SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 赤ちゃんのお世話
  4. 染色体は女の子、でも男の子として生まれることもある!? 性分化疾患は、思春期ごろにわかることも。体の変化について親子で話せる環境を作って【専門医】

染色体は女の子、でも男の子として生まれることもある!? 性分化疾患は、思春期ごろにわかることも。体の変化について親子で話せる環境を作って【専門医】

更新

柔らかいカーペットの上の赤ちゃんと母親の手
●写真はイメージです
takasuu/gettyimages

性染色体が「XX」なら女の子、「XY」なら男の子。学校で習った記憶がある人もいるでしょう。でも、性染色体だけで判断できない疾患があります。性分化疾患(以下、DSD)です。具体的な症例を踏まえて、この病気への理解を深めましょう。
慶應義塾大学病院の性分化患(DSD)センターで、赤ちゃんから成人までの患者さんの診察・治療、サポートを行っている石井智弘先生と浅沼宏先生に解説してもらいました。
全3回のインタビューの3回目です。

▼<関連記事>第2回を読む

DSDを速やかに診断・治療するには、各科専門医によるチーム医療が不可欠

――慶應義塾大学病院では、1990年代から小児科、泌尿器科、腎臓内分泌代謝内科、小児外科、産婦人科、形成外科、精神神経科など、各科の専門医が連携してチーム医療を行ってきたとのこと。DSDの治療が積極的に行われるようになったのは、そのころからですか。

石井先生(以下敬称略) DSDの治療はもっと前から行われていましたが、小児科や内科はホルモン療法を行い、外科や泌尿器科は内性器や外性器の形成術を行うといったように、それぞれの科で個別に治療が行われていたんです。

浅沼先生(以下敬称略) DSDは各科が連携して治療を行うことが必須となります。そのため慶應義塾大学病院では、1990年代からチーム医療を行うようになりました。そして2019年に、DSDの治療に特化した性分化疾患(DSD)センターが設立されました。

「XX染色体」でも男の子のことが・・・。性染色体だけでは性別は決まらない!?

――慶應義塾大学病院の性分化疾患(DSD)センターを受診し、治療を行った子どもの症例を教えてください。

石井 出生前の胎児エコー検査などでは女の子と言われていたけれど、生まれたら性器は男性型で、男の子として戸籍を提出したケースについてお話しします。個人情報保護の観点から、実際の例をもとにアレンジした模擬症例です。

この赤ちゃんのママは出生前に羊水(ようすい)検査していて、その検査では胎児は46,XX(女性)でした。そのため、ママ・パパは女の子と思って誕生を待っていました。ところが、生まれてきたら外性器は男性型で、「SRY遺伝子」を持った「46,XX精巣性性分化疾患」と診断されました。
妊婦健診の胎児エコー検査は、胎児の向きによって外性器が見えにくいので、このようなことも起こりえます。

SRY遺伝子とは、ヒトの性別を決定する遺伝子です。SRY遺伝子が働くと性腺が精巣に、働かないと卵巣になります。染色体が46,XXであっても、SRY遺伝子の乗ったX染色体を持っていると、性腺は卵巣ではなく精巣になり、男性ホルモンが出て、外性器は男性型になります。そのため男の子として育てられます。

症例の赤ちゃんは、DSDとはまったく別の理由で、出生前に羊水検査で染色体検査を行っていました。その結果、染色体は46,XXであることがわかり、両親は女の子が生まれると思っていたんです。ところが出生後に「46,XX精巣性性分化疾患」と診断され、とてもびっくりしたようです。
この赤ちゃんは男性ホルモンの作用がしっかりしていて、外性器はほかの男の子と同等。手術も必要としない男性型でした。男性ホルモンを出す力も正常で、男の子としての第二次性徴は自然に来ると予測できました。

これらの情報を両親と共有し、男性として戸籍を登録することにしました。「XX染色体をもっていると女の子」という分類に当てはまらない例です。その後も、男の子として問題なく成長しています。

思春期の子に体の気がかりを相談してもらえるよう、幼児期から働きかけを

――出生時にDSDの可能性を指摘されず、その後もとくに気になることがなく成長しても、思春期以降にDSDだとわかるケースもあるとか。

石井 男の子は14歳ごろになっても精巣が大きくならない、16歳ごろになっても声変わりしない場合、女の子は13歳になっても乳房が大きくならない、15歳ごろになっても生理が来ない場合は、DSDが疑われます。DSDの検査・診断ができる病院で相談してください。

浅沼先生 機能していない卵巣や精巣を体内に置いたままにしていると、がん化する恐れがあります。これを予防するためにも、第二次性徴期のころに子どもの体の発達がなんとなくおかしいなと感じたら、早めに専門医に相談しましょう。

――第二次性徴が見られるようになる小学校高学年以降になると、子どもに体のことを聞くのがはばかれる、子ども本人からも体のことを話してもらうのが難しいという状況になりがちです。子どもに対してどのようにアプローチするのがいいでしょうか。

浅沼 小さいころから、体の変化について話せる関係作りをしておくことは、DSDに限らず、あらゆる病気を早期に発見するために大切なことです。性器や生理に関することは、「大切なことだから気になることはきちんと教えてね」と、親がまじめに話しておくのがいいと思います。

石井 思春期の子どもが受診した際には、付き添った保護者には席をはずしてもらって、医師と子どもと一対一で話を聞くようにしています。そうすると困っていたこと、とまどっていたことなどを話してくれる子が多いです。
「ママ・パパに話したくないなら、病院の先生にだけ話してくれればいいよ。大切なあなたの体を守りたいから病院に行ってほしい」と、真剣に話すと、思春期のお子さんでも納得してくれるかもしれません。

――「性分化疾患初期対応の手引き」が作られたのは2011年で、2017年に改訂版が出ました。それから7年たっています。新しい手引きが出る予定はありますか。

石井 実はいまちょうど、「性分化疾患(DSD)の診療ガイドライン2025」を作っているところです。原案はすでにできているので、早ければ2025年1月ごろに発表できるかもしれません。

DSDの診断は子どもの将来を左右するため、とても慎重に行う必要あります。日本のどこに住んでいても、同じように検査・診断を行えるようにすることが重要です。このガイドラインが日本全国の医師と医療従事者の判断基準の参考になることをめざしています。

お話・監修/石井智弘先生、浅沼宏先生 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

各科の専門医が連携して診断・治療を行うことが重要なDSD。日本のどこに住んでいても正しく診断され、適切な治療、支援を受けられるように、新しいガイドラインが活用されることを期待します。

石井智弘先生(いしいともひろ)

PROFILE
慶應義塾大学医学部准教授(小児科学)。同大学病院 性分化疾患(DSD)センター 副センター長(兼任)。1992年同大学医学部卒業。総合太田病院(現・太田記念病院)小児科、慶應義塾大学医学部助手(小児科学)、テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター内科リサーチフェロー、慶應義塾大学医学部助手(小児科学)、助教(小児科学)、専任講師(小児科学)を経て、2017年より現職。日本小児内分泌学会 理事、性分化・副腎疾患委員長、日本生殖内分泌学会 理事、性分化疾患の診療ガイドライン作成委員長。

浅沼宏先生(あさぬまひろし)

PROFILE
慶應義塾大学医学部准教授(泌尿器科学)。同大学病院 性分化疾患(DSD)センター 副センター長(兼任)。千葉県船橋市出身。1990年愛媛大学医学部医学科卒業。東京都立清瀬小児病院(現・都立小児総合医療センター)泌尿器科医長、米国インディアナ大学リサーチフェロー、慶應義塾大学医学部専任講師(泌尿器科学)を経て、2017年より現職。日本泌尿器科学会代議員(小児泌尿器科部会長)、日本小児泌尿器科学会評議員。専門領域は子どもの腎泌尿生殖器疾患。

●記事の内容は2025年1月の情報であり、現在と異なる場合があります。

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。