生まれた長男にはまぶたがなく、眼球の表面が丸出しの状態。妊娠22週で赤ちゃんの頭部に気になることがあると指摘され・・・【体験談】
星野孝輔さん(27歳)、しほさん(33歳)夫婦が第1子の妊娠がわかったのは2022年のこと。望んでいた妊娠を喜んでいましたが、妊娠22週のころ、おなかの赤ちゃんの頭部に異常があると指摘されます。
しほさんは36週2日で出産の日を迎え、長男は未来くんと名づけられます。孝輔さんとしほさんは、未来くんのことを多くの人に知ってもらいたいとYouTubeチャンネル「星のミライChannel」で「おもちくん」の愛称で日々の様子を発信しています。母親のしほさんに、出産までのことや出産時のこと、初めて赤ちゃんと対面したときのことを聞きました。
全3回のインタビューの1回目です。
そろそろ妊活を・・・と考えていた直前、待望の妊娠
――しほさんが妊娠したときのことを教えてください。
しほさん(以下敬称略)6歳年下の夫と、約5年交際し、2020年、29歳のときに入籍しました。夫婦2人の生活を楽しんでいましたが、そろそろ子どものことを考え始め、妊活を始めようかと思っていた直前、2022年5月、私が31歳のときに妊娠していることがわかりました。妊活をすでに意識した生活をしていたので、わりと早い段階で体調の変化に気づいていたんです。それで、妊娠検査薬で検査しました。夫と一緒に確かめたら陽性反応が出ていて、うれしかったです。
夫は「病院で診てもらって確定しない限りは浮かれないぞ」と、ぬか喜びにならないようにするためか、うれしそうにしつつも慎重なことを言っていました。妊娠6週目か7週目に産婦人科に行って、妊娠していると告げられました。おなかの中に赤ちゃんが来てくれてすごくうれしかったです。夫もとても喜んでいました。
近所の産院で産むつもりで、妊娠13週目に赤ちゃんの情報を少しでも知っておきたいと考えてNIPT(新型出生前検査※)を受けたところ、赤ちゃんに染色体異常はないという結果でした。
――NIPTを受けたのはどうしてですか?
しほ そのころ妊娠・出産をしているような知り合いも多く、赤ちゃんの情報を得るためにNIPTを受ける人が周囲に多かったんです。私も赤ちゃんについて、より詳しくわかることがあるのなら受けたいと妊娠前から思っていました。
ただ、検査後の夫の反応を少しだけ心配していました。もし赤ちゃんに染色体異常があるという結果が出て、夫が迷うようであればNIPTは受けないでおこうと思っていました。そこで事前に「もし検査で赤ちゃんに何か問題があると言われたらどうする?」と聞いたらところ「別にどうもしないよ。どんな子でも僕たちの赤ちゃんだから、大切に育てて幸せな家庭を作るだけだよ」と即答してくれました。夫が赤ちゃんを待ち望んでいることがわかり、安心しました。
※新型出生前検査/ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーについての可能性を調べる検査
妊娠22週目で赤ちゃんの頭部に気になる部分があると指摘され・・・
――NIPTでは異常がなかったおなかの赤ちゃん。異変を指摘されたのはいつごろですか?
しほ 妊娠22週目です。私が通っていた病院では、「胎児スクリーニング検査」というものを推奨していて、妊娠22週のときにこの検査を受けました。
通常の妊婦健診で診るエコー検査よりもこまかい部分がわかる超音波検査です。
すると、「赤ちゃんの頭の横幅が普通よりも小さいかもしれない」と指摘を受け、再検査を受けることになりました。
再検査まで自分でいろいろ調べてみると、「小頭症」や「水頭症」に当てはまるのではないかと不安になりました。半面、病院であまり詳しい説明がなかったので、「たぶん大丈夫なんだろう」という気持ちでもありました。
――再検査の際は、どんなことを言われましたか?
しほ 23週目に、改めて同院のベテランの先生に再検査をしてもらいました。このときも、あまりこまかな情報は教えてもらえず「エコー検査はそのときの赤ちゃんの体勢なども影響して、見え方しだいで変わってきます。でも赤ちゃんの頭部に異常がある可能性があります。紹介状を書きますから、大学病院に行ってみてください」と言われました。すぐ大学病院に初診の予約を取り、次の週に行くことにしました。
大学病院の診察を待とうと思ってみても、どうしても心配で・・・。心配でしょうがなくて、本当はよくないことだと思いますが、封書ではなく、セロハンテープで貼ってあるだけだった大学病院への紹介状を開けて内容を見てしまいました。
――そこにはどんなことが書いてあったのでしょうか?
しほ 「頭蓋骨の形がレモン型になっている」、「目の位置が低く、目と目の間の間隔が広い」とありました。その日は夜通しインターネットを調べ続け、頭蓋骨がレモン型になる疾患として「二分脊椎(にぶんせきつい)」にたどりつきました。脊髄の形成に異常が生じ、水頭症や下半身まひが起きる病気のようです。
赤ちゃんが疾患を抱えているかもしれないと思うととってもショックで・・・。出産を楽しみにしてくれている人たちが悲しむかもしれない、おなかの赤ちゃんがつらい思いをするかもしれないと考えると、家族にも赤ちゃんにも申し訳なさでいっぱいでした。一方で、私の負の感情がおなかの赤ちゃんに伝わってほしくない気持ちもあり、なるべくリラックスして平常心を保つように自分に言い聞かせてました。
夫に情報を説明しながら大泣き。気持ちを切り替え、わが子を守ろうと決意
――夫婦ではどんなことを話したのでしょうか?
しほ 夫に「赤ちゃんが病気かもしれない」と説明しているとき、めちゃくちゃ大泣きをしてしまいました。でも、そこで感情を爆発させたことでだいぶ落ち着きました。夫と話しながら「どんな子が生まれてきても、わが子の幸せを守ってあげたい」と思うようになりました。そして翌週、大学病院に行き、より詳しくエコー検査してもらいました。
――大学病院ではどんな見解でしたか?
しほ 大学病院では1時間半ほどじっくりと検査を受けたあと、先生から「頭蓋骨の形に異変が見られるのが、赤ちゃんの目と目の位置が離れていることの原因だと思います」と、言われました。
その時点で私はすでに二分脊椎だと思いこんでいました。だから目に異常があるとは想像もしていなくて、すごく驚いたんです。
先生の説明によると、胎児の顔は、外側から閉じるような形で作られていくそうです。でも私のおなかの赤ちゃんは、何かしらの原因で頭と顔の骨が形成しきられず、両目の間隔がとても開いた状態になっているようだとのことでした。
二分脊椎の可能性があるかということを質問すると「背骨はきれいに形成されているので違うと思う。脳や心臓、内臓はエコーで診る限り問題ない」との回答でした。
とはいえ、「下あごや頬骨がかなり小さく、鼻の骨も短い。両目が個人差というレベルのものではないほど離れている。口蓋裂(こうがいれつ)・顎裂(がくれつ)の可能性がある。耳が形成されているかわからない」など気になる部分の指摘がたくさんありました。
あごが小さいため、出生後、呼吸が正常に行えない可能性や、疾患によっては、発達障害などをともなう可能性があるとも言われました。でも、その時点ではなぜこうなったか原因はわからないとの見解でした。
予想していた二分脊椎ではなかったと、ほっとする気持ちと、思った以上に新しい情報が多いことへのとまどいや不安がごちゃまぜになっていました。
――おなかの赤ちゃんに、何らかの疾患があるとわかっていても、原因が不明だったのでしょうか?
しほ そうです。そこで原因を調べるためもあって、先生に羊水検査をすすめられました。羊水検査は胎児によくない影響があることもあると理解していたので悩みましたが、原因がわかるならば、と受けました。しかしそこでも異常はありませんでした。
その後、先生方は海外の文献などもたくさん調べてくれましたが、該当するものが見つからなくて・・・。染色体に異常がないということで、ほかに考えられる原因としては遺伝子の疾患であり、顔に特徴が出る「トリーチャー・コリンズ症候群」または「ピエール・ロバン症候群」である可能性が出てきていました。
――しほさんのブログからも、病気についてとてもこまかく調べていたのが伝わります。当時はどんな気持ちでしたか?
しほ 赤ちゃんがどんな状態か、原因が何なのか「わからないこと」が多いのがとても不安でした。「赤ちゃんが病気を抱えている」ことを悲観するよりも、赤ちゃんが生まれたときに、できる限りのサポートをするために、さまざまな可能性について勉強しようと思っていました。
28週目で羊水除去。赤ちゃんの眼球の位置とまぶたがずれている可能性も指摘
――羊水検査を受けたあと、何か行ったことはありますか?
しほ 羊水検査後の妊婦健診で羊水が多すぎる「羊水過多症」の指摘を受けたんです。確かにおなかが大きすぎて後ろにのけぞるくらいだったし、どうきや息ぎれもしていました。食事をすると苦しく、吐きけがありました。
ふつう、胎児は子宮内で羊水を飲み、おしっことして出して羊水を循環させるそうです。でも、おなかの赤ちゃんの飲みこむ力が弱い場合、胎盤から子宮内に出ていっている水分を飲めません。それで羊水が循環せず増えているのかもしれないと言われました。原因がはっきりしないものの、羊水過多の原因が赤ちゃんの器官形成不全だった場合、対応が難しいとのことで、また転院することになりました。
31週目に、転院先の病院で2泊3日の短期入院をして羊水除去をしました。羊水除去自体の手術は30分ほどで終わりました。羊水の正常な量は約800ミリリットルと言われているなかで、抜いた羊水量は2.7リットルもあったんです。それでもまだ1リットル以上残っていたようで、羊水量の多さに驚きました。
――羊水除去をしたあと、何か行ったことはありますか?
しほ 羊水を除去したあとはとても身体が軽くなり、とても楽になりました。赤ちゃんの胎動もしっかり感じられるようになりました。ただ、羊水除去をして2週間後にはまた苦しくなってきたので、4週間後には再度羊水除去をすることになりました。
――そのころ、赤ちゃんの様子でわかっていたことはありますか?
しほ 33週でエコー検査をしてもらったときは、赤ちゃんの気道自体はちゃんと穴が通っているとのことでした。ただ、あごが小さいため、気道がふさがっているかもしれない。その場合は産まれたとき自分で呼吸ができない可能性があると説明されました。
酸素を送るために口からの挿管を試すが、難しいようであれば気管切開(肺に空気を送りやすくするため、声帯の下にある気管に孔を開けること)をすることになるとのことでした。気管切開をすると、赤ちゃんは声が出せなくなるのでできれば避けたかったのですが、赤ちゃんの生命優先だと考えていました。
エコー写真を見せてもらったところ、目の間隔も広そうで、それぞれの目が顔のはしっこについているようにも見えました。そして眼球の位置とまぶたの位置がちょっとずれている可能性があるとも指摘されました。
――眼球の位置とまぶたの位置が一致しない場合、どんなことが起こるのでしょうか?
しほ 先生も、実際に生まれた赤ちゃんを見てみないとどんな状態なのかわからないとのことでした。そのときは、斜視のような感じなのかな?と考えていました。
羊水過多の影響で、36週に帝王切開で出産することに。
――出産時のことを教えてください。
しほ 本来の出産予定日は2023年2月5日でした。でも、妊娠36週に分娩することになりました。約1カ月早い出産です。羊水が増えるスピードが早いので、出産日が近づくとリスクが上がってしまいます。また、万が一破水をした場合、赤ちゃんが急を要する処置が必要でも対応しきれない可能性があるというのが理由でした。
それに、もし赤ちゃんが自分で呼吸するのが難しかった場合、すぐに気管切開をするなど、必要な処置を適切に行う必要があります。少し早めに産むのは、生命の維持を確保するための処置でした。念のため、帝王切開で出産することになりました。
赤ちゃんには、なんらかの疾患があることはわかっていましたが、具体的にどんな様子なのかはこの時点でも不明でした。先生たちも首をかしげていたんです。赤ちゃんがどんな子なのか不安もあったものの、やっと会えるうれしさが勝っていました。
――出産当日はどんな様子でしたか?
しほ 予定通りの日に、帝王切開で出産しました。出産はあっという間で、ようやく赤ちゃんの顔が見られると緊張しました。でもどんなに耳をすましても産声は聞こえなくて・・・。自力で呼吸はできないんだと思いました。
赤ちゃんが苦しくないよう、早く処置してあげてほしいと思っていると「左を見てください」と声をかけられました。
言われた方向を見ると、保育器に乗せられ、隣の手術室に運ばれる赤ちゃんの顔が一瞬だけ見られました。
――赤ちゃんはどんな様子でしたか?
しほ おなかから出てきたばかりだからか肌は紫がかっていました。そして、お顔を見ると眼球の表面が丸出しの状態で、まぶたがなかったんです。
分娩を担当してくれた先生が赤ちゃんの顔を見て「なるほど」と言っていたのが印象的でした。先生からしても、実際に顔を見てようやく赤ちゃんの様子がわかったようです。超音波の精度が高まってきていると聞きますし、医療も進んでいると思うのに、生まれてくるまでこんなにもわからないことってあるんだ、と思いました。
赤ちゃんは自力で呼吸できなかったため、最初は口からの挿管を試みたそうです。でも難しかったようですぐに気管切開をして挿管をしたとのことでした。
私は、赤ちゃんに会えたこと自体はすごくうれしかったし、まぶたがない状態も想定していたことの一つでした。でも、目の前の赤ちゃんは想像しきれていなかったところもたくさんある状態で、つらい現実を突きつけられ、正直なところ少しひるんでしまいました。
それでも、先生の説明を聞こうと冷静になりました。ようやく会えた赤ちゃんは、生まれてすぐ、生きるためにNICUで頑張ってくれたんです。私も前を向かなくては、と赤ちゃんに励まされる思いでした。
お話・写真提供/星野しほさん 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部
妊娠22週目で赤ちゃんの頭の形について指摘を受けてから、赤ちゃんがどんな様子なのかもわからず、不安も多い妊娠生活だったことでしょう。それでも赤ちゃんのためにさまざまなことを調べ、前を向く星野さん夫婦の様子に力づけられます。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年3月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。