子どもの叱り方で悩むママたちの声。「叱る」と「怒る」について考える
今回のテーマは、子どもへの叱り方・怒り方についてです。想いがうまく通じずに、つい子どもに声をあらげてしまった経験を持つママは多いのではないでしょうか。そもそも、子どもを上手に叱るって、どうすればいいのかわからないという声も。
そこで、口コミサイト「ウィメンズパーク」のママたちの考え方を紹介するととともに、家庭教育協会「子育ち親育ち」代表の田宮由美さんに聞きました。
親だって感情的になることはある、人間だもの
――まずは、叱り方について悩むママの声を紹介します。
■ 親子で家にいることが増えて怒らなきゃいけない場面が増えた…
「3歳と1歳の男の子がいます。コロナの影響で、外にあまり出かけられなかった時期に、ストレスがたまっているのか、特に上の子に困ったなと思う行動が増えました。
家の中でできることが尽きてしまい、新しく始めた遊びはあまりやってほしくないことばかり。つばを出したり、鼻水を飛ばしたりといった汚いことや、絶叫したりオモチャを乱暴に叩いたり。最近は下の子を巻き込んで、危なくなりそうになることも。
子どもからしたら親が怒るときと怒らないときがあると理解できないだろうから、できるだけ『これはダメ』と決めていたいんです。でも本当に困ったようなことばかりするので、1日中、あれダメ、これダメと言わなきゃいけない状態で…。
自分の中でやってほしくない優先順位の高い『自分が危ない』『人に痛いことをする』はすごく怒りますが、それ以外はゆっくり言ってやめさせるようにしました。でも、ゆっくり言ったらほとんどきかず、疲れます。
他の方はどんなことを優先させ、そして怒る以外でどうやって困った行動をやめさせているのでしょうか」
――その悩みにママたちがアドバイスします。
■ 「危険なこと」「他人に迷惑をかけること」は怒っています
「『危険なこと』『他人に迷惑をかけること(特に暴力)』は怒ります。
大声でやめるように言って、がっつりと叱ります。
方法としては、『その都度言う』『ひどければ体を掴んでやめさせる』『顔と顔を近づけ低い声で言い聞かせる』『物であれば取り上げる』などです。
逆に、できた時はしっかりと褒めるよう心掛けています。
まぁ、それで聞いてくれたら悩むこともないんでしょうけど…」
■ 子どもに通じなくても、言い続けます
「DVレベルの怒り方は、ダメだけど、愛を持って、これからの幼稚園や学校などで過ごしやすくするために、ダメなことはダメと教えることは大事だと思います。
出来なくても言い続けると、子どももいつか、『あっ』って気付くと思うんです。
また、親がどうしようもなく怒りが湧き上がって叩いてしまいそうになったら、自分だけ外に出たり、他の部屋に行ったり、トイレに逃げ込んだりしてみてください。少し気持ちがおさまります」
■ 大人だって感情的になることもある
「怒らない育児を勘違いしている人がたくさんいるような気がします。
怒るとは、感情的に頭ごなしに言うこと。叱るとは、何がいけなかったかを理解できるように伝えること。危険なことや人を傷つけることはしっかり叱らないといけないと思います。
おかしいことはしっかり伝える。その子を思ってなら感情的になることだって、たまには仕方ないと思う。
私も2人の子どもを育て、保育の仕事もしていますが、仕事ではちゃんとできても、自分の子どもには理不尽に怒ることも。愛情もあるし、フォローもしていますが、感情的になるのはお互い様のことだと思っています」
■ マリア様じゃないんだから怒らないなんて無理無理〜
「無理無理! マリアさまじゃないんだもん。
怒りすぎるとか、怒る場面じゃないところで無駄に怒るとかでなければいいんじゃないかなと思います。
怒るというより叱るという意識に変換してみるとか。ママだって人間ですもの。人間らしい部分を見せながら、育児してもいいと思うな」
これでわかる! 「怒る」と「叱る」の違い
いろいろな意見がありますね。どのような対応をするといいのか、子どもに注意する際に気を付けるべきことやポイントについて、これまで多くの家庭の悩みを聞いてきた田宮由美さんに聞きました。
「子どもを大声で怒鳴ったり、感情的に怒ってしまうというお悩みは、いつも非常に多いです。自分では、怒らずに子育てをしたいと思っているにも関わらず、イライラし怒ってしまう、そして、そのような自分を責めてしまう……本当に悩むことだと思います。
そのような場合、どのように子どもに対応すればよいのか難しいところですが、正しい対応の仕方を知っておられる方も多いように感じています。
今回の親御さん方の声を少し拾ってみます。
>自分の中でやってほしくない優先順位の高い『自分が危ない』『人に痛いことをする』はめっちゃ怒りますが、それ以外はゆっくり言ってやめさせるようにしました。
>危険なこと、他人に迷惑をかけること(特に暴力)は怒ります。
できた時はしっかりと褒めるよう心掛けています。
>愛を持って、これからの幼稚園や学校などで、過ごしやすくするためにダメなことはダメと教えることは大事だと思います。
>怒るとは、感情的に頭ごなしに言うこと、叱るとは、何がいけなかったかを理解できるように伝えること。危険なことや人を傷つけることはしっかり叱らないといけないと思います。
>怒るというより叱るという意識に変換してみるとか。
まったく、皆さんの書かれているとおりで、『怒る』と『叱る』は違います。必要な場面では、子どもを注意すべき時もあります。その場合は怒るのではなく、叱るようにしましょう。
『怒る』と『叱る』の違いを簡単にまとめてみました。
『怒る』は
・感情的に
・自分の言いたいように
・自分のイライラを発散させるために
『叱る』は
・理性的に
・相手に伝わるように
・相手の誤った行為を注意するために
このように、怒るは自分本位なのに対し、叱るは子どものことを考えての行為になります。ですので、ぜひ怒るのではなく、叱るように心がけてください。
そして叱る時、再度確認すべきことがあります。
それは『その言動は本当に叱るべきか』ということです。
・危険を伴うことであるか
・人に迷惑をかけることであるか
以上の2つのことを目安にされるとよいでしょう」
子どもの年齢でも違う叱り方
「まだ言葉の理解が十分でないような幼児には、態度でしっかり示してください。
目を見て、厳しい口調、表情で、端的に注意すべきことのみを伝えるとよいでしょう。その場合、危険なことや迷惑をかける行為をした直後に叱ることがポイントです。
年齢が高くなってくれば、言葉で諭すような注意も可能になってきますので、なぜ叱るのか、その理由もじっくり説明するとよいでしょう。
ただ、このように正しい対応の仕方を理論では分かっていても、現実にはその通りにならず、イライラし、悩まれる親御さんが多いと思います。諭すように話していても、子どもは言うことを聞かないので、つい大声で怒鳴ってしまう。そして『あ~、また怒ってしまった』と自分を責める。
そのような時は、まず頑張っている自分に気持ちを向けましょう。
イライラするのは、親自身が子育てに一生懸命になっているからです。
『子育て、頑張っているね』と自分自身に話しかけ、自分を認めましょう。
そして、子どもの今の注意すべき行動を止めさせようとするのではなく、他のことに取り組むようにしてみてください。例えば一緒に公園に遊びに行ったり、絵本を読み聞かせたりするなど、他の行動を起こすようにしましょう。
また『○○ちゃんが、~する(やって欲しくない行為)とママ、悲しくなっちゃう』と気持ちを伝えることもよいでしょう。
子育ては、わかっていても理論通りにはいかないし、悩みや不安も多いものです。ですが、子どもが1歳ならば、ママも親になってまだ1歳です。今後、成長することを信じて、焦らずおおらかに構えられるとよいでしょう」(田宮由美さん)
親だって、毎日理想通りの対応ができるわけではないのは仕方のないこと。自分の頑張りを認めながら、親子で成長していけるといいですね。
(取材・文/橋本真理子)
※文中のコメントは「ウィメンズパーク」(2022年1月末まで)の投稿を再編集したものです。
※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。
※記事の内容は2021年12月の情報で、現在と異なる場合があります。
田宮由美さん
PROFILE)
家庭教育協会「子育ち親育ち」代表。保育士、幼稚園教諭、小学校教諭の資格を取得後、幼児教室、幼稚園、小学校で勤務。小児病棟への慰問や、子どもの悩みの相談員など、多方面から多くの親や子どもに関わる。現在は、執筆を中心に講演、個別指導等で活動。国内有数の子育てサイトをはじめ、新聞、雑誌、企業への執筆、監修記事は、多くの共感を得ている。テレビ・ラジオにも出演。著書に『比べない子育て』(一万年堂出版)などがある。