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お産を終えた退院後、産院から「話があるのでご夫婦で来てください」の電話。告げられたわが子の病名…[フェニルケトン尿症体験談]

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治療用ミルクと息子たち

「フェニルケトン尿症(略称PKU)」という病気を知っていますか? 生まれつきフェニルアラニンというアミノ酸の代謝がうまくいかず体内に蓄積され、それによってさまざまな症状が現れる病気です。約8万人の出生に対し1人の割合で発見される指定難病で、お産入院中に、すべての赤ちゃんの足の裏から血液を採取し、検査して調べています。

4才の長男と3才の二男2人がこのフェニルケトン尿症と診断され、親の会で広報活動もしている村山ひとみさん。フェニルケトン尿症のこと、育児のことについて2回にわたり紹介します。

前編では、長男が診断されたときの気持ちや家族の様子、長男の成長と育児、第2子を迎えるまでを聞きました。

※フェニルケトン尿症…食品のタンパク質に含まれるフェニルアラニンというアミノ酸の代謝がうまく働かず、体内に蓄積されることで精神発達の障害や髪の毛、皮膚の色が薄くなるなどの症状を引き起こす先天性の病気。国の指定難病に定められている。
参考:難病情報センターホームページ「フェニルケトン尿症」

病気のことを知ろうと調べれば調べるほど、落ち込んで…

長男の妊娠前に、初期流産を経験していたひとみさん。妊婦健診を重ね、元気に成長していく様子にいつしか不安が消え、順調な妊娠生活を過ごしていたそう。

「妊娠中も保育士として働いていて、クラスの子どもたちもおなかによく話しかけてくれて。保護者の方たちからもお産のアドバイスをもらったり。トラブルもなく、本当に幸せな妊娠生活でした」(ひとみさん)

出産も無事に終え、赤ちゃんとの生活がスタート。

「かわいいな、うれしいなと思うのと同時に、私が寝ているときに何かあったらどうしようと眠れなかったり、母乳をうまくあげることができなくて悩んだり…。入院中は助産師さんに『やっていける自信がない』と泣きついたこともありましたね」(ひとみさん)

初めての育児に戸惑っていた新米ママのひとみさん。さらに思いもよらなかった、わが子の病気に直面します。

「生後5日目くらいに、新生児マススクリーニング検査といって、先天性代謝異常を調べる検査を受けることになっていました。みんながする検査なんだ、程度で、なにも知らなかった。退院して2日後くらいに、産院から連絡があったんですね。『検査の結果について話したいことがあるから、ご夫婦で産院に来てください』と。これはいい話ではなさそうだなと感じて、夫とふたりですぐに向かいました」(ひとみさん)

産院では長男が「フェニルケトン尿症」であること、大学病院に1カ月入院が必要で、特殊なミルクを飲んで治療すること、そして母乳はあげられない※と告げられました。
(※編集部注:フェニルケトン尿症では治療用ミルクと、母乳または普通ミルクを混合で与えることになります)

「週末を挟んで、月曜日に大学病院で精密検査を受けて入院することになっていたのですが、泣きながらずっとネットで『フェニルケトン尿症』と検索して、夫婦で出てくるページをかたっぱしから読みました。少しでも病気のことをわかろうと思って調べて、調べた結果さらに落ち込んで…。早く月曜日になってほしいという気持ちでしたね」(ひとみさん)

そして、大学病院であらためて病気の診断。

「小児科の先生からは、ネットで検索すると怖い症状がいろいろ出てくるけれど、食事制限と治療用ミルクの食事療法をすれば、元気に育つからと説明を受けて、少しほっとしたところも。でも、検査結果の数値が高く、病気としては軽症ではなかったんです。“間違いないんだ”とわかったらやはりショックで…。診察室で夫と一緒に大泣きしました」(ひとみさん)

泣きはらしていたつき添い入院。大部屋で前向きな気持ちに

大学病院入院中の沐浴風景

1カ月の入院生活では、検査をしながら、治療用ミルクを飲ませる、飲む練習が始まりました。

「通常のミルクや母乳ではなく、フェニルアラニンを含まない治療用ミルクをメインに飲ませるんです。でも、フェニルアラニンをまったくとらないのもだめで、体に必要で、かつ症状が出ないレベルの量を、採血結果を見ながら先生が決めて、必要分の普通のミルクもしくは母乳を少し混ぜて飲ませるんですよね。

初めて治療用ミルクを飲ませるときは、緊張しました。作ったときに、普通のミルクと違って粉が残っているように見えて。そういうものなのか、作り方を間違えたのかわからなくて、作り直しました。

そのとき、捨てるなら飲んでみようと、試してみたら、生のじゃがいもをすりおろしたような感じなんですよ。これ、子どもが飲むかしら…とすごく心配になって。
でも、飲ませてみたら普通のミルクよりもゴクゴク飲んで。本当にほっとしたのを覚えています」(ひとみさん)

ひとつひとつ、病気や治療の不安を取り除いていったひとみさん。同時期に入院していた子どもたちの姿や先輩ママの励ましにも支えられたといいます。

「初めは個室で、子どもと2人きりがつらくって…。お願いして大部屋に移ったんです。そこで出会った先輩ママたちにとても助けられました。子どもの病気も年齢もさまざまで、1年以上、入院しているお子さんもいて。

私自身、健康だったので、子どもが病気とわかり、すごくショックだったし、いろいろ不安だったんです。でも、大部屋のみなさん、前向きで頑張っていて…。そんな姿を見ていたら、悲観する必要はないんだな、人それぞれだなって思えるようになりました」(ひとみさん)

泣いてばかりではいけないと前を向き始めた入院生活を終え、いよいよ自宅での育児が始まりました。

「本当にごはんを食べるようになるの?」生涯必要な食事療法。離乳食の進みにあせりも

離乳食の記録ノート

フェニルケトン尿症は、生涯にわたり治療用ミルクの摂取とタンパク質の制限が必要です。肉、魚、卵、普通のお米やパンを気兼ねなく食べることはできず、病気の人向けの「低たんぱく食品」に頼ることになります。
ひとみさんは、退院後も月1回のペースで検査と栄養指導を受け、成長具合に応じた治療用ミルク、タンパク質の量や離乳食の進み方を確認しなければなりませんでした。

「離乳食が始まるまでは、治療用ミルクと普通のミルクの配合量を間違えていないか、毎回そわそわしていました。夜中の調乳も眠くて、量がわからなくなってしまい作り直したこともあります。

そして、治療用ミルクは一生飲む必要がある。なので、飲む習慣をしっかりつけないとなりません。離乳食を始めるにしても、まず先にミルクを飲んでから。そのあとにタンパク質の少ない野菜を使ったスープを1さじ、2さじ。ミルクで満足して、離乳食をまったく食べてくれないこともありましたね」(ひとみさん)

1歳くらいまでは治療用ミルク+野菜スープ。これからごはんが食べられるようになるのかあせりもあり、不安だったそう。

「病気のない子と比べてもしかたないんですけど、ときどき、同じくらいの子がいろいろ食べている様子を見て、落ち込んだことも…。
栄養士さんや同じ病気の子どものいる先輩ママさんたちからは『そういうものだよ』『成長のために必要な栄養はミルクに入っているから、ミルクをよく飲んでいるなら、離乳食は気長にやっていこう』と励ましてもらって。実際、長男は治療用ミルクをたっぷり飲む子だったので、問題なく成長しました」(ひとみさん)

元気に成長する姿に、病気が判明した当初の不安は薄らいでいき、長男が1歳を過ぎたころ、妊娠が判明。

「1/4の確率できょうだいもフェニルケトン尿症を発症すると説明を受けていたんです。でも、もし同じ病気であっても、ちゃんと育てられる自信もついていたし、決意みたいなものもあっての妊娠でした」(ひとみさん)

長男の主治医がいる大学病院と連携をとりながら、自宅近くの産婦人科で出産。リスクが高いということで、新生児マススクリーニングの検査も早めに行いました。
そして、産婦人科を退院したその日、ひとみさんの電話に大学病院からの着信があったのです。

「検査の数値が高かったので、入院して検査する必要があると言われ、それですべてを察しました」(ひとみさん)

二男も同じフェニルケトン尿症とわかり、ここからフェニルケトン尿症を持つ2人の子どもの育児が始まりました。

お話・写真提供/村山ひとみさん 取材・文/ムトウハルコ、たまひよONLINE編集部

▼続きの記事を読む<後編>

最初は戸惑いながらも、治療用ミルクを中心とした食生活の育児をする自信を少しずつつけていったひとみさん。
後編では、その後のきょうだい育児と子どもたちの食事管理について、PKU親の会の活動やフェニルケトン尿症について知ってほしいことについてお届けします。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

村山ひとみさん

PROFILE

指定難病フェニルケトン尿症を持つ4才と3才の2人の男の子のママ。PKU親の会の運営スタッフとして、インスタグラムでの情報発信や料理教室などを行っている。Xでもあんころとして日々の育児や食事について情報発信中。

ひとみさんのX

PKU親の会ホームページ

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年8月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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