「子どもたちに毎日ゲームの時間を注意するのが超ストレス!どうしたらいいかわからない」俳優・加藤貴子が専門家に聞く


9歳と7歳の2人の男の子を育てる、俳優の加藤貴子さん。近ごろ、息子たちのゲームやネット動画について頭を悩ませることが多いのだとか。加藤さんが育児にかかわる悩みや気になることについて専門家に聞く連載第25回は、ネット依存専門心理師で、2児の母親でもある森山沙耶先生に「子どもとゲーム・ネットとのつき合い方」について聞きました。
親子で決めたゲームのルールがなかなか守れない息子たち
加藤さん(以下敬称略) 今小学4年生の長男は、1年生の冬にもらったお年玉でNintendo Switch(携帯ゲーム機)を買ってゲームで遊び始め、3年生くらいからオンラインシューティングゲームで遊ぶようになりました。ゲームで遊び始めたころにはあまり厳しいルールを作りたくなくて「宿題ややるべきことをやってから遊ぼうね」と話していたんです。
そうしたら、ゲームやYouTube動画視聴の時間がどんどん長くなってしまって。息子たちと話し合って、(1)1時間やったら目を休める(2)終了時間を決めて始める(3)ごはんの時間を優先する(4)食事のときはテレビ(動画)を消す、というルールを作りましたが、なかなか守れていない現状です。毎日「時間だよ!」と同じことを繰り返し注意するのもストレスで・・・。ネットとゲームの利用について、親子でどんなルール作りをするといいでしょうか。
森山先生(以下敬称略) 最初は厳しいルールは作りたくなかったけれど、いろいろと問題が出てきてしまったから、子どもたちと使い方を話し合ったんですね。親が子どもと話をせずに一方的に禁止したり取り上げてしまうのは問題があると思いますが、加藤さんのように親子で相談することはいいと思います。
加藤 一応ルールを作ったものの、私も一貫性がないんです。長男は毎日2時間以上サッカーの練習をしていて、さらに水泳や英語などの習い事もあるのでけっこう忙しいんです。サッカーの試合が夜までになることもあって、そうすると1日のうちの息抜きがほしいようで「ネット見ながら食べてもいい?」と言われてしまうことも。私は食事のときは動画を見ないで家族との会話や時間を大切にしてほしい、と言いつつも、長男の気持ちもわかります。だから「じゃあしょうがない、今日は特別ね」って言ってしまうんですけど、一貫性がないのって、どうなのかな、これでいいのかな、と悩んでいます。
森山 一貫したスタンスをとるべきかどうか、迷いますよね。加藤さんの場合、「食事の時間は家族の会話を大事にしたいから、ネットを見るのはやめよう」と親の気持ちを伝えていることはとてもいいと思いました。ただ単に「ごはん中はネットはだめだよ」という伝え方では、子どもはなぜだめなのかがわからないし、自分を否定されたように感じてしまうからです。
一方で、長男さんの気持ちもよくわかります。「じゃあ今日は特別ね」と柔軟に対応するのは、見方によっては一貫性がない、ぶれていると思われるかもしれませんが、ルールにこだわりすぎるのも考え物です。ルールそのものが子どもにとって嫌なもの、縛られているもの、と感じるとルールを守ることに反発したり不満を持ったりすることがあるからです。ルールに厳しくこだわりすぎず、ある程度息抜きも必要だよね、とたまにイレギュラーに対応するのは悪くないと思います。
親子が対立せずにゲームを終わるための声かけ
加藤 夏休みには、長男はサッカーの練習以外の時間はリビングのソファでYouTubeを見るか、友だちとオンラインゲームばかり。小1の二男もお兄ちゃんと一緒にオンラインゲームで遊んだりYouTubeを見たり。一応、子どもたちと決めたルールをリビングの壁に貼ってあるんですけど、ほとんどオブジェと化しています(笑)
「夏休みだし、大目にみるか・・・」と思いつつも、何回か注意しても聞いてくれないときには、激怒してしまうこともありました。
森山 夏休み期間はいろいろと目につくことも多かったと思いますが、長期休み以外の期間は、習い事もあって忙しいようですし、日々のゲームやYouTubeを視聴する時間も問題があるほど長時間というわけではなさそうです。
加藤 えっ? そうなんですか。親としては、ゲーム時間が気になって「そろそろ終わりだよ」から始まって、「時間だよ」「約束だよね!」とどんどん言い方が強くなってしまうんです。
森山 約束の時間を過ぎてもずっと視聴しているときに、親が「時間だよ!」と急に電源を切ってしまったりするケースも聞きますが、そうするとお互いに嫌な気持ちになりますよね。
声かけの工夫として、動画やゲームに熱中している子どもに「今、どういう動画を見てるの?」「面白いの?」と、関心を示す方法があります。「いつまでやってるの、寝る時間だよ」と言いたくなる気持ちをぐっと抑えて、「何してるの~?」とニュートラルに聞いてみる。
すると、実は「今友だちと、Googleクラスルームで意見を書き込みあって盛り上がってるんだ~」とか「こういう動画見て面白いんだよ~」とか話してくれます。「へえ、盛り上がってるんだね」とか「たしかに面白そうだね」と話をすると、子どもはけっこういろいろ教えてくれるんですよね。そんなふうに少し会話をしながら「でもそろそろ寝る時間だね」「気づいたら何試合もやってるみたいだけど、どうする?」と提案してみる。そうすると、子どもも「そっか、そろそろ約束の時間だな」と気づくと思います。
加藤 へえ〜! そう伺うと、私の言い方は頭ごなしだったかもしれません。たしかに、子どもがどうしてそんなに熱中するのかもわかっていなかったです。まずは子どもに聞いて、何に夢中になっているのか?子どものことを知ることが大事なんだと気づきました。
子どものゲーム依存のサインは?
加藤 ゲームや動画視聴が大好きな息子たちなんですけど、どんな様子が見られたらネットやゲームの依存と考えられますか?
森山 保護者は時間を心配する人が多いですが、依存症のサインは時間だけはないんです。ネット依存症(ゲーム行動症)の度合いを測るテストでは、質問項目に答えて何個以上当てはまると依存が疑われる、というような判断をしますが、数あるテストの中で「ゲームの時間が6時間以上」といった項目はあまり入っていないんです。
依存のサインとしては「以前に比べてプレイする時間が長くなってしまう」(耐性)ことや、「楽しくてゲームをやるのではなく、不安や現実から逃げるためにゲームをする」(気分修正)ことなどと言われます。
ほかに、家族にうそをついたり隠したりする、学校に遅刻するなど生活に支障が出る、日常生活の中でゲームがいちばんになってほかのことができなくなる、ゲーム以外のことに興味関心がなくなる、といったことも依存のサインです。
加藤 そうなんですね。今のところ息子たちは自分から終わらせるのは難しいものの、注意すれば終わらせて(私が激怒することもありますが)友だちとも楽しくゲームをしているので、生活に支障が出るほどではないかも。ただ、小1の二男もお兄ちゃんと遊びたくて、ゲームをする時間が長くなるのも心配です。
森山 二男さんにはゲームの代わりにどんなことをやってもらいたい、と思いますか?
加藤 外遊びをして体を動かしてお友だちとも遊んでほしいな、というのが1つ。あとは二男は折り紙や工作やお絵かきが好きなので、いろいろと作ることも楽しんでほしいです。でも・・・。折り紙の折り方をタブレットのYouTube動画で調べるのはいいんですけど、私が少し目を離していると、いつの間にか折り紙動画から別のショート動画を見てしまっています。
ちなみに4年生のお兄ちゃんもサッカーのHow to動画を見ているうちに別の動画に逸れてしまうことが多々あります。
森山 小学1年生くらいだと、目に入った面白そうなものをタップしてしまうし、その行動を制御するのは難しいですよね。タブレットで見ているということですが、テレビのYouTubeだったらショート動画につながりにくかったりしますよね。
だから、YouTubeはテレビで見る、という約束をするのも方法の1つです。それ以外のデジタルデバイスは、子どもの目に入りにくいところに置いておく。テレビでならいつでもYouTubeを見ていいよ、という環境を整えるといいかもしれません。
YouTubeで自分で調べながら工作すること自体は、悪いことじゃないですよね。うちの子もよく調べて折り紙を折って遊んでいます。
時間で区切らず、本数や回数で決めてみる
加藤 先生はお子さんたちとデジタルデバイスのつき合い方についてどんな約束をしていますか?
森山 わが家は小学3年生の女の子と年長の男の子のきょうだいですが、未就学の時期はタブレットは子どもだけで使わせません。
テレビでの動画視聴は土日だけOKにしていて、好きなアニメを1日1人1つずつ見ていいことにしていたので、きょうだいでどのアニメを見るか話し合って決めていました。朝起きて、朝ごはんを食べて身じたくができたら、今日は「『ONE PIECE』(ワンピース)を見よう」なんて話し合って。
YouTubeもゲームも、終わるタイミングを時間で区切るのは難しいと思うんです。動画もきりがいいところまで見たい、とか、ゲームも友だちと試合中だから途中で1人だけ離脱できない、ということはありますよね。だから、アニメなら1日何本、とか、ゲームなら何試合、という区切りをつけていました。
加藤 なるほど~。たしかに、息子にプレイ時間を注意すると「この試合が終わるまで!」と言われることはよくあります。
森山 私がアニメやゲームを終わらせるときに意識していたのは、親の私が電源ボタンを押さないということです。幼少期に効果的だったのは、子どもたちにテレビのスイッチを切らせること。「今日は2本見たね、あれ、スイッチはどこにあるかな? 自分たちで押せるかな?」と言うと、「私が切る!」と競って電源を切っていました。そんなふうにゲーム性を持たせてみてもいいかもしれませんね。
お話/加藤貴子さん、森山沙耶先生 撮影/アベユキヘ 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
子どもがゲーム利用の約束を守らずに遊んでいると、つい強い口調で注意してしまうこともあるのでは。上手にゲームやネットとつき合うには、デジタルデバイスの使い方や、声かけのしかたを工夫してみるとよさそうです。
森山沙耶先生(もりやまさや)
PROFILE
2012年東京学芸大学大学院教育学研究科を修了後、家庭裁判所調査官として勤務。その後、大学病院や福祉施設にて心理臨床を経験。2019年8月、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにてインターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)を修了後、MIRA-iの設立に携わる。現在はネット・ゲーム依存専門心理師として、カウンセリングだけでなく講演活動も行う。二児の母としても奮闘中。
加藤貴子さん(かとうたかこ)
PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。
●記事の内容は2024年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。