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車でのお出かけ時は、チャイルドシートを正しく装着して子どもの命を守って!抱っこ乗車で事故にあい、腸に穴が開いた事故例も【小児救急医】

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母は赤ちゃんの椅子に彼女の赤ちゃんを入れて
●写真はイメージです
Vicheslav/gettyimages

チャイルドシートを使わず大人のシートベルトを着用していた子どもが、事故にあって亡くなってしまったり、パワーウインドウに子どもの首がはさまれて亡くなってしまうなど、子どもの車の事故が報道されています。車でのお出かけが多くなる秋の行楽シーズン。悲しい事故を防ぐために、子どもを安全に車に乗せているか再確認しましょう。小児救急・集中治療が専門の富山大学附属病院小児科 診療准教授 種市尋宙先生に話を聞きました。

祖父に抱っこされて、シートベルをしていた5歳の子が事故にあい腸に穴が

2024年8月、福岡県の国道で路線バスと衝突し、軽自動車の後部座席に座ってシートベルトをしていた7歳と5歳の姉妹が死亡する痛ましい事故が発生しました。
報道によると、2人の死因は腹部を激しく損傷したことによる出血性ショックでした。事故の衝撃でシートベルトによって腹部が強く圧迫された可能性が高いということです。

――子どものシートベルト着用による事故は、これまでも起きているのでしょうか。

種市先生(以下敬称略) このシートベルトの事故に限らず、重大な事故が発生する前には、必ず軽いけがを負う事故や、「危ない!」と思うような事故が複数起きています。そうした事故が何回も起きていて、死に至るような大きな事故につながるのです。

2人の姉妹が亡くなってしまったシートベルトによる事故も、今までいくつものヒヤリハットが日本中で起きていたのではないでしょうか。私自身が経験した1つの事故を紹介します。

5歳の男の子の事故です。母親が運転する車の助手席に、祖父が5歳の子どもを抱っこして、シートベルトを着用して座っていました。
走行中、交差点で正面衝突したのですが、事故の瞬間、シートベルトが強くしまり、5歳の子どもはシートベルトと祖父の体に強くはさまれてしまい、シートベルトが腸を圧迫して、腸に穴が開いてしまいました。子どもがエアバッグの代わりになるチャイルドバッグと言われる状態です。

救急搬送されて、緊急手術により子どもは一命をとりとめましたが、おなかには複数のチューブが通され、長い入院となりました。
ママが言うには、5歳の子は、チャイルドシートに座るのを嫌がったため、祖父が抱っこしてシートベルを装着したそうです。ママは打撲程度で、祖父はほとんど無傷でした。

この事故例は、シートベルトの不適合使用が腹部にダメージをもたらすという点で前述されている2人の姉妹が亡くなってしまったシートベルトの事故と似ています。

――やはりチャイルドシートを使用しないと危険ということでしょうか。

種市 チャイルドシートは、道路交通法では6歳未満の乳幼児に着用が義務づけられています。ただし、6歳以上になったらシートベルトでいいというわけではありません。ダメージを最小限に抑えるために、その子の体格にあったジュニアシートなどを選択することが大切です。また、シートベルトの使用は140cmではなく150㎝以上がより適切だと言われるようになってきています。いずれにしてもベルトをしめたときに、首および腹部のあたりを確認し、衝撃が加わった際に首や腹部にベルトがかかることがないようチェックしましょう。肩・胸・腰のラインでベルトが装着されていることが大切です。
JAF(一般社団法人日本自動車連盟)の発表によると、1歳未満のチャイルドシート使用率は約90%なのに対し、5歳では約55%に下がっています。

年齢層別チャイルドシート使用率(2022年と2023年の比較)

グラフは、JAFが2023年11月に発表したリリース「チャイルドシート使用状況全国調査を実施 約半数は正しく使えていない現状が明らかに」より。

――子どもの年齢が上がると、チャイルドシートの使用率が下がるのはなぜでしょうか。

種市 チャイルドシートは動きが制限されてしまうので、子どもにとっては苦痛なものです。年齢が進む中でチャイルドシートに乗せると、大泣きしたり、暴れたりする子もいるでしょう。そうするとママ・パパも「まあいいか」と思ってはずすようになってしまいます。
しかし、チャイルドシートを装着しないで車に乗せるのは、たとえるなら安全バーを装着しないでジェットコースターに乗るようなものです。大人も遊園地でそんなことはしないですし、遊園地側もさせませんよね。それと同じぐらい危険な行為だと考えてください。

2024年5月には、パワーウインドウに首がはさまり、亡くなってしまった2歳児も

2024年5月、東京で車の後部座席に乗っていた2歳の女の子が、電動で上下する窓ガラス「パワーウインドウ」に首をはさまれて亡くなってしまう事故が発生しました。報道では母親は「後方を確認せずに、パワーウインドウを閉めた」「チャイルドシートのベルトを装着していなかった」と話しているとのことです。

――この事故もチャイルドシートを正しく装着していれば防げた事故でしょうか。

種市 前述のとおり、子どもがいくら嫌がってもチャイルドシートを正しく使用することが事故を防ぐことにつながります。
またパワーウインドウに関しては、自分の車にはさみ込み防止機能があるか事前にしっかり確認しておきましょう。はさみ込み防止機能とは、ウインドウが上がるときに手などのはさみ込みを感知すると、ウインドウの上昇が停止して、自動で少し開く機能のことです。
自分の車にはさみ込み防止機能が付いているかわからないときは、パワーウインドウをONにしてまるめたタオルなどをはさんで確認するといいでしょう。
ただし、はさみ込み防止機能の有無にかかわらず、チャイルドシートの正しい装着は必須です。

子どもが嫌がらずに座るチャイルドシートの開発を

種市先生は、チャイルドシートを嫌がる子が多い背景には、子ども目線の工夫がたりないのではないか、と言います。

――子どもがチャイルドシートを嫌がらずに座ってくれるには、どうしたらいいのでしょうか。

種市 富山大学では、脳神経外科医や工学部、小児科医、看護師などでチームを作り「安全・快適なチャイルドシート」をテーマに、どのような工夫をすると、子どもがチャイルドシートに嫌がらずに座ってくれるのかを研究しています。私もメンバーの1人です。
既存のチャイルドシートでは、子ども目線での工夫がたりないので、「座ってくれない」「運転中に泣きだす」といった問題が生じているのだと思うんです。チャイルドシートを根本的に見直す時期に来ていると思います。

また子どもが嫌がったときに、ママ・パパがベルトをはずすと子どもは「泣けば、ベルトをはずしてくれる」と学習します。そのためママ・パパが根気よく、言い聞かせていくことが必要です。
チャイルドシートに座ると「大好きなDVDが見られる」「おやつが食べられる」など、子どもにとっていいことがある!ということを経験させながらでもいいので、チャイルドシートに座る習慣をつけていきましょう。

――チャイルドシートを正しく使っていれば事故は防げるのでしょうか。

種市 以前、子どもが車内でチャイルドシートに座ってよく寝ているので、少し車から離れてサービスエリアで休憩を取っていたママ・パパがいました。
ママ・パパがいない間に、子どもが目を覚まして動こうとして、ベルトで首がしまり救急搬送された事故事例があります。

子どもの事故を防ぐには、ママ・パパの想像力が大切です。
「子どもが目を覚ましたら危ないから、夫婦で交代して休憩をとろう」と考えたりする力を養ってほしいと思います。

子どもを先に車に乗せて、子どもが泣くのでリモコンキーを持たせたまま、ママ(パパ)が運転席側に回り、車に乗ろうとしたら、子どもだけ車内に残した状態でロックがかかってしまったという事故も時々あるようですが、こうした事故も想像力を働かせれば防げると思います。
最後にもう1点大切なことは、どれだけ正しくチャイルドシートを装着していたとしても助からない事故も存在しています。そう、大人が無謀な運転をしている限り、子どもたちのリスクはゼロにはなりません。飲酒、いねむり、スマホのながら運転、スピード違反など、日々大人たちが軽い気持ちでやっている無謀な行動をなくしていくことが最も大切なことです。

お話・監修/種市尋宙先生 提供・協力/JAF 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

種市先生は小児救急が専門で、車の事故で救急搬送されてくる子どもも診ています。「ママ・パパたちは、みんな後悔して自分を責めています。車の事故は、運転に自信があるママ・パパでも防ぐことができません。けしてひとごととは思わないでください」と言います。

参考資料

チャイルドシート使用状況調査

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