夫婦名義でのマイホーム購入。実は…それ損してるかも?! 住宅ローン控除より手数料の方が高いこともあるってホント⁉ FPに聞く
「たまひよ」アプリユーザーに、住宅購入に関するローンの名義について質問。共働きの急増を受けて約3割が「夫婦名義でローンを組んだ」と、回答しました。「共働き夫婦が住宅ローンを考えるとき、選択肢は3種類あります。それぞれのデメリットもちゃんと把握しましょう」と、ライフスタイルアドバイザーで1級FP技能士の前田菜穂子さんからの解説も紹介します。
Q. マイホーム購入の際、ローンを組んだのは誰ですか?また誰の予定ですか?
夫(パートナー)単独で 57%
夫婦(パートナー)の両方 33%
妻(パートナー)単独で 3%
その他 7%
アンケート回答者層の約85%が25~39歳の女性で、約60%が正社員の共働きです。若い世代では「住宅ローンは夫婦名義で」が定着しつつあり、さらにジェンダーバイアスの流れを受けて「夫婦平等に負荷を」という考えもあるようです。
コメントには「夫婦名義の方が節税対策でお得」という意見がある一方で、「夫婦名義(ぺアローン)は手数料が高いのでやめた」という意見も。それぞれのコメントを紹介します。
もしもの時はダメージが少ない⁉ 夫単独でのローン派
「夫の方が年収が多いため」(ゆらき)
夫単独の名義にした理由で最も多かった意見です。しかし共働きだけれども、“あえて”夫単独でローンを組んだ夫婦もいました。
「後々めんどくさいかなと。夫婦名義のローンにすれば、予算が増えて良い物件が買えると思いましたが、所有権が2人になることはデメリットだなと感じました。建物は時価ものだし、“万が一”売ることになり揉めたら嫌だし、話し合う時間がもったいないなと…」(エビ)
「夫婦2人名義はお互いに何かあったときに共倒れになるかなと、あえて夫単独ローンで購入しました。夫からも『俺に“万が一”何かあっても家は残してあげられるから安心』と、言われました」(まむち)
そしてこんな意見もありました。
「団信100%にしたかったから」(くまお)
「ペアローンにすると手数料が割高でした。住宅ローン減税分を差し引いても、夫単独の方がお得でした」(なっ)
この点については、のちほど前田菜穂子先生に伺います。
住宅ローン減税をフル活用 夫婦名義でローンを組んだ派
「夫婦で組んだ方が住宅ローン減税で戻る金額が大きかったから」(Mina)
「共働きで税制優遇を最大限受けられるため」(ななな)
として、税制優遇から「夫婦名義」を選ぶ人が続出。
「出産前にどうしてもローンを通して購入まで進みたかったので、確実にローン審査が通る夫婦名義で審査をしました」(みゆゆ)
として、金額面から夫婦名義にした人も。一方でチラホラあったのが
「住宅メーカー担当者のススメです」(木の実)
という意見です。
たくさん借りられるし、住宅ローン減税も2人分と囁かれて、安易に組んでしまった夫婦もいそうな雰囲気を感じます。
「共働き夫婦が住宅ローンを考えるとき、選択肢は3種類あります。それぞれメリット・デメリットをちゃんと把握しましょう」とは、ライフスタイルアドバイザーで1級FP技能士の前田菜穂子さんからのアドバイスです。
「夫婦名義でたくさん借りることは可能。ただし“デメリットも増える”覚悟を」と、FP前田さん
<制度の説明>
「夫婦名義」とは、夫婦で住宅の所有権を分けることを指し、ローンの組み方としては「ぺアローン」と「収入合算(連帯債務・連帯保証)」の3つの選択肢があります。
(1)ぺアローン
金融機関で“夫婦それぞれ審査をうけて2本の住宅ローン”を組みます。夫婦それぞれが団体信用生命保険(※1以下、団信)に加入します。
(2)収入合算(連帯債務)
収入合算のうち連帯債務は “夫婦の年収を足してローンの審査”を行い、“どちらかが主債務者”となり主債務者の口座からローン返済します。主債務者でない方は連帯“債務者”となり、返済義務は夫婦平等です。団信は金融機関によっては加入は主債務者のみ、など制限がある場合があります。
「団信100%にしたかったから」(くまお)
“くまお”さんはぺアローンではなく、連帯債務あるいは連帯保証を検討していたと推測できます。
「ペアローン」と「連帯債務」は夫婦それぞれに所有権があり、住宅ローン控除もそれぞれ受けられます。
(3)収入合算(連帯保証)
収入合算のうち連帯保証も、夫婦で収入を足し合わせてローンの借入額を増やします。主債務者はどちらか一方というところまでは同じですが、もう一方は連帯“保証人”となり、主債務者が返済不能時に返済義務を負います。
※1 住宅ローンを組む人が死亡などの「万が一」の時に、保険金で住宅ローンの残りを返済する制度。
<夫婦で住宅購入する場合のメリットと注意点>
(1)沢山借りられるが、返せなくなった時の大変さもたくさん
ペアローンや収入合算(連帯債務・連帯保証)のメリットは単独の場合より借りられる金額が大きくなることですが、最大の注意点は何十年にも及ぶローン支払い期間、どちらかの収入が当初の予定より少なくなる可能性があることです。
「夫婦2人名義はお互いに何かあったときに共倒れになるかなと、あえて夫単独ローンで購入しました」(まむちさん)
ライフプランを複数検討し、無理のない資金計画や保険の検討も併せて行いたいところです。
(2)団信は助かるけれどカバーしきれない部分も考えてみる
ペアローンならばパートナーが亡くなった場合、団信によりパートナーの残債は免除されますが、自分自身のローンは払い続けなければなりません。パートナーを失い、家事子育ての負担も残された方にかかります。それらをお金で解決できるように住宅ローン部分以外の保険加入や貯蓄も計画しましょう。
また、取り扱い金融機関は限られますが金利上乗せで夫婦どちらに「万が一」が起きても夫婦とも残りのローンが完済されるという「ペアローン団信」や「連生団信」も調べてみるとよいでしょう。
(3)ローンを組むための諸費用を検討する
ペアローンは、ローンを組むための諸費用が2人分かかります。
「ペアローンにすると手数料が割高で(中略)夫単独の方がお得でした」(なっさん)
上記は実際に有り得ることですが、金融機関やお互いの借入金額、契約方法(電子契約か紙契約か)によって、単独で借入する場合とペアローンにする場合とで数万円差に収まることもありますので、利用したい金融機関ごとに調べてみる価値ありです。
(4)離婚となった場合を想定する
マイホーム購入はウキウキですが、念のために頭の隅に置いておきたいのは、「所有権やローンの残りを住み続ける方に移すのは簡単ではない」ということです。売却を選んだとしても、家の値段がローン残高を下回ると、自己資金で差額を補わなければならない可能性があります。その結果、「モヤッ」とする場面が生じるかもしれません。
<まとめ>
マイホーム購入は物件探しや打合せと忙しく、家のことだけで頭がいっぱいになります。お金の計画は後回しになりがちで、しかも「欲しい家が買えるかどうか」「ローンがおりるかどうか」に意識が集中します。
「家族の状況が変化しても何十年にわたって問題なく返せるか」住宅ローン控除や諸費用まで考えを巡らせ、FPの意見を求めたり、家計シミュレーションをぜひ行ってみてください。住まい探しや家づくりと並行して家計もイチから組みあげていけたらいいですね。
前田菜穂子
みつめFP事務所代表で、1級FP技能士(国家資格)、CFP®(日本FP協会)、日本学生支援機構認定スカラシップ・アドバイザー(平成29年10月~令和7年9月)、J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザー 、FPmamaFriendsおこづかい教室認定講師。猛烈に働いた13年間の会社員生活での挫折や長く続いた不妊治療経験など、人生の壁にぶつかったことをきっかけに、金融業界未経験ながら5年間猛勉強してFPの資格を取得。“今より幸せで円満な家庭づくりのお手伝い”をモットーとし、娘として、妻として、母として、そして専門家として広い視野をもち、親子や夫婦でも話題にしづらい「お金のハナシ」に向き合うきっかけを提供しています。プライベートでは一児の母。
取材・文/和兎 尊美、たまひよONLINE編集部
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2024年8月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです。(有効回答数106人)
※記事の内容は2024年11月の情報で、現在と異なる場合があります。