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2024年秋、「鼻からスプレー」の痛くないインフルエンザワクチンが接種可能に。効果は?接種年齢は?デメリットは?【小児科医】

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マスクを着用して咳をする少女
●写真はイメージです
Hakase_/gettyimages

主に冬に流行するインフルエンザは、気管支炎、クループ、肺炎などの呼吸器の病気や脳炎・脳症を起こして重症化しやすい病気です。ですから、毎年、流行前までに免疫をつけておくために、秋になると「インフルエンザ」の予防接種が始まります。
今年は日本でも、2歳の子どもから使える「鼻から接種するインフルエンザワクチン(フルミスト®)」が使えるようになりました。効果や副作用、実際にフルミストを希望するにはどうしたらいいか、解説します。
連載「ママ小児科医さよこ先生の診療ノート」の10回目です。

鼻スプレーのインフルエンザワクチン「フルミスト」

インフルエンザのワクチンといえば、腕に打つ皮下注射(不活化ワクチン)が主流ですよね。一方で、鼻からスプレーのように噴霧する「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(経鼻ワクチン、フルミスト®)」というものもあります。

腕に打つ皮下注射(不活化ワクチン)は、生後6カ月から接種でき、13歳未満では(2〜4週間ほどあけて)2回接種することで、免疫獲得が期待できます。一方で経鼻ワクチン(フルミスト®)は2歳以上から接種できます。鼻の穴の左右に1回ずつ、スプレーのように噴霧すれば完了です。
なおいずれのワクチンも、ほかのワクチンと同時に接種することができます。経鼻ワクチン(フルミスト®)はすでにアメリカやヨーロッパで認可され、小児にも使用されています。

子どもにとって、注射は痛くて恐怖を伴うもの。もし鼻からスプレーするだけでインフルエンザが予防できるのであれば、これはうれしいですよね。

経鼻ワクチンは、注射と変わらない効果あり

では実際に、鼻からスプレーするだけでも、効果はあるのでしょうか。

厚生労働省の資料によれば、日本人の小児(2歳以上19歳未満)において、経鼻ワクチン(フルミスト®)を使用することで、インフルエンザの感染・発症予防に有効であることが報告されています。また海外のデータですが、皮下注射(不活化ワクチン)と比べて、経鼻ワクチン(フルミスト®)の効果は劣らないというデータも示されています。

こうした報告を受けて、アメリカ小児科学会やアメリカ疾病予防管理センターでは、小児に対するインフルエンザ予防の1つの選択肢として、経鼻ワクチン(フルミスト®)を選択することを認めています(経鼻ワクチンを特別に推奨している、注射の不活化ワクチンよりも推奨している、ということではありません)。

なお以前は、経鼻ワクチン(フルミスト®)のほうが効果が低いという結果が出たため、アメリカでも推奨されなかった時期がありました。この理由としては、経鼻ワクチン(フルミスト®)の保存方法が不適切であったためです。たとえば日本で個人輸入されるようなケース(国や製薬期間が正式に認めたルートではない入手方法のケース)では、経鼻ワクチン(フルミスト®)に含まれる有効成分が、効果が認められる下限量の10%程まで低下していたという報告もあります。

こうした報告を受けて、各国で適切に経鼻ワクチン(フルミスト®)を管理できる体制が構築されてきました。日本でも、国内の製薬会社である第一三共が、アメリカと共同しながら開発し、有効かつ安全に接種できる体制が整ったため、厚生労働省からも薬事承認がおりた、という流れです。

生ワクチンならではの副作用には注意

どんなワクチンにも、副作用・副反応はあります。たとえば注射の場合は、注射した部分の痛み、腫れ、赤み、注射後の発熱などが一般的です。経鼻ワクチン(フルミスト®)ではどのような副作用があるのでしょうか?

まず経鼻ワクチン(フルミスト®)は、生ワクチンです。これは、不活化したウイルスを含む注射のワクチンとは違い、まだ生きたウイルスが含まれています。なお、ロタウイルス、麻疹(はしか)、水痘(水ぼうそう)、おたふくなどのワクチンも、生ワクチンです。

生ワクチンは、弱毒化はしているものの、生きたウイルスを含むため、どうしても感染・発症のリスクがあります。たとえば「ロタウイルスのワクチンを飲んだあとに、実際にロタウイルスに感染したときと同じような症状が出る」といったように、「経鼻ワクチン(フルミスト®)を鼻から接種したあとに、インフルエンザと同じような症状が出る」といったことが生じます。具体的には、発熱、鼻水、せき、のどの痛み、頭痛などです。なお年齢や基礎疾患などにもよりますが、およそ10%ほどでこうした症状が出うる、という報告があります。

ただし、ワクチン接種をせずにインフルエンザを発症した場合は、これらの症状にとどまらず、肺炎や脳症、精神神経症状(異常行動など)が生じる可能性があります。経鼻ワクチン(フルミスト®)の接種の後は、ワクチンのせいで、これらの症状が出ることはありませんでした。

なお臨床試験の段階で、経鼻ワクチン(フルミスト®)を2歳未満に接種した場合は、逆にインフルエンザ症状による入院や、喘鳴(呼吸がゼイゼイすること)が増加してしまいました。よって経鼻ワクチン(フルミスト®)が接種できる対象年齢は、2歳以上と定められているのです。

問題点は「高い」「在庫がない」「鼻風邪を引いていると効果がおちる」

日本の厚生労働省においては、2023年の段階で、すでに経鼻ワクチン(フルミスト®)が使用できる(2歳以上)ように薬事承認がおりています。

では実際に2024年、今年の秋や冬から接種ができるかというと、なんともいえない、というのが実情です。というのも、新しいワクチン全般に共通することですが、製薬会社からどれくらいの数が供給されるのか、各医療機関で在庫がどれほど確保できるかなどが予想できないからです。

さらに皮下注射(不活化ワクチン)と同様に、経鼻ワクチン(フルミスト®)も自費での接種になります。国が定期接種と定めていないため、無料で接種することができません。自費の場合は、各医療機関によって定める値段が異なりますが、(定期接種化される前のロタウイルスワクチンがそうであったように)1万円以上などの高額も予想されます。

また接種する際に、鼻風邪やアレルギー性鼻炎(花粉症)などで鼻水が出ていると、経鼻ワクチン(フルミスト®)の効果が低下するのではないか、という見識もあります。そもそも鼻には、外からの異物を入れないようにするために、鼻毛(さらにこまかい繊毛(せんもう)という組織もあります)や鼻の粘液があります。そもそも鼻水がある状態では、経鼻ワクチン(フルミスト®)の成分が鼻の粘膜に適切に付着しませんし、さらに鼻毛や繊毛によって排除される可能性があるからです。

小児のいろいろなワクチンが議論されています

経鼻ワクチン(フルミスト®)にかかわらず、痛みのないワクチンは、今後も開発が進む可能性が大いにあります。実際に、より痛みを感じにくい針や、また接種する部位に局所麻酔ができるような、麻酔シールのようなものも開発されています。いずれも、開発当初はまだ値段が高かったり、効果が一定でなかったりして、一般的なクリニックや医療機関では取り扱っていないことも多いですが、今後普及する可能性はあるでしょう。

またインフルエンザにかかわらず、より子どもをたくさんの感染症・重篤な合併症から守るためのワクチンの議論も進んでいます。たとえば、すでに0歳からの定期接種である肺炎球菌についても、現在は15価ですが、20価に引き上げられる可能性があります。肺炎球菌にはたくさんの種類があるのですが、今のワクチンではそのうち15種類だけカバーできており、それが20種類にまで増えるということです。20価になれば、肺炎球菌による中耳炎や髄膜炎(ずいまくえん)などがより防げることが期待されます。

RSウイルスについても「ニルセビマブ(商品名ベイフォータス®)」という新しいワクチン(モノクローナル抗体)が議論されています。現在はRSに対するワクチンというと「パリビズマブ(商品名シナジス®)」といって、早産児や心臓病など限られた条件の子どもが、月に1回打つものがあります。一方でニルセビマブは、健康な子も対象で、シーズン中に1回だけ打てばいいというものです。海外ではすでに使用されていますが、日本ではまだ定期接種にはなっていないため、数万円単位などの自己負担かつ限られた医療機関でしか接種できません。

日本はワクチン・ラグといって、海外の先進国では当たり前のように接種されているワクチンに対して、国が承認していなかったり、無料で接種できなかったりします。どんなワクチンにも副作用があり、怖いと感じる気持ちもあるでしょう。一方でワクチンを打つことによるメリットも証明されているからこそ、多くの国で承認されていたり、子どもが無料で接種できるようになっていたりします。

ネットサーフィンをしていると、つい心配な情報ばかり目についてしまいますが、厚生労働省や小児科学会、また医師が監修しているホームページなどを参考に、正しく知って判断していきたいですね。

文・監修/白井沙良子先生 構成/たまひよONLINE編集部

赤ちゃん・子どもを感染症から守るために大切な予防接種・ワクチン。つらい症状にならないために、そして重症化によって深刻な状態にならないために、正しい情報を手に入れて、適した時期に適した対応をすることが大切なようです。

【参考文献】

第25回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会、小児に対するインフルエンザワクチンについて

日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」、インフルエンザワクチン

JAMA Pediatr 2018; 172:e181514.Caspard H, et al. Vaccine 2016; 34:77-82.感染症学雑誌 2015; 89:720-6.

アストラゼネカ フルミスト

経鼻吸収型インフルエンザワクチンの開発(谷本武史)、Drug Delivery System, 25巻1号,15-21, 2010.

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