりおちゃんこと理央奈ちゃん。「ちいりおちゃんねる」はチャンネル登録者数121万人(2024年1月現在)と大人気です。
明るくてキュートな理央奈ちゃんですが、実は先天性疾患による低身長症や、脊椎が曲がってしまう「側弯症(そくわんしょう)」などさまざまな病気を抱え、現在は下半身まひで歩くことができません。
理央奈ちゃんが生まれたときのことを、母親の佳寿美さん(35歳)に聞きました。全3回のインタビューの1回目です。
妊娠がわかったころ、お兄ちゃんが急性脳症に。「お兄ちゃんを助けて」と願った
――理央奈ちゃんを妊娠したときのことを教えてください。
佳寿美さん(以下敬称略) 私は大学卒業後、地元の信用金庫に就職しました。夫が先輩として働いていて、私が25歳、夫が26歳のときに結婚しました。そして、26歳で長男の湊人を出産しました。
湊人が1歳を過ぎたころ、理央奈を授かっていることがわかったんです。妊娠は8週くらいとかなり早い段階で気づき、心拍確認もできました。
無痛分娩を希望していたので、その後無痛分娩ができる産院に転院し、そこで妊婦健診を受けたところ「赤ちゃんの首の後ろにむくみがある」と診断されて・・・。胎児は首のむくみが3ミリ以上あると染色体異常などの可能性があるそうです。理央奈は4ミリ以上ありました。
そこで、大学病院に行くようにすすめられました。転院して改めてエコーで診てもらうと、「全身がむくんでいます。胎児水腫といわれる状況だと考えられます。おそらく無事に生まれることはないでしょう。手術の検討をおすすめしますが、次の健診までに決めてきてください」と衝撃的な告知をされたんです。
どっちみち生まれてこないから早いうちに堕胎をしたほうがいい、ということでした。驚きましたし、とてもショックでした。
――とてもつらい決断を迫られたと思います。それでも産もうと思ったのはなぜでしょうか。
佳寿美 ちょうど理央奈の妊娠がわかったくらいのタイミングで、長男の湊人が急性脳症にかかってしまったんです。
医師からは「命は助かるが、もとの湊人くんにはおそらく会えないと思ってください。約70%の確率で知的障害が残ります」と言われました。本当につらくて、おなかにいた理央奈に「お兄ちゃんを助けてあげて」と何度も声をかけて、心の支えにしていました。すると湊人は奇跡的に回復したんです。そして後遺症もまったく残りませんでした。
「おなかの赤ちゃんが湊人を助けてくれたんだ」と感じたので、なんとしてもこの子を産みたいと思ったんです。
そこで、セカンドオピニオンとして大阪で出生前診断を専門としている先生にも診察してもらいました。遺伝子検査などさまざまな検査をした結果「健康な人が受けても何かしらは出るような詳細な検査だから、そこまで気にすることはない。自信を持って産んであげていいと思う」と言われ、ほっとしました。それで出産することを決意しました。
出産直後呼吸と哺乳の異常が確認され、2カ月間入院
――理央奈ちゃんを出産したときの様子を教えてください。
佳寿美 2017年3月に経腟分娩で生まれました。身長48cm・体重2882gで、出産時はそれほど小さくありませんでした。ただ、呼吸と哺乳の異常が確認され、NICU(新生児集中治療室)とGCU(新生児回復治療室)に生後2カ月ごろまで入院していたんです。
理央奈が入院中は高速を使っても1時間くらいかかる場所にある病院まで私の母が車で連れて行ってくれました。私と湊人を乗せて・・・。冷凍した母乳を届けたり、授乳の練習をしたりしました。
病院が遠いので理央奈の面会は半日がかりになってしまいます。それだけだと長男の湊人がかわいそうだから行き帰りのどこかで公園に行ったり、幼児クラブに通ったりしていました。毎日本当に忙しかったです。
――理央奈ちゃんが上手に呼吸や授乳できなかったのはなぜでしょうか?
佳寿美 呼吸に関しては「ピエール・ロバン症候群」という、小顎症や呼吸困難を呈する症状があると病院で指摘されました。
授乳がうまくできなかったのは、口の上あごに穴がある「口蓋裂(こうがいれつ)」の症状があったからです。上唇が避けた状態だったりする「口唇裂」はおなかのなかにいるときのエコー診断でわかる場合も多いようですが、理央奈は口蓋裂だけだったため、生まれてからその症状があるとわかりました。
そのため、生後10カ月までミルクは鼻から胃にチューブで注入していました。退院後は哺乳びんで口から飲む練習と栄養をチューブで注入するのと、どちらも行いました。注入は私がしたのですが、毎回1時間~1時間半ほどかかり、誤えんを防ぐためその間ずっと見ていないといけません。苦労して注入してもすぐに吐き戻してしまって・・・。私も睡眠不足で、吐き戻しの洗濯にも追われ、体力的にもしんどかったです。
ところが、生後10カ月になると、急に普通のお米を食べるようになったんです。離乳初期のやわらかい離乳食は食べることはありませんでした。
――身長や体重はどれくらいでしたか?
佳寿美 生後10カ月で身長61cm、体重7.4kgでした。なかなか大きくならないから、毎日のように近くのショッピングセンターに置いてある身長計で身長を測っていました。成長曲線も記録し、測り方によって減るときにもあって落ち込んでいました。
発達もゆっくりで、乳幼児健診では寝返りが遅い、おすわりが遅い、喃語(なんご)が少ないなど毎回相談してばかりで・・・。でも市の健診では「かかりつけ医にしっかり診てもらってね」と言われるばかりでした。今でこそおしゃべりが大好きな理央奈ですが、赤ちゃんのときはなかなか言葉も出ませんでした。
2歳で口蓋裂を閉じる手術を受けてからは言葉も増え、食事量も増えました。とても効果を得られた手術だったと思います。ただ、食事を食べられるようになっても身長は伸びませんでした。
「なんで背が伸びないんだろう?この先どうなるの・・・?」と毎日苦しくて、まったく先が見えませんでした。
4歳で先天性の骨系統疾患の疑いを指摘され、遺伝子検査を受けることに
――4歳で先天性の骨系統疾患の疑いを指摘されたと聞きました。
佳寿美 身長が伸びないのは「成長ホルモンの異常が原因では?」と思い、ホルモンに関する低身長の検査を希望していたんです。ところが医師から先天性の骨系統疾患の疑いを指摘され、遺伝子検査を受けることになりました。
その診断検査は、なんと現在でもまだ正式には出ていません。結果が出るまでに最大5年かかると言われています。現在理央奈は側弯症(そくわんしょう)や低身長症などさまざまな症状を抱えています。でも、こうした症状の原因となっている疾患について、確定診断は出ていないんです。
この4歳のころ、医師からは「普通の人のような身長になることは望みにくいだろう」と言われ、どうしたらいいのかわからなかったです。
でも、「人間の価値は身長で決まらないことを教えてあげてください」と言ってくれたのが救いになりました。
この言葉のおかげで「背が伸びないのは理央奈の個性。この子のために何かしてあげられることはあるかな?」と気持ちを切り替えられるようになりました。前を向くきっかけになったんです。今でもその医師にはとても感謝しています。
お話・写真提供/佳寿美さん 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部
さまざまな病気を抱えている理央奈ちゃん。毎日の育児は、とても大変だったと思います。身長が伸びない症状と診断されてショックだったとのことですが、「それがこの子の個性」ととらえ、「理央奈のためにできることはなんだろう」と気持ちを切り替えた佳寿美さんには頭が下がります。両親のこうした前向きな姿勢が理央奈ちゃんの明るさをはぐくんだのかもしれません。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
『今日もさわやかに麗しく生きていきましょう』
「ちいりお」ことりおなちゃんは、今やSNS総フォロワー数160万人越えのスーパーユーチューバー! 実は側弯症の手術の影響で身長は93センチで止まり、下半身がまひして歩けない女の子。人生ハードモードなりおなちゃんですが、また歩くことを信じて一生懸命リハビリと学業&ユーチューバーをこなす日々。ちいりお・ちいりおママ著/1650円(KADOKAWA)
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年1月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。