「夏は寝苦しくて、体調が悪くなりがち……」そんな人におすすめ!快適な睡眠を手に入れる方法を専門医が解説
「夏は寝苦しくて、睡眠不足になりがち……」そんなお悩みはありませんか?
睡眠の質が低下すると、心身にさまざまな不調が起きやすくなります。夏になって睡眠不足を感じているなら、早めに対策をとりましょう。
今回は、夏に睡眠の質が低下しやすい理由や快適な睡眠を手に入れる方法を、日本睡眠学会専門医が解説します。
夏に睡眠の質が低下する理由
夏に睡眠の質が低下するのは、暑さや冷房によって、体温調節がうまくいかなくなるためです。
気温が高く寝苦しい
夏は、熱や湿気がこもって室温が高くなりがちです。高すぎる気温や湿度は体内の熱の発散を妨げるので、寝苦しさを感じやすくします。
また、人間は、からだの内側の体温である「深部体温」が下がるときに、深い眠りに入ります。気温が高いと深部体温が下がりにくく、寝つきが悪くなったり中途覚醒が多くなったりなど、睡眠の質が低下するのです。
さらに、高い湿度はダニやカビの増殖を促すことも。ダニやカビが原因の鼻水やくしゃみ、せき、かゆみなどのアレルギー症状は、睡眠を妨げる要因になります。(※1)
冷房による冷やしすぎ
実は、暑さだけでなく、冷房による冷やしすぎも睡眠の質に影響します。
からだを冷やしすぎると、体温が低下して血行が悪くなり、自律神経が乱れる原因に。自律神経は、心身を活発にする交感神経とリラックスさせる副交感神経がバランスをとって、健康を維持しています。
通常、就寝時は副交感神経が優位になります。しかし、冷房でからだを冷やしすぎると、低下した体温を上げるために交感神経が優位になるため、寝つきの悪さや睡眠リズムの乱れを引き起こすのです。
また、人間のからだは、朝に体温が上昇することで活動モードのスイッチが入ります。冷房でからだが冷えていると、体温の上昇がスムーズにいかず、活動モードのスイッチが入りにくくなります。「冷房をつけて寝ると、朝起きたときにだるさを感じる」という人は、冷房によってからだが冷えすぎていることが原因かもしれません。
睡眠の質の低下により考えられる影響
睡眠の質が低下すると、心身にさまざまな不調が起きやすくなります。
たとえば、寝苦しさで睡眠不足になると、からだや脳の疲労を十分に回復できず、疲れやストレスがたまったり集中力が低下したりしやすくなります。
また、熱や湿気がこもった寝室は高温多湿な環境です。その環境で寝ると、長時間水分を摂らない状態が続くため、睡眠中に熱中症になる危険性も高くなります。
ほかにも、冷房によるからだの冷えが自律神経を乱し、だるさや食欲の低下などを起こす夏バテにつながります。寝冷えによって、下痢や腹痛などの症状が出ることもあるでしょう。
夏の睡眠の質を高める方法
夏の睡眠の質を高めるには、体温の調節をしやすい環境を整えることが重要です。
以下に、夏の睡眠を快適にする方法を3つご紹介します。
室温や湿度を調整する
夏の睡眠を快適にするには、冷房を適度に使用して室温や湿度を調整しましょう。
からだの負担が少なく快適と感じられる理想の環境は、室温が28℃、湿度は40〜60%ほどといわれています。昼は寝室の窓や扉を開けて湿気を逃がしておき、夜は冷房で室温や湿度を快適な状態にキープしましょう。
また、室温や湿度の調整は、冷房だけに頼るのではなく、扇風機やサーキュレーター、除湿器などを併用すると、より快適な環境をつくりやすくなります。(※2)
冷感グッズを使用する
気温や湿度の高さで寝苦しさを感じるなら、冷感グッズを使用しましょう。
首や足首などの太い血管が通っている部分を保冷剤や冷却まくらで冷やしたり、接触冷感素材の寝具を使用したりすると、じめっとした暑さが軽減されます。天然素材では、通気性がよく肌あたりもさわやかなリネンがおすすめです。
ただし、人間は手足から熱を放出して体温調節をするため、手や足裏、つま先などは冷やしすぎないように気をつけましょう。(※3)
夏でも湯船に浸かってからだを温める
睡眠の質を高めるには、シャワーのみで済ませるのではなく、夏でも湯船に浸かってからだを温めましょう。
前述のとおり、人間は深部体温が下がり始めるときに眠気が訪れます。就寝の約2時間前に湯船に浸かると、徐々に深部体温が下がっていき、ちょうど布団に入るときに眠気が訪れる効果が期待できます。
お風呂の温度はぬるめの37〜39℃、湯船に浸かる時間は10〜20分ほどがおすすめです。(※4)
快適な睡眠で夏も健康に
睡眠の質が低下すると、心身にさまざまな不調が起きやすくなります。夏になって睡眠不足を感じている人は、今回ご紹介した方法を参考に、室温や寝具、生活習慣などを見直してみてくださいね。
快適な睡眠を手に入れて、暑い夏も健康に過ごしましょう!
<参考文献>
※1 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
※2 国立精神・神経医療研究センター「温度、湿度と睡眠」
※3 環境省 デコ活「睡眠のプロに学ぶ!暑い夏の夜を乗り切る快適な睡眠術」
※4 愛媛産業保健総合支援センター「質のよい睡眠で猛暑の夏を乗りきりましょう」
PROFILE
医師
木村 眞樹子(きむらまきこ)
都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科に在勤。総合内科専門医・循環器内科専門医・日本睡眠学会専門医。産業医として企業の健康経営にも携わる。
自身の妊娠・出産、産業医の経験を経て、予防医学・未病の重要さと東洋医学に着目し、臨床の場でも西洋薬のメリットを生かしながら漢方の処方を行う。
症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でもサポートを行う。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=211332f2tmhy00010086