3児のママ小児科医が実践。五感をはぐくみ、子どもの力が伸びる環境づくり【ママ友ドクター・西村佑美】
“ママ友ドクター®ゆみ先生”としてSNSやオンラインスクール、コミュニティで、子どもの発達に悩む親をサポートしている西村佑美先生。西村先生は。12歳の長男、9歳の長女、5歳の二男を育てるママでもあります。西村先生の連載第2回は「五感を育むための環境づくり」についてです。0歳代と1歳~6歳に分けて解説します。
3人の子育てそれぞれに、発達心理学からモンテッソーリなどさまざまに取り入れて
今回は、赤ちゃんから幼児までの感覚の発達を促す環境づくりについて、発達心理学からモンテッソーリなどの知育まで、さまざま取り入れて実践してみた私の子育て体験談をたくさん紹介します。「絶対に子育てはこうすべき」という方法は存在しないため、やってみたいと思えることを、無理ない範囲で取り入れてみてほしいと思います。
【乳児期(0~1歳)】赤ちゃんの視力の発達に合わせて、身近に置くものを変える
生まれたばかりの赤ちゃんは、目の前約20〜30cmの距離にあるものがぼんやりと見える程度です。月齢が上がるにつれて視力は発達し、色の識別や遠近感も身につきます。
そのため、私は以下の子どもの視力の発達を目安に子どもの目に触れるものを工夫しました。月齢が上がるにつれて好むものの変化がわかるので私も取り組んでいて楽しかったことを覚えています。
・0〜3カ月:モノクロや白黒の強いコントラストを好む時期
・3〜5カ月:赤や青などの原色を認識し始める
・5〜8カ月:色彩の区別がより明確になり、さまざまな色に興味を示す
・8カ月以降:色の違いを明確に認識し、好みの色が出てくる
たとえば、生まれてからの3カ月ごろまでの時期は、モノクロのコントラストがはっきりしたものを近くに置いて過ごしました。起きているときは明らかに反応してくれます。そして徐々に、赤や青などの原色を少しずつ取り入れて、やがて、お部屋全体がカラフルな空間になるように変えていきました。
ほかにも、寝返り前のねんね時期でも、鏡を目線の高さに設置しました。自分の姿を見る体験は新鮮な驚きのようでした。首がすわってきたら、カラフルな赤ちゃん用の絵本の読み聞かせを始めました。驚くほど集中して聞いてくれるので、小児科医の私もびっくり。
モンテッソーリ的な取り組みとしては、子どもの目線の高さに写真、アート作品のプリントを貼ってました。目が自然ととらえる位置に、視覚的な刺激を提供してあげるイメージです。
最近グレーやベージュなどの淡いトーン、いわゆる「くすみカラー系おもちゃ」が流行していますが、赤ちゃんの視力の発達のためには、明確なコントラストと鮮やかな原色で好奇心も刺激してあげたいものですね。
乳児期(0~1歳)は、心地いいと感じるママの声をたくさん聞かせて
赤ちゃんは胎児のときから聴覚が発達していて、生まれた直後からさまざまな音を聞き分ける能力を持っています。また、触れる体験はこの世界の物理法則(!)を知る大切な手段だと思ってたくさんのものを触れさせてみました。
聴覚や触覚、味覚の探索をサポートするため、日ごろからやさしいオルゴールや穏やかなメロディの音楽を流していました。また、童謡を聞かせたり、私が歌ったりも・・・。赤ちゃんは母親の声を最も心地よく感じるものとされているからです。
異なる音が出る素材や質感の違うおもちゃを用意して、カシャカシャ、リンリン、カタカタ・・・、それぞれの音の違い、なめらかな布、ざらざらした表面、冷たい金属、温かい木、小さな手で触れて素材の違いを体験させました。
生後半年を過ぎたいわゆる「歯がため期」は、赤ちゃんが物をなめて確認をする時期です。どのみち口の中は無菌状態ではないので「汚い」と思わずに、誤飲に注意しながら、安全なものであれば見守ってしゃぶらせていました。
お散歩の時間も感覚をはぐくむ絶好の機会。聞こえてきた音に対して「あ、わんわんの鳴き声が聞こえたね」「風の音だね」と説明していました。言語発達とセットで感覚認識の基礎を作っていくイメージです。
【幼児期・1~6歳】空間認知能力や体の協調性を意識してかかわろう
幼児期になると体の動きが活発になり、五感を使って遊ぶことでさまざまな感覚情報を脳で適切に処理する能力を促すことができます。毎日の遊びに少しだけ工夫をして空間認知能力や体の協調性を意識していました。
たとえば、クッションやマットを使った小さな山や障害物コースを室内に作ってみたりしました。ボールプールや小さなトランポリンを設置する、おもちゃコーナーと運動コーナーを明確に区切り、視覚的にわかりやすくするためマットを敷くだけでもOKです。
幼児期(1~6歳)は、安全な素材を選んで、どんどん触らせて体験させよう
固有感覚とは、姿勢の維持や運動の力の加減、バランス感覚、手先の器用さなどに関係する感覚のことで、これを発達させるために、さまざまな素材にリアルに触れたり体を動かしてみる体験が重要です。
ですので、正直、着替えが大変だと感じていた砂場や水遊びですが、できるだけ積極的に取り入れてました。その後、砂場遊び専用のサロペットを手に入れたおかげで着替えの負担ががぐっと減りました!
粘土や絵の具など、感触を楽しむ素材は口に入っても安全な素材を選びます。指先で粘土をこねたり、絵の具で自由に描いたり。そのほか、成長に合わせて、ボタンかけやひも通しなど、手先のこまかな動きを使う遊びも取り入れたいですね。私の長男の場合、4歳近くになってから取り組みましたが、もっと早く取り組むつもりでいいと思います。
日常生活のすべてが学べる環境です。水道をひねる、水をそそぐ、スプーンでよそう、布をたたむなど、大人からすれば簡単な動作も、子どもにとっては挑戦。小さいうちからあれこれ挑戦させてみましょう。うまくできないときはあたたかく見守りつつヘルプする気持ちを忘れずに。
子どもサイズの道具や家具を用意し、物の定位置を明確に。透明な容器やわかりやすいラベルを活用して、自分でおもちゃを出し入れできる環境をつくると、片づけが自然と習慣化しやすくなります。また、一度に出すおもちゃは少なめに。選択肢が多すぎると子どもの集中力は散漫になるのと、「一度遊んだら片づけてから次のおもちゃを出す」というシンプルなルールは守って。発達支援の場でも実践されています。
乳幼児期のデジタルデバイスとのつき合い方も大切
現代社会ではデジタルデバイスは避けて通れません。なかなか難しいことはわかりますが、できるだけ推奨される基準を知っておきましょう。
日本小児科医会では「2歳未満はスクリーンメディアを与えない」ということを推奨しています。脳の発達に必要な五感を使った直接体験の機会が減る、親子の言語的やりとりが減少する、視力発達への影響が懸念されるというのが理由です。デジタルよりアナログな絵本や木のおもちゃを中心にしましょう。
2~6歳の幼児期では、デジタルデバイスに触れることは「1日30分程度」であることが日本小児科医会では推奨されています。そしてできるだけ保護者が子どもと一緒に視聴して、教育的コンテンツを選択する、食事中や就寝前はデバイス使用を避ける、デジタル絵本よりもなるべく紙の絵本を選び触れて。
画面越しに興味をもったことを実体験につなげる時間も作ることが大切です。私の長男が1歳のころ、タブレット上でパズルを楽しんでいましたが、実物のパズルが全然できない姿を見てあせりました。「パズルを裏返す、立体的に見る」という力が画面越しでは育たなかったのです。
デジタルそしてAI時代に突入した便利な今だからこそ、子どもに五感をフルに使った体験をさせてあげることが親の大きな役割だと思います。でも環境づくりは完璧をめざさず、柔軟に変化させてOK。身近な素材でおもちゃ作りに挑戦し、その日しか遊ばなかったとしても、親子で作る工程から「できた!」と喜ぶこと、そして飽きるまでのすべてが重要な五感を育む体験です。
文・写真提供・監修/西村佑美先生 構成/たまひよONLINE編集部
「親が子どもと楽しめている状況と、見守る親のあたたかなまなざしこそが、子どもにとって最高の環境」と西村先生は言います。人生の中でも大切な乳幼児期を、あたたかな刺激でつつんであげましょう。
【参考サイト】
日本モンテッソーリ協会
ESDM公式トレーニングプログラム
日本感覚統合学会
日本小児科学会
文部科学省幼児期運動指針
日本小児科医会 子どもとメディア委員会
●記事の内容は2025年3月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。