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【2025年6月施行】経口補水液に、新基準!小児の感染症での脱水には、赤ちゃん用イオン飲料ではなく経口補水液を【小児科医】

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●写真はイメージです 写真提供/ピクスタ

猛暑日が続いています。赤ちゃん・子どもの水分補給に気を使っている人も多いかと思いますが、ベビー用イオン飲料と経口補水液の違いって知っていますか?「飲む点滴」といわれる経口補水液ですが、2025年6月から表示について新たなルールが施行されたそう(2023年5月19日に病者用食品として経口補水液が新設)。
「赤ちゃん・子どもに多いのは感染症にかかって嘔吐・下痢をすることで起こる脱水。その際は成分基準を守った経口補水液を飲ませることが大切です」と小児科医の太田文夫先生は言います。
「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」連載の#52は、経口補水液療法と、経口補水液の基準の変更の情報をインタビューでお届けします。

小児の脱水の原因は胃腸炎が多い

――赤ちゃん・子どもの夏の脱水で多い原因を教えてください。

太田先生(以下敬称略) 夏の脱水というと、熱中症を思い浮かべることが多いかもしれませんが、子どもの場合の原因は胃腸炎が多いです。嘔吐と下痢を伴うことで体中の水分と電解質が失われて脱水になります。子どもは夏に限らず1年中感染症による脱水が心配されます。
胃腸炎などで食事がとれなくなると、「点滴してください」と言って受診するケースもがありますが、世界中どこでも簡単に点滴ができるわけでもありません。

20世紀最大の医学上の進歩ともいわれる「経口補水療法」

――点滴以外の治療方法があるのでしょうか?

太田 脱水の治療として点滴は有用ですが、その常識が変わって来ました。世界中どこででも点滴に匹敵する治療を探る中で確立されてきたのが「経口補水療法」です。経口補水療法は、「20世紀最大の医学上の進歩」といわれることもあるくらい、治療の有用性が知られるようになりました。

コレラのように重症な脱水を起こしているときも、高濃度の電解質の入った経口補水液を使えば、点滴をしないでも症状が改善することが証明されているのです。すべての脱水が経口補水だけで改善するわけではありませんが、軽症・中等症の脱水には経口補水療法を第一に選択することで、効果が出ることがわかっています。

水と電解質とブドウ糖から構成される「経口補水液」が病者用食品の表示義務に

消費者庁から許可された経口補水液には、このマークがついています。提供/消費者庁食品表示課

――経口補水療法に使われる、経口補水液について教えてください。

太田 電解質の入った飲料が「経口補水液」と表示されてドラッグストアなどで売られているものを見かけることがありましたが、それらのものすべてが脱水治療に効果があるわけではありませんでした。
一般にスポーツ飲料(赤ちゃん用イオン飲料)と称して販売されている「電解質保有液」と、脱水の治療に有効な「経口補水液」とはその組成が大きく異なっていたんです。赤ちゃん用イオン飲料と経口補水液は違うものと考える必要があります。

経口補水液と表示があっても、Na(ナトリウム)やK(カリウム)濃度が薄い電解質液は脱水治療には不向きです。

――2025年6月から施行された表示ルールとは、その違いを明確にしたということでしょうか?

太田 そうです。経口補水療法用の経口補水液と、嗜好品や水分補給を目的とされる赤ちゃん用イオン飲料などを区別する必要があるということです。
消費者庁は、2023年5月に感染性胃腸炎による脱水状態の治療効果のある成分を含んだ病者用食品や製品について、「許可基準型病者用食品」として許可を出すことに決め、許可された製品だけが「経口補水液」という表示を許され、その製品には許可されたことを示すマークも表示することが決まったのです。消費者庁の許可を得た製品にはマ「消費者庁許可基準型病者用食品」のマークが表示されています。
2025年6月1日以降、未許可の「経口補水液」の流通は認められなくなりました。
赤ちゃん用イオン飲料などと経口補水液は違うもので、用途が違うことを認識しましょう。

消費者庁に許可された、「基準型病者用食品経口補水液」の組成の基準について

――マークをつけることができる経口補水液の成分について教えてください。

太田 表示できる経口補水液の成分基準は、WHOや米国小児科学会のガイドラインに出ているものに準じていて、以下のような成分になります。

・ナトリウム(Na)が100mLあたり92~138mg(食塩相当では、2.35g~3.53g)
・カリウム(K)が100mLあたり59~98mg
・塩素が100mLあたり106~212mg
・ブドウ糖が100mLあたり1.00~2.60g
・ナトリウムとブドウ糖の濃度比を1:1~1:3.5、浸透圧を300mOsm/L以下

かなり塩分濃度の濃いのが特徴です。
また、胃腸炎以外の脱水にも治療効果があると許可された「個別評価型経口補水液」には、個別に許可された疾患名の表示もされて、以前からマーク表示が許可されています。

――塩分濃度が濃いと飲みにくいのではないでしょうか?

太田 上記成分基準を満たした経口補水液は、ナトリウムとブドウ糖が適切な配合になっていて塩分濃度は、スポーツ飲料の3~4倍になります。ですので、かなり塩味が濃い製品です。
このため健康な人が試し飲みをすると塩味が濃くておいしくないと感じることがあり、飲まなくてはならない体調不良時に実際は飲めないのではないかと心配する人がいます。しかし脱水時には、不足した塩分を体が欲しいと訴えているので、むしろ経口補水液の濃い塩味をおいしく感じられるんです。

小児に多い胃腸炎による脱水は、1年中

――経口補水液の赤ちゃん・子どもへの与え方について教えてください。

太田 小児の脱水は、胃腸炎での嘔吐・下痢症状が起こることが多く、経口補水液は1年中使う機会がありますが、初めて使うときは必ず医療機関を受診して、医師の指導のもと与えましょう。
経口補水液にはペットボトル型のほかに、ゼリー製品もあり、小児の場合は、液体よりゼリー製品のほうが吸収がよく効果が高いと評価されています。飲ませ方は1度に飲む量を少なめにして、5分ごとに頻回に与えることが大切です。体重が15~20kgなら、1回の量は調理用の大さじ1杯が適量です。ゼリーは1パックに200g入っており、おおむね1時間で飲み終えると、脱水が改善します。ただし、脱水の原因の疾患が治るわけではないので誤解しないようにしましょう。

消費者庁の改正の背景には、定められた基準に満たさずに「経口補水液」としている商品では、脱水の改善に対応できない可能性があり、また、糖尿病や腎臓疾患など慢性疾患のある人の脱水予防のつもりが過剰摂取になると体調を崩してしまうことがあるので、そうならないように、ということがあります。

お話・監修/太田文夫先生 構成/たまひよONLINE編集部 

販売時には許可を得ている「経口補水液」と赤ちゃん用イオン飲料などを区別して並べるようにという指示も出ているようですが、脱水と診断されたときには経口補水液を選びましょう。赤ちゃん用イオン飲料は、嗜好品としての少量を飲ませる程度ということを忘れないようにしましょう。

ご存じですか?経口補水液の知識(消費者庁食品表示課)

●記事の内容は2025年7月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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