子どもの靴の選び方には4つの条件が。冬靴は、ムートン調のブーツに注意が必要!【専門家】
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赤ちゃんや幼児期の子どもの足は、軟骨が多く成長途中です。大人の足に比べてかかとの比率が小さく足先が広い扇型をしています。そのため足の発達と歩行をサポートする機能がある靴を選ぶ必要があります。赤ちゃん・子どもの靴に詳しい、日本靴医学会小児の足と靴を考える委員会の委員長である吉村眞由美先生に、「寒い季節の子どもの靴の考え方」について聞きました。雪があまり降らない地域と、積雪の中で生活する地域の場合に分けての内容です。
雪があまり降らない地域は、冬仕様の靴でなくても大丈夫。ムートンブーツには注意を
――雪があまり降らない、関東地方より南の地域では、スノーブーツなどが必要でしょうか?
吉村先生(以下敬称略) 雪があまり降らない地域では、冬になると雪遊び用の靴を買ったほうがいいのかが気になると思います。寒いと言っても、靴を暖かい素材のものにする必要があるのは、東北以北の雪が積もる寒い地方です。雪のない地方でも、雪専用のスノーブーツなどが売られていますが、これはスキー場など、あくまでレジャー旅行用であり、雪のレジャーに出かけることがある家庭で購入すればいいと思います。また、自宅近くでの雪遊びには、そこまで本格的な靴はなくても間に合うものです。
――ムートンブーツなどを履かせたほうが防寒になりますか?
吉村 近年、防寒用というより冬のおしゃれ用として、女児のムートンブーツはとても人気があるようです。履かせるならば、ムートンブーツは機能的には、問題があることを知っておきましょう。デザイン性が重視されて作られているムートンブーツは、足に固定できるベルトもなく、足部の形状もデザイン重視で、幼児の足の形状に合っていません。靴底もフラットでかたく簡単な作りです。
そのため、幼児期の子どもにいちばん身につけてもらいたい歩き方「かかとで足を着地させ、つま先でけり出して前に進む”踏み返し動作”」ができず、正常な歩き方が阻害されてしまいます。具体的には、かかとが開き気味で足の内側に重心がかかり、靴底の後ろの部分を引きずった状態で、足の指をやや浮かせた歩き方(浮き指が起きる足のバランス)になりやすいので注意が必要です。
――ムートンブーツの特徴を理解していれば、履かせても大丈夫でしょうか?
吉村 おしゃれブーツを履かせたいなら、比較的短時間のお出かけなど走り回らないときにしましょう。走りにくい、つまずきやすい、不自然な歩き方や走り方になる、結果として長時間遊べない(すぐに疲れてしまう)靴なので、運動目的で公園などに遊びに行くときには向いていません。
さらに、高さのある公園遊具などで遊ぶ際は要注意です。高いところに登ったり降りたりするときに、段差を踏みはずしてしまったり、引っかかってしまって転落したり、バランスをくずすことでのけがをする危険性も増大します。ブーツのつま先が分厚く、指先に遊具などに触れた感覚が伝わりにくいためです。
雪があまり降らない地域で、靴の選び方で大切なこととは?
――防寒靴が必要ない、積雪がない地域での子どもの冬靴の選び方ポイントを教えてください。
吉村 冬でもいちばん重要なのは、元気に走り回るときに履く運動靴です。冬の外遊びはおっくうに感じますが。夏にはできない経験ができるチャンスです。たとえば、気温が低い中で動くことで、心肺機能や体温調節機能などを育てる好機です。息を大きく吸ったりはいたりすることで、体がだんだん温まる気持ちよさを覚えます。
また、靴を履いて歩きだす1歳以降は「足感覚」が芽生える重要な時期です。面テープをしっかり締めて、フィットした靴でよい「足感覚」を育てましょう。実はこの感覚は将来の靴の履き方を左右する重要な感覚で、幼児期に身に着けるのが最も自然です。その第1歩として、自分で靴を脱いだり、履いたりしたがるようになったら、声かけをしながら正しい手順を教えましょう。靴教育の「適齢期」。とても重要な時期です。
積雪がある地域は、寒冷地仕様の長靴で、元気に外遊びを
――積雪がある地域では、冬、子どもはどんな靴を履いて過ごせばいいでしょうか?
吉村 冬、北海道や東北地方など、積雪の中で生活する地域の場合、雪の中で日常生活を送る期間が長いので、子どもたちも外で元気に遊びます。その際に欠かせないのが「寒冷地仕様の長靴」です。冬靴と呼ばれ、運動靴(夏靴)と呼び分けられているくらい日常的に履かれています。
このような靴は北国でしか売られていないでしょう。靴底の刻みは深く、筒部の内張りには保温のための起毛素材などが張られて、足元が冷えない工夫がされています。
素材がやわらかく足首を曲げてしゃがんだり、つま先立ちをしてしゃがんだりなど、さまざまな足や脚の動きに応じて曲がってくれます。なので運動靴と同じダイナミックな動きができ、機能的なのです。
積雪がある地域での、冬仕様の靴の選び方のポイントは?
――寒い地方仕様の靴でも活発に動き回らせたい、そのときの選び方のポイントを教えてください。
吉村 寒冷地仕様の長靴の場合、左右の足長のうち長いほうと同じ、もしくはプラス0.5㎝のものを選びましょう。また長靴の場合はふくらはぎの太さ(筒回り)が入るかどうかも大切なので、雪遊びの装備(靴下やスノーウエア、雪よけ足カバーなど)を身につけてから試し履きをしてみるのがベストです。
――ほかに注意をしたほうがいいことはありますか?
吉村 寒冷地用長靴の中には、靴底のかかとの部分に滑り止め防止の金属びょうスパイク(折りたたみ式になっていることが多い)がつけられているものがあります。親が滑りにくくて安心だろうと思って履かせてしまうと、思わぬけがをしてしまうという落とし穴があります。
幼児の遊びの状況を想像してみましょう。雪上でも構わず転げまわって遊びますし、凍った雪面で走り、スピードが出た状態でしりもちをつきながら滑りながらお友だちにぶつかって衝突する、というような場面がめずらしくありません。その際、運が悪いと足を前に突き出して突進することになるため、かかとのスパイクがお友だちの頭部や顔面に激突して激しい出血を伴うけがをする、といったケースが起きることがあり大変危険です。
保育園ではスパイクつきの長靴は禁止というところもあるとか。購入前に確認をしましょう。
子どもの運動靴の選び方には4つの条件が
――子どもの靴の選び方で、冬の季節に限らず、注意をすべきことはありますか?
吉村 運動靴選びで、推奨されているの条件は4つあります。
(1)面テープがついていて、足にフィットさせられる調節ができること。
(2)かかとがかたくて足の着地時にぐらつかず、足をしっかりささえてくれること。
(3)ファーストシューズでは靴底は平らで安定性があり、まだ不安定さのある立ち姿勢を足元で支えてくれること。セカンドシューズ以降は、踏み返し動作をしたときに曲がる足の部分(親指つけ根の足関節)と同じ部分に曲がりやすい工夫がされて(しなやかに曲がり、自然に戻る柔軟性)前進しやすいこと。
(4)カップインソールと呼ばれる形状の中敷きが入っていて、取り出せること。
――中敷きが取り出せたほうがいいのはどうしてですか?
吉村 インソールのかかとの端と赤ちゃん・子どもの足のかかとの端の位置を合わせて足を乗せることで、指先に差が出るので、その長さで靴内での足の状況の判断ができます。
つまり、その差を計ることで、まだ履けるか、もう履けないないかの確認の判断ができるのです。指先のゆとり量(捨て寸)が5㎜以下になったら5㎜上のサイズに変更します。すると、指先のゆとりは約1㎝になり、ゆとりを持って履けます。
ファーストシューズからセカンドシューズに変わるころ(1~2歳ごろ)は、1年で2cm成長し、その後は1年に1cm成長と変わっていくので、とくに2歳までは頻繁にサイズの確認が必要です。
また、お下がりは靴の消耗がなければどんどん行って大丈夫です。お下がりの靴はダメというインターネット上の情報があったりしますが、根拠はありません。お下がりをうまく利用してこまめにサイズ交換(0.5cmずつ)をしましょう。
――衛生面でも中敷きが取り出せたほうがいいでしょうか?
吉村 そうです。足は全身の中でもっとも細菌の繁殖が多く起きる場所なのを知っていますか。細菌は湿って温かな場所で繁殖し、低温で乾燥に弱いことはよく知られています。なので、インソールが取り出せることは、衛生面でも重要な役目を果たしてくれます。サッと取り出して洗い、短時間で乾かせる中敷きは優れモノなのです。汚れやすい子ども靴にとって、時短で清潔を保てることは大きなメリットです。お母さん・お父さんたちのお悩みでよく聞く、靴や靴下のにおいも細菌の繁殖が原因。そのお悩みも防げるのです。
お話・監修/吉村眞由美先生 構成/たまひよONLINE編集部
「大きすぎる靴や、不安定な子どもの足をサポートしない靴では正しい歩行ができません」と吉村先生は話します。赤ちゃん・子どもの足と歩行のの健やかな成長のために、適切な靴を選んであげましょう。
●記事の内容は2025年1月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。