【医師監修】予防接種の最新知識 予防接種はなぜ必要なの?意外と知らない基本のこと
出産後のあわただしい日々の中では、予防接種に関するきちんとした情報や知識を得ることがなかなかできません。そのため理解不足や不安感などから、接種のスタートが遅れるかたがたくさんいます。
そこで、予防接種で皆さん感じている疑問点や最新の情報を、神奈川県川崎市の「かたおか小児科クリニック」院長の片岡正先生に教えていただきました。
予防接種は波の高い海に入る前に安全な場所で泳ぐ練習をするのと同じ
――そもそも予防接種にはどんな役割があり、なぜ受ける必要があるのでしょう?
「最初にワクチンが開発されたのは、今から200年前。英国で死亡率が高い感染症・天然痘(てんねんとう)が流行していた時代です。ある医師が牛痘(牛のかかる天然痘)にかかった人は天然痘にはかからない、かかっても軽くすむことに気づき、あらかじめ牛痘ウイルスを接種する方法を発見したのが始まりです。
現在もワクチンの考え方は変わっていません。つまり、重大な結果をもたらす怖い病気にいきなりかかってしまう前に、その病気に軽くかからせたり、その病気の成分を体に入れて予行演習をして、本番に備えましょうということです」
――自然の成り行きに任せるのでは危険ということですね。
「自然にかかると、重症になってしまうことが少なからずあります。たとえば、“水ぼうそうは自然にかかったほうがちゃんとした免疫できるからいい”という声も聞きますが、自然にかかって重症になり、亡くなってしまうかたもいます。
自然にかかることで起こる重大な被害を最低限に食い止めるために、前もって練習しておくのが予防接種です。
泳げない人がいきなり流れの速い川や波の高い海に放り出されたら、おぼれる可能性があるでしょう。まずはそういう心配がない浅いプールで泳ぐ練習をして、それから川や海に出ましょう。それが予防接種の考え方です」
定期接種も任意接種も、重要性・かかる病気の危険度は同じ
※画像クリックで拡大表示可
――予防接種には国が接種すべきと法律で定めている“定期接種”と、希望者が個別に接種する“任意接種”があります。
上のグラフは2016年夏にベネッセコーポレーション「たまひよ生活リサーチ」が、0歳〜1歳6カ月未満の子を持つ女性約300人に実施した、予防接種に関するアンケート結果の一部。これによると、任意接種は定期接種と比較して、接種させた、もしくは接種させる予定の値が低いのが現状です。
「B型肝炎は2016年10月から定期接種になりましたが、おたふくかぜ、インフルエンザなどは任意接種です。任意は“受けても受けなくてもいい接種”という間違ったイメージを持っているかたもいますが、それはとても危険なこと。任意接種の病気も、定期接種と同じくらい重い症状になりやすい怖い病気です。
でも、ワクチンを接種すれば防ぐことができ、もしかかっても軽症ですみます。子どもの命にかかわる重い病気を防ぐのが予防接種。ワクチンで防げる病気はしっかりと予防して、子どもの命と健康を守ってあげましょう」
みんなが予防接種を受けることで、ワクチンを受けられない人も守られる
――病気にかからない、かかっても軽くすむこと以外にも、予防接種のメリットはありますか?
「現実には予防接種をどうしても受けられない人たち、受けられない時期があります。たとえば、MR(麻疹・風疹混合)の定期接種は1歳からですので、0歳の赤ちゃんは定期接種での麻疹(はしか)の予防接種を受けられませんが、その間に麻疹にかかると、とても危険なことになる可能性があります。
ワクチンを受けられない状態の人も病気にかからせないようにするためには、まわりの人々がちゃんと免疫を持ち、病気が流行しないようにすることが大事です」。
――妊婦さんも風疹の予防接種ができないので、風疹が流行すると大変です。
「免疫のない女性が妊娠初期に風疹にかかると、風疹ウイルスが胎児に感染して、先天性風疹症候群 (CRS)と総称される障がいを引き起こすことがあります。しかし、子どものころに風疹の予防接種をしなかったなどで免疫を持ってないかたは少なからずいます。そういうかたに、まわりの人が感染させないことがとても大切です。
予防接種には“自分が重い症状にならない”ことと“まわりの人も病気にさせない”ことの2つの意味があるんです」
予防接種を受けることが、病気の流行を抑えたり、免疫を持っていない人を守ることにもなるというのは、意外と気づかれていない点ではないでしょうか? それは他人を守るだけでなく、未来の子どもたちを守ることにもつながることですね。
(取材・文 かきの木のりみ)
●記事の内容は掲載当時の情報で、現在と異なる場合があります。
※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。
初回公開日 2017/09/07
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