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だんだん言葉を失っていった2歳の娘…原因がわからず悩んだ日々と、わが子が「折れ線型の自閉症」と診断されるまで【体験談】

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あられちゃんと愛理さん

長崎県在住の平山愛理さんは、娘の愛鈴(あられ)ちゃん(4歳)、息子の新心(あらし)くん(2歳)、パパの4人家族です。長女の愛鈴ちゃんは1歳半ごろまで「ママ」「抱っこ」など20個ほどの単語を発していましたが、その後、徐々に言葉を失っていく折れ線型の自閉症スペクトラム障害と診断されました。

現在はYouTubeチャンネルを通じた発信をはじめ、オンラインサロンや座談会の開催など自閉症のお子さんを育てる家族が悩みや情報を共有できる場づくりに取り組んでいる平山さん。愛鈴ちゃんの妊娠・出産から、これまでの育児生活を振り返ってもらいました。全2回のインタビューの1回目です。

重いつわり、妊娠高血圧症候群...ひと筋縄ではいかなかった妊娠期

生まれた直後の愛鈴ちゃん
生まれた直後の愛鈴ちゃん

平山さんが愛鈴ちゃんを妊娠したのは2019年のこと。待望の妊娠に喜びもつかの間、妊娠初期から重いつわりに悩まされたそうです。

「妊娠中はつわりがとてもつらくて、立っていられない日々が続きました。食事もなかなかとれなくて、ほぼ寝たきりの生活。安定期に入ってからは妊娠高血圧症候群になり、妊娠37週に入って正産期になると最高血圧が170mmHgを超えて即入院、そのまま出産という流れでした。初めての出産だったので、その当時は『こんなものなのかな』と思っていましたが、2人目のときはそこまでつわりが重くなかったので、今思うとあのときはたいへんだったなと思います。

出産自体はスムーズで、生まれたあとにまだ実感が湧かずぼーっとしていた私の隣で、立ち会った夫が号泣していたのを覚えています。出産直後は体がくたくたで余韻に浸る暇はありませんでしたが、愛鈴の顔を見て少しずつ実感が湧いてきて、これから3人の生活が始まることをうれしく思いました。

赤ちゃんのころの愛鈴は夜泣きをほとんどせず、日中もとてもよく寝ていました。まだ生後2〜3カ月なのに寝るときに自分で目にふとんをかけたがったりして。自閉症の子どもの特性でもあるのですが、音や光に対する感覚が過敏で、暗いところでしか寝られなかったんでしょうね。とにかくおとなしくて育てやすい赤ちゃんという印象でした」(平山さん)

小児てんかんの発作をきっかけに、違和感を感じ始めた生後半年ごろ

生後まもない愛鈴ちゃん
生後まもないころ、自宅での写真

それから、大きなトラブルもなくすくすくと成長していった愛鈴ちゃん。ところが生後半年がたったころ、離乳食をいっさい食べてくれず、最初の壁に直面することになります。

「離乳食を食べる月齢になったものの、何を食べさせても毎回口から吐き出して、食べてくれない日々が続きました。栄養不足になるのが心配で1歳くらいまではミルクも併用していましたが、あるとき、私の父が買ってきた市販の離乳食をあげたところ、すんなりと食べてくれてびっくり。それからは市販のものしか受け付けず、手づくりの離乳食はいっさい食べませんでした。これも今思うと、味覚過敏で食感が残っているものが苦手だったのかなと思います。

あと、当時のことで鮮明に覚えているのが、生後半年ごろにてんかんの発作が出ていきなり意識を失い、救急車で病院に運ばれたときのことです。検査をした結果、小児てんかんと診断されました。初めてのことに動揺してネットでたくさん調べていたところ、てんかんとセットで“発達障害”というキーワードがよく出てくることに気づきました。

愛鈴が元気になってからもしばらく、“発達障害”という言葉が頭の片隅に残っていました。地域の子育て支援センターなど知らない人が大勢いる場所に行くと泣き出したり、みんなで一緒に食事をするとき『いただきます』の場面で毎回パニックになったり。そんなときに、ふと頭によぎるんです。

でもネットで調べたらよく出てくるような発達障害の症状は、当てはまるものもあればそうでないものもあったりして。当時は『もしかして、障害があるのかな?』と思っては『いや違うかも』と、考えが行ったり来たりする毎日でした」(平山さん)

「診断されるまでが苦しかった」3歳手前で自閉症と判明、すべてが腑(ふ)に落ちた

1歳半ごろの愛鈴ちゃん
1歳半ごろの愛鈴ちゃん

「1歳半ごろになっても、相変わらず『そうかも』『違うかも』を繰り返す毎日でした。愛鈴は名前を呼ばれたら『はい!』と返事できたし、積み木も指さしもできたので、はたから見ると問題なく成長しているように見えていたと思います。でも、それでもまわりの子より単語が少ないなとか、ちょっとおくれている感じは見受けられて。『もうちょっと言葉が出てもいいのにな』と思っていたんです。

違和感が大きくなってきたのは、1歳半健診が終わったころから。そのあたりからしだいに言葉を発しなくなっていき、2歳になるころにはまったく喋(しゃべ)らなくなりました。遊んでいるときも無言で、笑顔も少なくなっていって。人見知りもどんどん強くなっているように感じました。

当時の私は2人目を妊娠中で、最初は赤ちゃん返りかと思っていたのですが、そのうち『ママ』さえも言えなくなって。病院で血液検査をはじめ身体のあらゆる検査をひと通り行いましたが、身体はどこも悪くなくて、2歳10カ月で折れ線型の自閉症スペクトラム障害と診断されました。

もともと、生後半年ごろに乳児てんかんと診断されてから、お医者さんには『それまで上れていた階段を急に上れなくなったりしたら教えてください』と言われていたんです。それまでの経緯を話すと、言葉を発しなくなることも成長の後退の一つと言われました」(平山さん)

愛鈴ちゃんが診断された折れ線型の自閉症は、生後に発現していた言語や指さしなどの行動が徐々に消失し、その後の発達がおくれる傾向にあると言われています。事例が少ないこともあり、診断された当初は情報がなかなか得られなかったと平山さんはいいます。

「今はネットでも折れ線型の自閉症に関する情報が増えてきていますが、当時は調べたくても情報がほとんど得られず不安でした。でも、もっと重い身体の病気じゃないかとも疑っていたので、自閉症という診断が出て正直すっきりした気持ちもあったんです。生死に関わる病気じゃなくてよかったという安堵(あんど)感と、これまで理由がわからなかったできごとの原因がわかってモヤモヤが晴れた、という気持ちです。

それまで、街中で大泣きしたりパニックになったりする愛鈴の姿は、周囲から『わがまま』『しつけができていない』と思われることもあったと思います。そういったまなざしを向けられるたびつらくて、私自身も娘に対して戸惑い、どう接していいかわからないときもたくさんありました。

赤ちゃんのころは育てやすいと思っていたけれど、成長するにつれていつしか育てにくさやむずかしさを感じるようになって、でもその理由がわからないということが何より苦しかった。だから、診断名がついて何だかホッとしたんです。これで娘のことをちゃんと理解して正しく向き合っていける、って」(平山さん)

偏見を持っていたのは自分かもしれない。人前で堂々と表現する娘の姿にハッとした

料理をする愛鈴ちゃんの写真
自宅で料理をする様子(左)料理のしかたを覚える愛鈴ちゃん(右)

現在は4歳になった愛鈴ちゃん。日中は保育園に通い、おうちでは料理レシピや包丁の使い方を覚えてカレーやホットケーキなども1人でつくれるのだそう。そんな愛鈴ちゃんの成長を見守り続けてきた平山さんに、これまでの育児生活を振り返って、印象的だったエピソードを聞きました。

「これまでの日々を振り返って、とても印象に残っていることが二つあります。一つは、愛鈴がまだ自閉症と診断される前のことです。その日、私は車で近所のスーパーに行こうとして、大泣きして嫌がる愛鈴をチャイルドシートに無理やり乗せたんですね。車中でもずっと泣いていたんですが『こうするしかない』って自分に言い聞かせて。

そして到着して車から降ろした瞬間、車が走っている道路に愛鈴が飛び出していったんです。私はあせってとめるんですが、とめようとすればするほどパニックになって、今度は車をとめていた近くの海に飛び込もうとしたり…。初めてそのような自傷行為を目の当たりにして、どうすればいいかわからず ぼうぜんとしました。

診断されたあとに自閉症のことや症状別の対策方法を勉強して、そのときの私の対応が間違いだったことを知りました。慣れない場所への移動がパニックを引き起こしやすいこと、またパニック状態のときは無理やり制止してはいけないこと。私にとっては今思い返してもつらい思い出ですが、同時に学びにもなったできごとでもありました」(平山さん)

保育園での愛鈴ちゃん

保育園で食事をする愛鈴ちゃん

「二つ目は、今年あったうれしかったできごとです。愛鈴は年少さんから保育園に通っていて、今年のはじめに初めてのお誕生会があったんです。その月に誕生日を迎える子どもはみんなの前に出て、『何歳になりましたか?』とか『好きな食べ物はなんですか?』とインタビューされるんですね。

それを聞いて、どうしたらいいかと先生に相談したところ、先生は『大丈夫だと思います』とひと言。愛鈴は自分が言葉を話せないことを理解しているので、できずに泣くかもしれないと私は思っていたんです。でも本番の日、『何歳になりましたか?』という質問に指で『4』と見せて示したり、『好きな動物はなんですか?』という質問には口パクで『キ・リ・ン』と答えたり。ステージの上でとても堂々としていました。先生が代わりに『キリンと答えてくれました』と言うと、周囲のお友だちも『私もキリン好きだよー!』と返してくれたり。そんな姿にハッとさせられました。

できないことが恥ずかしくて、泣いてしまうんじゃないか。そう心配していたのは私だけで、本人は自分にできることを一生懸命やっていて、恥ずかしいとも思っていない。思い込みから制限をかけていたのは私だったかもしれないと考えさせられました。そして、ほかの子と同じように挑戦させてくれた保育園の先生や、愛鈴を理解してくれるお友だちには本当に感謝しています。愛鈴にはこれからも、できるだけふつうの生活を送りながら育っていってほしいです」(平山さん)

お話・写真提供/平山愛理さん 取材・文/仲島ちひろ、たまひよONLINE編集部

▼続きを読む<関連記事>後編

2歳になるころに一度は言葉を失った愛鈴ちゃん。最近は発語が少しずつ増え、新しい場所が苦手ながらも美容室や飛行機に挑戦したりと行動の幅も広がってきているそうです。自閉症という特性と向き合い続けた日々と周囲の支えは、平山さんの「当事者とその家族の力になりたい」という思いにつながり、YouTubeやSNSでの情報発信を始めたきっかけとなりました。

2本目のインタビューでは、愛鈴ちゃんときょうだいの関係性や、YouTubeチャンネル「あられちゃんねる」で発信し続ける理由、活動への想いについてお話を伺います。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることをめざしてさまざまな課題を取材し、発信していきます。

平山愛理さん

PROFILE
自閉症スペクトラム障害の当事者やその家族を支援するボランティア団体「みんなのわ いっぽいっぽ」を立ち上げ、長崎県佐世保市を拠点に活動中。YouTubeチャンネル「あられちゃんねる」やインスタグラムで子どもたちとの暮らしを発信している。

※「みんなのわ いっぽいっぽ」の活動にご興味のある方、またご賛同・ご協力いただける方はぜひ下記よりお問い合わせください。
【問い合わせ先】minnanowaippoippo@gmail.com

あられちゃんねる YouTube

あられちゃんねる Instagram

みんなのわ いっぽいっぽ Instagram

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年8月の情報で、現在と異なる場合があります。

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