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長男に続き、二男も同じ難病に。一生続く治療と食事制限。でも、かわいそうではなく、頑張っている子どもたちを応援してほしい[フェニルケトン尿症体験談]

更新

三人でおやつ食べてるところ

生まれつきフェニルアラニンというアミノ酸の代謝がうまくいかず体内に蓄積され、それによってさまざまな症状が現れる病気「フェニルケトン尿症」。国の指定難病に定められていて、約8万人の出生に対し1人の割合で発見されるとてもまれな病気です。

2人のお子さんがフェニルケトン尿症と診断され、親の会で広報活動もしている村山ひとみさんの育児の様子を2回に渡って紹介するインタビューの後編。
きょうだいの育児や成長した長男の食事管理、幼稚園生活、PKU親の会の活動やフェニルケトン尿症について知ってほしいことを聞きました。

※フェニルケトン尿症…食品のタンパク質に含まれるフェニルアラニンというアミノ酸の代謝がうまく働かず、体内に蓄積されることで精神発達の障害や髪の毛、皮膚の色が薄くなるなどの症状を引き起こす先天性の病気。国の指定難病に定められている。
参考:難病情報センターホームページ「フェニルケトン尿症」

▼関連記事<前編を読む>

大学病院を受診したときの「出産おめでとう」がうれしかった

入院中の二男

2人目を出産し、新生児マススクリーニングの結果、二男も上の子と同じ病気とわかったひとみさん。幸せに育ててみせるという決意あっての妊娠、出産でしたが、検査結果にはショックもあったそう。

「いざ、2人目も…といわれると、やはりモヤモヤ悩んだりして…。でも、検査のために入院したときの主治医の先生の第一声が『出産おめでとう!』だったんですよ。それがすごくうれしくて。そうだよな、おめでとうでいいんだ、と思ったら、あらためて覚悟が決まりました」(ひとみさん)

入院することも前提に、ひとみさんの夫は3カ月の育休をとって準備。すでに生活上の注意点は心得ていることから、長男のときと比べ入院期間も短くすみ、家族4人の生活が始まりました。

「上の子と比べて、治療用ミルクの飲み具合はいまいちで。食の好みにも個性があるのを感じました。下の子は今、食べるのが大好き。上の子よりも食の興味が強いので、タンパク質の味をおぼえさせないようにするのが大変ですね。

それでも、きょうだい同じように治療用ミルク、タンパク質制限の食事を考えることができるのは、よかったのかもしれません。タンパク質の少ないおかしをお互いにつまみ食いし合っている姿は、本当にかわいいです」(ひとみさん)

SNSや親の会で情報収集や交流。自分もわが子や同じ病気の親子の役に立ちたい

県内のPKU家族で集まったとき

治療用ミルクを飲むこととタンパク質の制限は生涯を通して変わらないことですが、子どもの成長に合わせて、食事の総エネルギーに対して、治療用ミルクの量やタンパク質量を調整していかなければなりません。

「幼児期になると、エネルギーがたりているかが重要になってくるんです。長男はよく動くタイプで、栄養士さんからいっぱい食べたほうがいいよと言われました。フェニルケトン尿症の場合、主食の米やパンの代わりになる、低たんぱく米や低たんぱくパンという特殊な食品があります。低たんぱく米はエネルギーがしっかりあるので、たくさん食べるようにいわれています」(ひとみさん)

子どものできることが増え、興味関心も広がれば、食の幅も広がります。ひとみさんは使う野菜や調味料までタンパク質量をグラム単位で計算。毎日ノートに書き記しています。

「上の子はいも類のから揚げやオクラのおひたしが好きですね。栄養計算は大変ですけど、いろいろ工夫した料理ができるようになりました。もともとキャラ弁を作るのが好きで、子どもの病気がわかったときは、食べさせるのは無理なんだと思っていました。でも工夫すればできそうだとわかって、試行錯誤しながら記念日には作るようになりました」(ひとみさん)

食事の工夫や、食べることのできる市販品などの情報は同じ病気の子どもがいるママのインスタグラム投稿や親の会で得ることが多かったのだとか。

「病気そのものの情報は主治医の先生から、生活上の工夫や知恵はママさんたちの投稿から。普段食べているものを見ることができるのは、励みになりましたね。上の子が退院してすぐに親の会に入会して、そこでも知り合いが増えて。
そして運営スタッフの方からも声をかけてもらって、私もスタッフとして加わることにしたんです。先輩ママさんたちからいろいろ教えてもらって、励ましてもらって、本当に助けられた。世の中のPKUの人のために力になりたい、つないでいきたい。なにより、わが子のためにできることがあるなら全部やりたい。運営スタッフに参加しようと決めた理由です」(ひとみさん)

食事制限があってもかわいそうではない。頑張っている子どもたちを応援してほしい

家族でお花見をしてるところ

ひとみさんの長男は現在、幼稚園に通い、給食からタンパク質の多い肉、魚類などの食材を抜いて、みんなと一緒に食べているそう。

「市に、受け入れが可能な園を問い合わせました。幸い自宅からいちばん近い園で受け入れてもらえて。始めはお弁当の予定でしたが、みんなと同じほうがうれしいだろうと給食で対応してもらえることになりました。たとえば主菜がハンバーグだったら、うちの子の給食には出ません。あなたはPKUだから、お肉やお魚は出ないから、みんなと給食の中身が少し違うよ、ということは事前に伝えました。それでも、子どもは給食をとても喜んでいます。

よく、お肉やお魚が食べられないと、かわいそうっていわれることがあるんですね。確かに、制限があって生活上多少の不便はあっても、決して不幸ではないんです。『かわいそう』ではなくて、毎日ミルク飲んで、タンパク質制限頑張っているねという目で応援してもらえるとうれしいです」(ひとみさん)

国や医療従事者にも届いてほしい声、願いがあるとひとみさん。

「治療用ミルクは医薬品として保険で補助されるんですが、低たんぱく米などの食品は、補助の対象にはなりません。低たんぱく米は魚沼産コシヒカリの3倍くらいの価格で、高価です。また最近は地震や豪雨による災害も多く、治療用ミルクや低たんぱく米はどこでも手に入るものではないので、わが家も非常用にストックしています。治療のため、生きるために必要な食品への補助へも目を向けてもらえるようになったらと常に思っています。

そして、医療従事者の方々も正しい知識、しかもアップデートされた知識を持ってほしい。私は、最初に長男の病気を知らされたとき、産婦人科の先生から母乳を飲ませることはできないといわれたんです。のちに母乳を飲ませても問題ないと知って、当時母乳を与えるのが怖くなり飲ませなかったことを後悔しました。普通の人は医師の言葉を信じますし、それによって気持ちや考えも変わる。ひと言がとても重いことを知ってほしいです」(ひとみさん)

お話・写真提供/村山ひとみさん 取材・文/ムトウハルコ、たまひよONLINE編集部

いつか、PKUの子どもたちと低たんぱくそうめんを使った流しそうめんや野菜だけのバーベキューをやってみたい、と話すひとみさん。そこには子どもたちが楽しめることを実現したいという、シンプルな親の姿がありました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

村山ひとみさん

PROFILE

指定難病フェニルケトン尿症を持つ4才と3才の2人の男の子のママ。PKU親の会の運営スタッフとして、インスタグラムでの情報発信や料理教室などを行っている。Xでもあんころとして日々の育児や食事について情報発信中。

ひとみさんのX

PKU親の会ホームページ

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年8月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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