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「ないなら自分で作る!」自身の産後うつから一念発起。産後ケアホテルを“ぜいたく”ではなく利用できる場所に【体験談】

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ホテルに宿泊しながら、託児や育児相談、指導などが受けられる「産後ケアホテル」。初めての育児で産後うつを経験し、その必要性を感じて北海道に初めての産後ケアホテルを開業しようと奮闘しているママ、高橋奈美さん。全2回のインタビューの2回目。インスタグラムで産後ケアホテルを作る夢を投稿してから、実現するまでの道のりと、現在の活動について聞きました。

目指せフォロワー1000人! 夢の実現のため、コンテストにも挑戦

「Mrs.SDGs JAPAN」授賞式

――初めてインスタグラムで「札幌に産後ケアホテルを作りたい!」と投稿して、大反響。それからはどう進んでいったのですか?

高橋さん(以下敬称略) 産後ケアホテルの構想をインスタグラムで投稿して、産後のボディケアをされている整体師、保育士、いろんなスペシャリストの方から連絡があって。そのなかで、今一緒に活動している助産師の荒木からの「産後ケア施設の必要性を感じており、札幌にも産後ケアホテルのようなサービスの充実した場所があったらいいなと思っていました」というメッセージに強く共感したので、まず会ってお話させてくださいと連絡を取りました。

会った瞬間に「この人と一緒にやりたい!」と感じましたね。
荒木も、当時病院に勤めながら、産後ケアホテルができたら働きたいと思っていたようで、リサーチしていたら、ちょうど私のアカウントがヒットして。
どのくらい話が進んでいるのかを確認するためにDMをくれたということなんですけど、完全にゼロの状態で驚いたと、後になって聞きました(笑)。

――それでも、一緒にやっていこうと決意してくれたんですね。

高橋 最強のパートナーができた!と心強かったですね。とはいえ、資金があるわけでもないですし、私は普通の専業主婦。私のこと、実現したい事業のことを知ってもらい、応援してくれる人を増やすために、まずは、フォロワー1000人をめざして、インスタグラムで情報発信をスタートしました。

そうした時期に「Mrs.SDGs JAPAN」というコンテストの運営の方からお声がけいただいて。優勝を狙えれば、幅広い方たちに産後ケアホテルの必要性を訴えることができますし、私の実績としても強みになるかな、と思って挑戦。北海道グランプリ、日本準グランプリをいただけて、少しずつ注目してもらえるようになった感じです。
フォロワー数も最終的には2000人を超えて、人脈も広がっていきました。

本当にありがたいことに、応援してくださる方が増え、それから親子イベントを開催するようになり、経営、企画、産後ケアとそれぞれの分野の専門家の方たちにアドバイスをいただきながら、実績を積み上げていきました。

産後ケアホテルの試験的な宿泊プランから期間限定オープンへ

ケアホテル準備の第1歩として開いた親子イベントのママ会

――そして2023年の11月に北海道初、ホテルでの産後ケア宿泊プランの実施につながったんですね。

高橋 初めての産後ケアホテル事業では2回のプランで合わせて7組のママと赤ちゃんにご利用いただきました。
助産師が待機して、赤ちゃんを預かるための部屋も1室借り、荒木、助産師のスタッフが交代で、赤ちゃんのおふろやおむつ替え、寝かしつけ。赤ちゃんのベッドは荒木が自宅で管理して、持ち込んだりしてましたね。
エステやマッサージなども有料で提供して、利用したママからは「心に余裕ができた。また泊まりたいし、もっといろいろな人が泊まれるように応援したい」と言っていただいて…うれしかったです。

その後、2024年1月から5月まで
「センチュリーロイヤルホテル」で5カ月間の期間限定でしたが、産後ケアプランを実施しました。このホテルは5月に閉館したんですが、「札幌市民へ恩返しをしたい」というホテルの方々の想いとつながり、実現したもの。
プランはすべて埋まり、36組のご家族に利用していただきました。

――いろんな方の厚意、縁がつながって、利用したいママたちに届いていっていますね。

高橋 そうですね。でも、まだまだ課題もあります。宿泊を楽しみにしてくださる方がいる一方で、本当に疲れていて今すぐ泊まりたいけど、高くて泊まれない、という声があるのも事実。
札幌市の産後ケアの助成を受けられるように働きかけもしています。
とはいっても、時間がかかることなので、クラウドファンディングで支援協力も試み、12組のご家族に半額で宿泊していただくことができました。

ホテルの確保、利用しやすい価格、自治体との連携、助産師や保健師など専門家の確保…と課題は多いですが、クラウドファンディングを通して、応援してくださった方々から「1人じゃないよ」と言ってもらえたようで、心強かったですね。

ママだけでなく、家族みんなにとって癒やされる場所に

産後ケアホテルで、ママと赤ちゃんにおだやかな表情を提供したい

――宿泊プランでは、ママたちはどのように過ごしていたんですか?

高橋 「センチュリーロイヤルホテル」の宿泊プランでは、チェックインのあと、助産師とのカウンセリングで、育児で困っていること、滞在中どう過ごしたいかをうかがいました。「たとえば、赤ちゃんが夜起きることが多くて、なかなか眠れない」ということであれば、夜はこちらでお預かりして休んでいただく、ということができます。
カウンセリングのあとはおやつを食べながら過ごしてもらって、夕食はホテルのレストランでも、こちらで手配したお弁当でも、外食でも、思い思いに。ご夫婦で映画デートに行ってきます、という方もいらっしゃいましたね。

翌日も、有料オプションのエステやマッサージを受ける方もいましたし、あとママ同士、交流していただくお茶会を実施したので、それに参加された方も。
朝、必ず助産師との時間を作り、「ゆっくりできましたか? 寝られましたか?」とお話しするようにしました。適度な距離感で、何度か顔を合わせていると、ポロポロと不安や悩みが出てくることもあるので、育児相談の時間は大切にしましたし、今後も続けたいと思います。

――利用された方で、印象に残っている方は?

高橋 リピーターさんも多くいらっしゃるんですけど、2人目が生まれて、上のお子さんの夜泣きが始まって、ママはゆっくり睡眠がとれない、というご家族がいらっしゃったんです。
夜、赤ちゃんをお預かりしますよね。上の子はパパとママを独り占めできたからか、とても喜んだそうで、それから夜泣きをしなくなった、っておっしゃっていました。
ママだけでなく、パパと上の子もリラックスできたのかなと、とてもうれしかったエピソードです。

ママが自分で選んで利用する以外にも、パパや両親、友人からプレゼントしてもらった方や、札幌に里帰りしたけれど両親の負担になるから利用するという方もいて、さまざまです。
どんな形であっても、産後ケアホテルを“ぜいたく”ではなく利用できる場所にし、いちばんはママの心のよりどころ、そして赤ちゃんのいる家族の癒やしの場のひとつになれたらいいなと考えています。

取材・文/ムトウハルコ、たまひよONLINE編集部

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年5月の情報であり、現在と異なる場合があります。
●記事中の産後ケアホテルのサービス内容は、現在と異なる場合があります。

6月からは、いよいよ提携するホテルで、常設の産前産後ケアがスタート! 高橋さんの「ないなら作る!」が実現します。

高橋奈美さん

PROFILE

産前産後ケアホテル Cocokara代表
2021年に1人目を出産。ワンオペ育児により、産後うつを経験。その経験から産後ケアホテル立ち上げを決意し、活動を開始。副代表を務める助産師の荒木美里さんとともに、札幌市内で産後ケアホテルの常設をめざす。

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