「手足口病」が流行中、各地で警報が!「突然熱が出たと思ったら、手と足、おしりにもブツブツが・・・」子どもから親にうつることも。予防策は?【小児科医】
現在、全国的に「手足口病」が大流行しています。
突然熱が出たと思ったら、手と足にブツブツが・・・。小児科を受診したら、やっぱり手足口病と診断された、というような経験をしているケースが増えているのではないでしょうか。
連載「ママ小児科医さよこ先生の診療ノート」の7回目は、今流行している夏の感染症「手足口病」のホームケアのワンポイントや、受診のコツなどについてです。
発熱後に口や手足に、おしりにも!ブツブツができる手足口病。大人にうつることも
「手足口病」はその名のとおり、手・足・口に水疱(すいほう、ブツブツ)ができる感染症です。エンテロウイルスというウイルスが原因で、さまざまな型があるので、一生のうちに何度もかかることがあります。流行のピークは夏ですが、秋や冬にも流行することがあり、油断はできません。
どんなふうに症状が出て、進んでいくのか、そして保護者にうつることも多い手足口病について、よくある事例を想定してお伝えします。
「1歳の男の子、保育園から帰ったあとに自宅で発熱。次の日に手や足にブツブツが・・・。かかりつけ医を受診すると『手足口病』と診断されます。でも特別な薬はないし、脱水じゃないから、と様子を見るように言われて帰宅。その後熱は下がっても、ブツブツは治らないし、子どもがかきむしって、ますますボロボロになるばかり。おしりにもブツブツが出てきました。
口の中が痛いのか、何か食べさせようとしても、口も開けてくれない・・・。3日ほど、ほとんど食べることができません。
だんだん食べてくれるようになってきたかな・・・と思ったら、今度はママののどが痛くなり、手足にもブツブツが。熱はないけどだるいし、ブツブツは痛いし、でも子どもは元気になったから相手をしてやらないといけないし、もう最悪・・・」
そうなんです。子どもからもらったウイルスで、大人も手足口病を発症することがあります。子どものころの免疫が残っているか、などさまざまな要因によって、大人がどれくらい症状が出るかはケースバイケースです。子どもよりも高い熱が出たり、手足のブツブツが痛くて家事もままならなかったり、などの症状が出ることもあります。
手足口病にかかっても、ほとんどの子どもは数日で改善します。ごくまれに髄膜炎や脳炎などの報告はありますが、過剰に心配する必要はありません。
なお、手足口病にかかって数週間たったころ、手足のつめがはがれおちることがあります。特別な治療はなく、様子を見ていればまたつめは生えてきますが、忘れたころに生じるのでビックリすることも多いようです。つめがはがれ落ちることもあるんだ、と覚えておくと、心の準備になると思います
ブツブツは、おしりにも。初期はヘルパンギーナと間違われることも
「おしりにもブツブツが出てきたんですが、これも手足口病なんですか?(1歳)」
たしかにブツブツが目立つのは、手・足・口の中です。ただしウイルスの型によって、ブツブツが出やすい場所が異なります。具体的には、ひじやひざ、おしりにもブツブツが出ることがあります。なお発熱する子どももいますが、38度以下で、あまり長引かないことが多いです。
「この間受診したときはヘルパンギーナって言われたんですけど、その後体にもブツブツが出てきて・・・、これって手足口病ですか?(3歳)」
感染して間もないときは、口の中だけしかブツブツが見られず「ヘルパンギーナ」と診断されることもあります(ヘルパンギーナもウイルスの感染症ですが、手や足にはブツブツが出ません)。最初はヘルパンギーナと言われたけど、後から手足にブツブツが出てきた・・・、というのは、実は最初から手足口病だった可能性が高いです。
食事は「やわらかい」「冷たい」「のどごしがよいもの」で
インフルエンザなどと違って、手足口病を診断するための迅速検査キットはありません。手・足・口のブツブツや、まわりで流行しているかなどの情報を参考に診断します。
またウイルスの感染症であり、特別な薬もありません。熱が出ていれば解熱剤を飲む、といった対症療法になります。
「肌のブツブツをかきむしって、ボロボロ。何か薬はないんですか?(1歳)」
手足口病のブツブツを治す、塗り薬はありません。ブツブツをかきむしって肌がボロボロになってしまうこともあるので、(明確な医学的根拠はありませんが)肌を保護する目的で、ワセリンやプロペトを塗ることもあります。なお、かきむしることで、とびひ(伝染性膿痂疹/でんせんせいのうかしん)になってしまった場合は、別の塗り薬(抗菌薬)が必要になることがあります。
手足口病で苦労するのは、食事。
「口の中が痛く痛くて、全然食事を食べてくれなくなりました・・・どうしたらいいんでしょうか?(2歳)」
こんな相談もよく受けます。のどの奥や、ほっぺたの内側にブツブツができるので、痛がって子どもがまったく食べない、飲まないといった悩みは本当に多いです。
これも医学的に絶対これ、という根拠はありませんが、麺類やアイス、プリン、ゼリーなどは食べられるという子も多いです。やわらかくて、冷たくて、のどごしがいいものですね。
どうしても食べられない場合は、もともと大きな病気が指摘されていない子どもで、数日間であれば、ほぼ飲み物だけでも、なんとかしのげることも多いです。お茶やお水だけだと血糖値がどんどん下がってグッタリしてしまいますし、電解質が失われていきます。ジュースやおみそ汁、スープなど、糖分や塩分を含む水分を意識してとりましょう。まだ母乳やミルクしか飲んだことのない赤ちゃんであれば、母乳やミルクで十分です。
「おしっこが数時間に1回も出ない」は受診のサイン。登園・登校許可書も忘れずに。
口の中が痛むので、食事がとれなくなる子も少なくありません。ただし水分がとれていれば、重症な脱水になることはほとんどありません。
脱水の目安は「おしっこ」で判断します。水分がとれなかったり、汗で水分を失ったりすると、水分を外に出さないように、体内のホルモンが働きます。その結果、脱水になると尿の回数や量が減ります。寝ている間に尿が出ないことは、健康な子でもよくみられますが、起きているのに「おしっこが数時間に1回も出ない」のは、脱水を疑うサインです。点滴の治療が必要ないかなど、判断するために受診を考えてください。
また治ったあと、幼稚園や保育園、小学校などの登園・登校を再開したい場合は、登園・登校許可書が必要なケースが多いです。登園・登校できる目安は「熱がなく、普段どおりの食事がとれること」です。肌のブツブツが残っていても登園・登校はできますが、口の中のブツブツのせいで飲めない・食べられないという症状が無いかよく確認してから、登園・登校しましょう。
感染対策は、できる範囲で。うんちからは数週間、ウイルスが排出されることも。
「きょうだいや、親にもうつるんでしょうか・・・?(2歳)」
手足口病は感染力が高く、園や学校などの集団生活だけではなく、きょうだい間で感染することも多いです。もちろん手洗い、うがい、また食器やタオルを共用しないなどの対策が取れればいいですが、小さな子ども同士では、接触を避けるのが難しいことも。それぞれのライフスタイルに合わせて、無理のない範囲で取り組めるといいでしょう。
ウイルスの排出期間が長いのも、特徴です。せきや鼻水からは1〜2週間ですが、便からは数週間にわたってウイルスが排出され続けることも。おむつ替えやトイレのお世話をしたあとは、いつもより入念に手洗いを心がけましょう。
文・監修/白井沙良子先生 構成/たまひよONLINE編集部
手足口病とともに、溶連菌感染症、咽頭結膜熱(プール熱)も流行しています。いずれも夏にはやることが多い感染症です。溶連菌感染症は、溶連菌という細菌が、咽頭結膜熱はアデノウイルスが原因になります。いずれも日ごろからの手洗い・うがいが基本的な予防策です。今一度見直して、徹底しましょう。
【参考文献】
参考文献
・国立感染症研究所、手足口病とは
・長野県佐久医師会、教えて!ドクター、夏かぜ症候群(手足口病、ヘルパンギーナ)
・日本小児科学会、学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説