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「算数のテストはできるのに計算ができない・・・!?」。高校生で判明した「算数障害」。父の後悔とは?

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子どもが算数障害と診断され、その経験をもとに絵本『すうじのないまち』を出版した水木志朗さん。

算数の点数は悪くないのに、小銭の支払いや時計の読み方でパニックになる・・・。小学校や中学校では不登校にも・・・。アノマーツ出版代表の水木志朗さんは「親の育て方がいけないのだろうか」と悩んだそうですが、子どもは高校生のときに「算数障害」と診断されました。その経験から、算数障害をテーマにした絵本「すうじのないまち」を出版した水木さん。子どもの成長の様子や算数障害について聞きました。
全2回のインタビューの前編です。

計算は指を使って、バスの支払いでイライラ・・・日常生活に隠れていたサイン

算数障害の場合、数字の「3」を見ても、「さん」という名前(数詞)と3つのものがあるという概念を理解するのが難しいそうです。

――現在成人されているお子さんは高校生のときに算数障害と診断されたそう。算数障害とはどのようなものか教えてください。
 
水木さん(以下敬称略) 学習障害のひとつです。認知能力のアンバランスがあり、「1、2、3」と数字を見ても、数や数量、順序が結びつかない、計算方法がなかなか習得できない、文章題ができないなどの困りごとが起こります。

――診断前のお子さんはどんな様子でしたか?
 
水木 小学校2~3年生になっても指を使って計算をしていました。当時私は発達障害についても、算数障害についても知らなかったので「いつまでも指を使っていないで、頭で考えてみたら?」と言った覚えがあります。

とはいえ、学校の成績はいいほうだったと思います。国語や社会は問題なく、算数のテストでも60点、70点は取っていました。だから算数が苦手とはまったく考えていなかったんです。
あとから知ったのですが、子どもはドリルを丸暗記してテストを乗りきっていたようです。

日常の中でも、気になるところはありました。たとえば、バスに乗ったとき、料金を小銭で支払うのが難しい様子でした。料金が180円だったとすると、小銭で支払うにはいくつかのパターンがあります。「100円玉1枚、50円玉1枚、10円玉3枚」という組み合わせもあるし、「100円玉1枚、10円玉8枚」という方法も考えられます。あるいは、「50円玉3枚、10円玉3枚」という形もあるでしょう。

でも、子どもは手持ちのお金でそういった組み合わせを考えるのがストレスだったようです。そのためバスに乗るときは、イライラしたり怒ったりしたりすることが多かったです。当時はまだ交通系ICカードなども普及していませんでした。

また、時計を見て見通しを立てるのも苦手でした。13時に家族で出かける際、したくに20分かかるとします。すると、12時40分から準備にとりかからないと間に合いません。でも、出かけるぎりぎりまで別のことをすることもありました。
当時は算数障害などの学習障害について、ほとんど知られていませんでした。私たち夫婦も、自分の子どもが困っているとは気づかなかったんです。

繰り返す不登校の末にたどり着いた「算数障害」の診断

残り時間を目で見て理解できる「タイムタイマー」。水木さんも子どもの障害がわかってから「逆算時計」と呼んで活用するように。

――算数障害とわかったきっかけを教えてください。
 
水木 何度も不登校になったからです。最初に学校に行けなくなったのは小学校高学年のときでした。「本人は言っていませんでしたが、あとから思うと勉強についていけなくなったことも要因のひとつかと思います」当時は「育て方が悪かったのかもしれない。厳しくしつけすぎてしまったのだろうか」と自分を責めていました。そのときは学校の先生にも協力してもらい、しばらくすると通えるようになりました。

ところが、中学2年生ごろからまた学校に行けなくなって・・・。だんだん「子育てやしつけ以外にも、何か別の原因があるのかもしれない」と考えるようになりました。ちょうど社会的にも、発達障害や学習障害が注目され始めた時期でした。
そこで、1度きちんと医師に診てもらったほうがいいかもしれないと。高校に進学後、本人の希望もあり、精神科で発達検査を受けることになったんです。今から8年ぐらい前のことになります。

――検査の結果はどうでしたか?
 
水木 ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)と診断されました。さらに医師から「算数障害の可能性がある」とも言われました。
診断されたときは、私もまったく知識がなくて。正直なところ偏見もあったと思います。「まさか自分の子が・・・」と、ショックでした。
一方で子どもが小学生のころから「何かあるかもしれない」と言葉にできない違和感がずっとあったのも事実でした。なので診断を受けたことで、「こうした原因があったんだ」と謎が解けた気がしました。

子ども自身も「どうして学校に行けなくなったんだろう?」など、自分でも説明できないつらさがあったと思います。それが、特性が判明したことで気が楽になったところもあったようです。
診断のおかげで、私の子どもへの向き合い方も変化していきました。

「1万円はマンガ何冊分?」具体的な言い換えで深まった親子の理解

積み木を重ね、どれくらい数が多いのかを目で見て理解できるよう工夫しました。

――具体的にどのように変化しましたか?

水木 数の概念がわかりにくいのであれば、理解しやすく伝えるにはどうしたらいいかを考えるようになりました。

先ほどお話したように、子どもは時間を見て、先の見通しを立てて行動をするのが苦手でした。だから、「40分前からしたくをする」など中途半端な数字で区切るのではなく、わかりやすく「1時間前」などと伝えるようにしました。

また、お金の価値についても理解しにくかったようです。たとえばお年玉をもらったりすると好きなアニメのグッズなど、1万円くらいするものも気軽に買ってしまうところがありました。子どもが趣味に使うにしてはかなり高価だと思うのですが、1万円がどれくらいの価値があるのかがよくわからなかったみたいで。
だから「このグッズはひとつ1万円だけど、700円のマンガは10冊以上買えるんだよ」と、子どもの好きなものに置き換えて伝えました。すると、だんだん数の多さなどの概念が理解できるようになったようです。

算数障害研究の第1人者である筑波大学名誉教授の熊谷恵子先生によると、お金を使う経験をすることはとても大事だそう。駄菓子屋さんに行き、おこづかいでおやつを買ってくるなどの行動で、日常的な算数の能力をきたえることになるとのことでした。

――水木さん自身も、算数障害について理解を深めていったのだと思います。

水木 それまでは、子どもの行動に戸惑うことも少なくありませんでした。バスに乗るときに不機嫌になるのも、まさか小銭の計算が難しいのが原因とは想像もしていませんでした。
診断されたときには、子ども自身、うつ症状が出るような「発達特性に伴う二次的な心の不調」といわれる状況でもありました。
違和感は特性のためだったということを知り、私たち周囲の大人も、フォローしやすくなったのは本当によかったです。
また、外の世界とつながることの大切さも実感しました。

相談できる場所をつくる大切さを伝えたい

――外の世界とつながるというのは、具体的にどんなことでしょうか?

水木 子どもが不登校になったときは、「私たちの育て方が悪い」というような家族の問題だと思い、家庭内で抱え込んでいました。すると、どんどん重い空気に包まれ、行きづまっていたんです。
でも、病院に行って医師から診断を受けたり、カウンセリングを受けたりすることで、新しい知識を学ぶことができました。それがきっかけになり、家族全員が少しずつ変化していきました。

――困りごとがあったとき、家庭内だけで抱えないほうがよかったと思いますか?

水木 はい。妻は「親の会」などにも顔を出していました。相談できる場所があったのは大きかったです。
また、子どもは通信制の高校に進学しました。その学校は不登校や特性に理解があり、支えてくれました。

――お子さんは成人されたとのこと。現在はどうしていますか?

水木 通信制の大学に進学しました。語学が得意でさまざまな言葉の勉強をしています。
以前は子どもに、何事も平均的にできることを望んでいたと思います。でも、今は多少のアンバランスはあっても、「できることを伸ばして、できないことはそこそこに」と、得意を伸ばしたほうが楽しいし結果も出やすいと考えています。周囲からもほめられ、子どもにも自信がつくのではないかと感じています。

苦手だったバスの支払いは現在は交通系ICカードで対応しています。先ほどの算数障害の第1人者・熊谷先生の言うとおり、お金をあつかうことは、算数障害の人にとっていい訓練にはなります。でも、キャッシュレス活用によってよけいなストレスがなくなるのであれば、上手に取り入れることも大事だと思います。

算数障害をはじめとする学習障害の特性があると、子ども自身は生きづらさを感じがち。でも、子どもは自分の感じる違和感などを伝えるのが難しいようです。周囲の大人が気づき、フォローすることが大切だと思いました。
とはいえ、こうした特性のことを知らないと、気づくのが遅くなる場合も。もっと多くの人に知ってもらうため、活動ができたら・・・と考えています。

お話・写真提供/水木志朗さん 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部

▼続きを読む<関連記事>後編

水木さんのエピソードにあるように、算数障害の困りごとは計算ドリルの中だけでなく、バスの運賃支払いや時間の逆算といった日常の何げない瞬間に現れます。「平均的にできること」を目指すのではなく、特性を認め、得意を伸ばしていく。その1歩が、子ども自身の自信を取り戻し、家族が笑顔で未来へ向かう鍵になるのではないでしょうか。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

水木志朗さん(みずきしろう)

PROFILE
デザイナー。アノマーツ出版代表。北海道生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン科卒業。氷河期世代。雑誌や書籍のデザイン事務所を退社後、いくつかのデザイン事務所に勤務。2009年にエディトリアルデザイナーとして独立。不登校、発達障害の子育て、両親の介護などを経験。一念発起し2025年にアノマーツ出版を設立。出版第1号が絵本『すうじのないまち』。

アノマーツ出版のサイト

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2026年1月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

『すうじのないまち』

“算数障害”をテーマに描かれた、おばあちゃんが話してくれた不思議なまちの少女との出会いの物語。 困り事のある子どもと社会を繋ぐ絵本。 濱野京子・文、ユウコ アリサ・絵 /1980円(アノマーツ出版)

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