11代目歌のお兄さん、横山だいすけ。オペラ調の『チューリップ』で夜泣きが解消!? 4歳娘との“おふろコンサート”は、親子の大事な時間
NHK Eテレ『おかあさんといっしょ』で、11代目「歌のお兄さん」を9年間務めた横山だいすけさん。プライベートでは4歳の娘さんをもつパパでもあり、地方公演などで忙しい日々の中でも、娘さんとの時間を大切にしています。今回は横山さんらしい、音楽にあふれた子育てのことや、絵本の楽しみ方について聞きました。
全2回インタビューの前編です。
どんなに小さな赤ちゃんにも、歌はちゃんと届いているんだと実感!
――横山さんは地方公演などもあり忙しい日々だと思いますが、娘さんとはどんな日常を送っていますか?
横山さん(以下敬称略) 2024年はとくに全国ツアーがあったので、月の半分も家にいられなかったんです。ただ、今年はもう少し家にいられそうなので、娘との時間もたくさん作りたいですね。
そんななかでも僕が意識しているのは、朝の時間です。娘は比較的早く起きるので、朝に娘との時間を作るようにしています。たとえば1〜2歳のころは、朝のお散歩によく行っていました。そのころ、娘が虫に興味をもっていたので、お散歩しながら、ダンゴムシやアリ、チョウチョ、トンボなどを見つけたりしていましたね。
最近は、少し成長してきたので、朝に時間の余裕がある日は、料理の手伝いをしてもらっています。自分でパパッとやってしまうこともあるのですが、時間に余裕があるときは、料理や掃除など、一緒にやることを心がけています。
――ほかには、どんな時間を一緒に過ごしますか?
横山 僕が家にいるとき、おふろは絶対に一緒に入って、2人でおふろコンサートをしています。このコンサートは、娘が生まれて、まだ反応も返ってこないころからずっと続いていますね。新生児のときって、大人が歌いかけても、まだ笑顔になるなどの反応はないじゃないですか。それでも、とにかくたくさん歌いかけていたんです。
それを続けていたら、娘は言葉を話し始めるのと同時に、歌を歌い始めたんですね。それも、その当時に僕が歌っていた曲ではなくて、もっともっと小さいときに歌ってあげていた曲を歌い始めたんですよ。そのときに、小さい赤ちゃんはまだ発信することができないだけで、ちゃんと受け取ってくれていたんだということを実感しました。
――娘さんがお気に入りの歌はありますか?
横山 娘はとくに、坂田おさむさんの『にじのむこうに』が好きですね。僕が、歌のお兄さんとして最後に歌った曲でもありますし、コンサートでもよく歌っているからかもしれないです。
あとは、最近は幼稚園で習ってきた歌を、延々と1人で歌っています。先日は、僕の両親を巻き込んで、「じゃあ、パパはねずみ役やって、じいじはおさるの役ね」などと家族全員に役を与えて、おゆうぎ会の演目を最初から最後までやり切りました(笑)
ほかにもちょっと面白いエピソードがあって、娘が小さいころ、夜泣きがひどい時期に、優しく語りかけるような歌や子守歌をたくさん歌っていたんですよ。すごく優しい声で歌ってみても、一向に泣きやまなくて・・・。それであるとき、低音のオペラ調で『チューリップ』を歌ってみたら、娘が目をくりくりさせて、ピタッと泣きやんだんです。たぶん、娘にとって聞いたことのない発声で、「何だこれは?」と思ったんでしょうね。「子守歌って、優しく歌えばいいんじゃないんだ!」と知ったときは、目からうろこでしたね。
子どものためにと思って始めた読み聞かせ。今は自分自身も「楽しい!」
――Instagramで、娘さんの本棚の写真を公開していますね。色分けされていて、すてきです!
横山 僕の両親は絵本がすごく好きで、僕も幼少期から、絵本にたくさん触れられる環境にあったんですね。眠る前に絵本を読んでもらう習慣も、僕にとっては楽しい時間でした。自分が親にしてもらった、楽しかったことやうれしかったことは、なるべく自分の娘にもしてあげたいなと思っているんです。それで、朝や夜に時間があるときは、1冊でも多く絵本を読むようにしています。
色分けにしたのは、妻のアイデアです。海外のサイトで知ったようなんですが、子どもの絵本を色別に分けて収納すると、文字が読めない年齢でも片づけしやすいそうです。あとは、パッと本棚を見たときに虹色に見えるので、それも楽しいですよね。
最初は、子どもの発達にもいいし、自分も歌のお兄さんを卒業してから、仕事で絵本の読み聞かせをする機会があるので、家でもできるだけたくさん読みたいなと思っていたんです。それが実際に読み始めてみると、絵本って本当に面白いなとあらためて感じました。
昔の名作はもちろんいいですけど、最近はしかけ絵本だったり、方言の絵本だったり、今らしい工夫がされているものがたくさんありますよね。最初は娘のためと思って読み始めましたけど、今はとにかく「楽しい!」という気持ちが大きいんです。
――絵本を読むときに、横山さんらしい工夫をしていますか?
横山 絵本の読み方ってよく質問されるんですが、僕自身も読み方で悩んだこともありました。よく、絵本は抑揚をつけずに読んだほうがいいと言われますよね。もちろん、抑揚をつけずに読むこともあるんですけど、逆にものすごく抑揚をつけてキャラクターになりきって読むこともあります。ねずみなら声を高くしたり、ぞうなら声を低くしてゆっくり読んだり。子どもの反応を見ながら読み方を変えるんです。絵本って、読み手によって雰囲気が大きく変わるんですよね。
あとは、眠る前の読み聞かせであれば、最初は少し元気な内容のものを軽快に読んであげて、だんだんとトーンを落として、最後はゆっくり読めるものを選んだりもします。僕の場合は、読み方を1つに絞らずに、今この瞬間の自分の気持ちを大事にして読んでいますね。
――絵本の選び方も、成長に合わせて変わってきていますか?
横山 娘はまだ自分で文字を読むのは難しいんですが、年齢が上がってきたので、最近は少し長めの絵本にも挑戦しています。ただ、実際に読んでみると、途中で飽きてしまうことも。そうすると、「あ、まだこの長さは難しいんだな」とこちらもわかって。そういうチャレンジを繰り返していると、「この前まではこの長さは難しかったけど、読めるようになったんだ」という、娘の成長を感じます。
それに、娘のしゃべっている内容を聞いていると、「昨日読んだ絵本の中の話し方に似ているな」とか、どこでそんな言葉を覚えたのかと思うと、「あ、あの絵本だ」ということもありますね。本をたくさん読んであげることで、語い数が増えるんだと実感しています。
歌のお兄さんはあくまでエンターティナー。実際の子育ては別物だった!
――たくさんの子どもたちと触れ合ってきた横山さんですが、自身の子育てはどうでしたか?
横山 ほぼ、思うようにいかないことだらけです(笑)。これまで、自分がたくさんの子どもにかかわってきたのは、あくまでエンターティナーとして。この時間をいかに楽しませるかがすべてだったんですね。でも、それと“育てる”ことは全然違います。実際に自分で子育てをしてみると、うまくいかないことだらけですね。
『おかあさんといっしょ』で僕がかかわってきた子どもたちは3〜4歳の子が中心だったので、娘が0歳児のころなどは、「宇宙人だ!」なんて思ったぐらいです(笑)。失敗だらけだし、答え合わせができない中で、「これでよかったのかな」と今でも自問自答を繰り返していますね。そうは言っても、子どもはどんどん成長していくので、いろいろなことをやってみて、その中で子どもが何を受け取るのかを試行錯誤しているような感じです。
歌のお兄さんになった当初は、子どもとの向き合い方がまったくわからなかったんです。子どもが好きで、歌が好きで、歌のお兄さんになったのに・・・と悩みました。というのも、番組の収録は、まだ幼稚園や保育園にも行っていない3〜4歳ぐらいの子どもたちが、初めて親元を離れて集団の中に入っていく場なんです。そこに大人の男の人がいると、子どもってキュッと萎縮しちゃうんですよ。でもその状態から、どうやって子どもたちの心を開いて、一緒に楽しむかというのを、本当に悩みながらやっていましたね。
今の手探りの子育ては、そのときの気持ちに似ているかなと思います。とにかく、いろいろなことをやってみて、何がこの子の“楽しい”につながるのかを毎日探っている状態ですね。
――そのときの経験が役立っていることもありますか?
横山 すべてが役立っていますが、とにかく、“楽しむ”ことに尽きるかなと思います。
実は『おかあさんといっしょ』の収録では、僕たちがNHKの入り口に迎えに行って、そこからスタジオに行って本番を終えるまでずっと、お兄さんお姉さん4人と子どもたちだけなんです。4人で子どもたちに注意事項を話して、席につかせて、歌の練習をしたり、トイレに連れていったり、全部しているんですよ。
最初に集まったときに、子どもたちに「こんにちは!」という第一声をかけるのですが、僕たちが、「来てくれたみんなと一緒に楽しく遊びたいんだよ!」という気持ちいっぱいで呼びかけると、子どもたちはとてもいい反応をしてくれます。逆に、自分が「ああ、疲れているな」とか「嫌なことあったな」などと少しでも思っていたりすると、それが子どもたちに伝わってしまって、一気に緊張させてしまうんです。小さい子どもたちには、大人の空気感を見通す力があるんです。
だからこそ、自分自身が楽しい気持ちでいっぱいにすることが大切なんだと、歌のお兄さんを通して学びました。親になると、子どもをちゃんと育てなきゃいけないという責任感がどうしても大きくなってしまうと思うんです。でも、1回きりの人生だし、親と子どもが一緒にいられる時間は限りがあるので、娘と少しでも楽しく過ごしたいなと思っています。
――ママがワンオペになることもあるそうですが、どのような声かけなどをされていますか?
横山 自分が家に帰ってきたときに、どれだけ妻のケアができるかが大事かなと思います。だから家にいるときは、家事は100%僕がしています。料理もしますし、洗濯やお皿洗いもするんです。僕は家事がけっこう好きなので苦にならないし、お皿洗いなんてバイトをしていたのでかなり得意です(笑)
こうして家事をするのも、頭の切り替えができるので好きなんですよね。台本を覚えたり、歌を覚えたりする作業って頭を使うので、ちょっと切り替えたいなというときに料理をすると、気持ちがリフレッシュできるんです。
お話・写真提供/横山だいすけさん 取材・文/内田あり(都恋堂)、たまひよONLINE編集部
小さいころから、歌が好きで、絵本が好きだったという横山さん。自分が楽しかったこと、うれしかったことを娘さんにもしてあげたいと、おふろコンサートで2人で歌を歌ったり、夜眠る前には絵本を開いたりと、娘さんとの時間を大切にしています。そして、その時間を親としても“楽しむ”ことが大切だと言います。
インタビューの後編は、横山さんが歌のお兄さんをめざすきっかけや、お兄さんとして過ごした9年間について聞きました。
横山だいすけさん(よこやまだいすけ)
PROFILE
千葉県生まれ。2006年に国⽴⾳楽⼤学⾳楽学部声楽学科を卒業。幼いころから歌が好きで、⼩学校3年⽣から⼤学卒業まで合唱を続ける。劇団四季時代は『ライオンキング』などの舞台に出演。NHK・Eテレ『おかあさんといっしょ』では、番組史上歴代最⻑となる9年間、歌のお兄さんをつとめる。卒業後はドラマやCM、舞台、コンサートなど活躍の場を広げている。ソロアーティストとしては初のオリジナルアルバム「歌袋」や童謡カバーアルバム「だいすけのどうよう」を発表。2024年には、初の作詞にチャレンジした楽曲が含まれるニューアルバム『笑顔にドッキューン!』をリリース。2025年4月5日には、ソロコンサート「My Songs Concert」の東京公演を控える。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年1月の情報で、現在と異なる場合があります。