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救急医療の現場から~新しい感染症[hMPV気管支肺炎]とは?

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iStock.com/Sasha_Suzi

「ヒトメタニューモウイルス(hMPV)」は2001年に発見された、比較的新しいウイルスです。とくに乳幼児の呼吸器感染症を引き起こし、赤ちゃんが感染すると、気管支炎や肺炎となる場合も。感染力が強く、上の子がかかると、赤ちゃんにうつりやすい傾向があります。
ここでは、1歳代の子が感染し、気管支肺炎を起こした症例を、北九州八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長である市川光太郎先生に、紹介していただきました。

せき込んで何度も嘔吐。酸素が十分取り込めていない!

「1歳10カ月の女児で、昨夜から39度前後の発熱や、鼻水とせき込みがあり、せき込んで何度も嘔吐するとの救急要請です。確かに顔色が少し悪く、経皮的動脈血酸素飽和度(血液中の酸素の量を示す)が94-95%です。救急搬送してもいいでしょうか」と準夜帯(16時~0時ごろ)にホットラインがあった。

病院に到着し、救急車から母親におんぶされて降りてきたが、確かに顔色に少し赤みがなく、目がうつろでグッタリした感じがあった。
すぐに衣服を脱がせて診察すると、呼吸はやや速く、上気道が狭くなっているサインである、胸骨上窩(きょうこつじょうか・のどぼとけの下)と肋骨の間に陥没呼吸が認められた。鼻汁もひどく、鼻が詰まって口呼吸をしており、胸の聴診では、気道の分泌物がかなり多くなっている様子がうかがえた。咽頭(いんとう)をのぞき見ると、発赤(ほっせき)も強く、気道感染を強く起こすウイルスの感染が疑われた。

すぐに、酸素投与を行いながら、呼吸器で増殖しやすいRSウイルスとヒトメタニューモウイルスの迅速診断キットで同時に検査すること、点滴および採血、胸部X撮影を行うように研修医に指示して、その間に母親から話を聞くことにした。

母親は「せき込んで何度も吐いて、グッタリして、いつもと全然違う状態になったので、心配で救急車を呼びました! 大丈夫でしょうか? 救命士さんがこちらに来る途中で酸素飽和度が低いというようなことを言っておられましたけど、それって、ひどい状態ということでしょうか?」と先に口を開いてきた。

「確かに98-100%あって欲しい酸素濃度が94-95%ですので、酸素が十分取り込めない状態です。ただ、酸素を毎分2-3リットル流すと100%になるので、そうなればいくらか安心です。昨日までは元気でしたか? きょうだいはいますか? 上のお子さんは風邪気味ではなかったですか?」の問いに、母親は
「そうです、昨日までは元気でした。急に、昨日の夕方からです。4歳のお兄ちゃんが4~5日前からせきと鼻水を出し始めていて、1日だけ38度の発熱があったのですが、1日で下がり元気でしたので、病院にも行きませんでした。きっとお兄ちゃんからうつったんでしょうね」と話した。

ヒトメタニューモウイルスによる気管支肺炎と診断

このとき、X線写真と迅速診断キットを持って、研修医がやって来た。予想どおりヒトメタニューモウイルスが陽性であり、胸部のX線検査では「気管支肺炎の状態です」と教えてくれた。確認すると、確かにそのとおりであり、さらに悪化することが予想された。

母親にヒトメタニューモウイルスによる気管支肺炎であり、酸素投与なしでは呼吸の状態がかなり悪くなりそうなため、入院治療がベターと説明したところ、「ぜひそうしてほしい」と納得してくれた。

入院後4日目までは酸素テントに収容されて、呼吸がきつそうであった。しかし徐々に母乳の飲みもよくなり、酸素テントから出ても経皮的動脈血酸素飽和度が下がらなくなった。ようやく母親にも笑顔が見られるようになった。

ヒトメタニューモウイルス感染症の対処法

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)とは、RSウイルスといとこ同士のようなウイルスで、1年中発症がみられますが、とくに春先に流行しやすく、呼吸器で増殖します。RSウイルスよりやや年長児に感染しやすい傾向があり、RSウイルスよりも症状は軽症で済むことが多いです。乳児の場合、保育園などの集団生活やきょうだいから感染するケースが一般的です。ヒトメタニューモウイルス感染症が流行しているときには、以下のことに気をつけましょう。

1. 予防薬、特効薬がないので流行期には不要な外出を避けること

2. 先天性心疾患、筋疾患、気管支ぜんそくの子は重篤化しやすいので注意を

3. 発熱やせきなどの症状がひどく、水分摂取や睡眠が困難な場合は、すぐ受診すること

市川先生が、赤ちゃんがかかりやすい病気や起きやすい事故、けがの予防法の提案と治療法の解説、現代の家族が抱える問題点についてアドバイスしてくれる、「救命救急センター24時」は、雑誌『ひよこクラブ』で好評連載中です。(構成/ひよこクラブ編集部)。

■監修/市川光太郎先生
北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長。小児科専門医。日本小児救急医学会名誉理事長。長年、救急医療の現場に携わり、子どもたちの成長を見守っていらっしゃいます。

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