【専門医に聞く】インフルエンザワクチンの効き目は?気になる水銀問題は?
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10月ごろから始まるインフルエンザの予防接種。「受けたところでかかってしまうことも多い」という声もある中、実際、インフルエンザワクチンには、どの程度の予防効果があるのでしょうか? どうして効果が出る人とでない人がいるのか…「インフルエンザの予防接種は赤ちゃんも受けるべき?」に続いて、インフルエンザ感染症を専門としている小児科医の廣津伸夫先生に伺いました。
インフルエンザワクチンの効きめが鋭くない理由
インフルエンザのワクチンは、いろいろな理由から現状、「100%発症を防ぐほどの効果は期待できない」といわれています。その理由はなぜなのか、廣津先生に伺いました。
インフルエンザウイルスが変異しやすい
「ウイルスは、人から人へ感染を繰り返していると、その性質を少しずつ変えて(変異して)いきます。とくにインフルエンザのウイルスは、その変異のスピードがとても速いという特徴があります。インフルエンザのワクチンは、WHO(世界保健機関)が流行するであろうウイルスを毎年予測して、ウイルスの株を変えつつ、ワクチンを製造していています。ただ、製造期間を考えると、どうしても流行株を早めに選定する必要があります。そのため、使用したワクチンの株からウイルスが変異してしまい、ワクチンの効果が弱まってしまう可能性が出てきます」
製造途中にウイルスが変異
「インフルエンザワクチンは、感染した人の鼻水などから分離したウイルスを、ニワトリの受精卵を使って増殖し、回収したものを処理して製造します。インフルエンザウイルスは、受精卵内で増殖させている間にも変異する可能性があり、せっかく予測した株が一致していても、ワクチンになったときに変異していて効果が弱まっているということもあるのです」
実際、2016年にA香港型が大流行した理由の1つには、ワクチンが製造中に変異していたこともあったようです。
皮下注射という接種法の問題
「インフルエンザワクチンは、現状、皮下に接種し、血液中に入った抗原(免疫力を作るもとになる物質)が、血液中で抗体を作ります。しかし、インフルエンザウイルスは、まず鼻やのどなど、呼吸器粘膜で増殖していくため、呼吸器粘膜で抗体が働いてくれないと、感染を抑えることができません。インフルエンザワクチンは、接種後、2週間ほどで血液中にインフルエンザの抗体をたくさん作りはするものの、呼吸器粘膜まで抗体を誘導することができないため、感染を抑えることが困難になっています。
そこで、現在、抗原を直接、呼吸器粘膜に届ける『吸入式のワクチン』や、抗体が全身に行きわたりやすくなるといわれる皮膚の薄いところに抗原を注入する『皮膚に貼るワクチン』などの開発が進められています。そして2003年に吸入式のワクチン『フルミスト』が登場し、日本でも認可されるといわれていました。しかし昨年、皮下注射ワクチンよりも効果が劣るというデータが出たことで、アメリカで推奨されなくなり、現在、日本では認可が下りていない状態です」
ママやパパのインフルエンザワクチンの気がかりを解決!
赤ちゃんのインフルエンザワクチン接種でママやパパが心配することは、卵アレルギーと水銀の問題。誤解して悩んでいる人も多い様子。ここで解決しておきましょう。
インフルエンザワクチンの水銀問題
「インフルエンザワクチンは、『水銀を含んでいるから』という理由から、赤ちゃんに受けさせたくないというママの声を聞くことがあります。確かにインフルエンザワクチンには、有機水銀化合物の1つであるチメロサールが保存料として使われています。かつて、チメロサールの添加について否定的な意見が多く出たときには、チメロサール無添加のインフルエンザワクチンが製造されたこともありました。しかし、現在では、チメロサールの乳幼児への有害性は否定されていることから、国内ではチメロサール無添加のワクチンは製造されなくなりました。また、現在添加されているチメロサールの量はごく少量なため、妊娠中でも安心して受けられるようになっています」
卵アレルギーの子はどうする?
「先にも触れたように、インフルエンザワクチンは、製造の際、ウイルスを増殖させるためにニワトリの受精卵を使います。そこで、微量ではあるものの、卵の成分がワクチンの中に含まれることは確かです。しかし、卵の成分はごく微量なため、卵アレルギーのある赤ちゃんでも接種は可能です。とはいえ心配な場合は、主治医に相談のうえ、接種するといいでしょう」
インフルエンザによる重症呼吸器障害のこともあり、インフルエンザの不安が高まっている昨今、6カ月を過ぎた赤ちゃんは、できる限りワクチン接種をしておくことが大事といえそうですね。
(取材・文/ひよこクラブ編集部)
■監修/廣津伸夫先生
1972年東京慈恵医科大学卒業。84年から神奈川県川崎市にて廣津医院を開院。感染症・インフルエンザが専門。多くの論文や、国際学会での発表があります。