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【児童精神科医に聞く】「ADHDの子は増えている」ってほんと?うちの子が多動ぎみだと思ったらどうする?

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●写真はイメージです 写真提供/ピクスタ

いつも落ち着きがない、そそっかしくて気が散りやすい・・・子どもにそんな様子が見られたら「もしかして注意欠如多動症(以下、ADHD)?」と気になることがあるかもしれません。30年以上にわたり、発達障害の臨床・研究に携わってきた児童精神科医の本田秀夫先生に、ADHDの特性や対応のしかたについて聞きました。

授業中に立ち歩いてしまうえいたさん

授業中に気が散って立ち歩いてしまうえいたさんのケース。(『最新 マンガでわかるADHDの子どもたち その子の特性を活かした、独自の処世術』より)(マンガ/フクチマミ)

――ADHDの子が生活する上で困るような特性にはどんなものがありますか?

本田先生(以下敬称略) ADHDの主な発達特性には大きく2つの柱があります。1つは「多動性・衝動性」、もう1つは「不注意」です。どちらか1つだけが目立つ場合と、すべての特性が目立つ場合があります。多動性・衝動性の特性が強い子は、落ち着きがなく、思いついたらすぐ行動してしまい、1つのことを最後までやりきれず、じっとしていることが苦手です。このタイプは比較的早く、幼稚園や小学校低学年までに受診につながることが多いです。

不注意が目立つタイプでは、忘れものが多い、うっかりミスが続く、時間にルーズ、片づけが苦手などが生活上の問題になります。この場合、「そのうちできるようになるだろう」と思われやすく、受診が高学年以降になるケースが多いです。

――ADHDの特性があって受診する子の場合、具体的にどんなケースがあるか教えてください。

本田 拙著に掲載した事例をご紹介します。小学2年生のえいたさんは、授業中に、授業の内容以外のことが気になって、つい立ち歩いてしまうお子さんでした。先生に注意されれば席に戻るので、授業のルールは理解しているようですが、しばらくするとまた、つい動き出してしまうのです。

えいたさんは多動性・衝動性の特性が強いと考えられます。えいたさんのように、じっと座っているのが苦手な子も高学年になればある程度座っていられるようになることが多いです。また、掲示物を減らして気が散りにくい環境にする、といった対策することもできます。こういった特性がある子の場合は、授業中に少し立ち歩いても大目に見てほしいと思います。

ADHDのある人が増えたといわれる理由

ADHDの特徴(『最新 マンガでわかるADHDの子どもたち その子の特性を活かした、独自の処世術』より)(イラスト/フクチマミ)

――最近、ADHDの子どもや大人が増えているという声も聞こえてきますが、実際はどうなのでしょうか。

本田 私たちが2022年に発表した研究(※)では、2010-2019年度の間のADHDの年間発生率は、0-6歳の子どもで2.7倍、7-19歳で2.5倍、20歳以上で21.1倍に増加したことがわかりました。

大人になってADHDと診断される人の多くが不注意、つまりミスが多いタイプです。多動性・衝動性が目立たなかったから子どものころは問題視されなかったけれど、大人になって仕事上でミスが多い、うまくいかないといったことで、自信をなくして受診するケースが多いです。一方、自分の苦手なことが目立たずにすむような進路を選べると、支援や医療の対象にならずにすむ人も多いです。

――ADHDのある人が増えたというより、見つかるようになったということでしょうか。

本田 そういうことでしょう。発達障害についての研究が進み、2012年に国際診断基準が変わったことも影響しています。それ以前は、自閉スペクトラム症(ASD)があるとADHDを併記できず、ASDを優先して診断するルールでした。しかし診断基準が改定され、ASDとADHDを併せて診断してよいことになり、ADHDがあると診断されやすくなった面はあると思います。その改定以降、ASDとADHDのどちらかだけでなく、特性が併存しているという考え方が一般的になりました。

※信州大学医学部医学科「2012年から2017年にかけて大人のADHDの診断数が日本で急増 -全国の診療データベースを用いた大規模疫学調査-」

乳幼児健康診査を正しく受けることは、将来のための子どもの権利

――見つかるようになった、という点では、3歳や5歳での乳幼児健康診査を受けることも大事でしょうか。

本田 1歳半健診と 3歳児健診は、知的障害と自閉スペクトラム症を把握するためにとても有効な健診です。そして最近整備が進められている 5歳児健診は 、ADHD や学習障害の早期発見につながる可能性があると思います。

健診は、診断をつける場ではなく「将来ADHDなどの特性が出てくる可能性が高い子を把握する」ためのものです。診断が確定するのは小学校入学以降になることが多いでしょう。

健康診査によって発達特性があることがわかることの意義は、発達特性がある可能性を前提にして、教育や子育ての支援を始められることです。発達障害がある子の場合、問題があきらかになったときに子ども本人がすでに傷つく体験をしていることが多いんです。
発達障害の可能性があると気づくことで、まわりが発達障害の特性があるということを前提にしてかかわれるようになることはとても大事です。
もう1歩踏み込めば、乳幼児健診でのチェックの有無にかかわらず、子どもと接する大人の多くが発達障害について理解し、可能性を考えながらかかわることが大切だと考えています。

――最近、健診前に問診などの項目を親子で予習する親もいるようです。

本田 それはおすすめしません。健診はその場を乗りきるテストではなく、将来子どもにとって必要な支援につなげるためのもの。テストの一夜漬けと同じで、予習してその場は乗りきれたとしても、子どもの特性が変わるわけではありません。むしろ、子どもが必要な支援を受ける最初のチャンスを逃してしまいます。

健診は、発達の特性がある子がどんな教育を受ける権利があるのかを確認するためのものと考えてほしいですね。

――親としては、衝動的に動いて日常生活がままならない、となると、どうしてもしかってしまうことがあります。親はどう対応したらいいのでしょうか。

本田 親が子どもをしかるシーンは大きく3つあると思います。「危険なことなど、しつけとして必要なとき」「つい腹が立ってしまったとき」「まわりの目が気になるとき」。
危険なことやルールを伝えることは必要です。そして、どうしても腹が立ってしかってしまうことも人間だからしかたありません。しかったあとに「またやっちゃったな」と振り返り、でも、むやみに子どもをしかりすぎない意識をもつことが大切です。

公共の場で子どもがほかの人に迷惑をかけた場合には、親が「すみません」と謝らないと、社会常識を問われてしまうような場面もたしかにあります。親がしかる機会を減らすためには、しからずにすむ環境を選ぶこと。本人が自由に動いても大きな問題にならない場所(たとえば、公園、児童館など)を生活の中心にする工夫が重要です。

気をつけたいのは「この子はしからないとダメだ」と、親が思い込んでしまうこと。しかってもADHDの特性が改善するわけではありません。苦手なことを何度もしかって緊張させてしまうと、さらに失敗してしまいます。ミスをなくそうとするよりも、うまくいったらラッキー!というくらいおおらかに構えましょう。

ADHDのある子どもの自信を育てるために

ADHDのある子に「ちゃんとして」と言い続けるのは、怪獣の大群を差し向けるようなものなのだそう(『最新 マンガでわかるADHDの子どもたち その子の特性を活かした、独自の処世術』より) (イラスト/フクチマミ)

――先生が長く発達障害の研究をする中で、日本社会での受け止め方は変わってきていますか。

本田 私は30年以上、発達障害の研究に携わってきました。最近では「発達障害」という言葉自体は広く知られるようになり、人ごとではないと認識される時代になってきたと感じます。社会的な建前では多様性が受け入れられやすくなってきてはいるものの、発達障害のある人に対して「でも実際、あの人って困るよね」と捉える人たちも少なくない現状があると思います。

日本人は、「こうあるべき」というきちょう面さが強く求められる環境が多いです。それは、ADHDの人にとっては生きづらい面になります。多様性というのは、きちんとできる人はきちんとやる、それができない人は別の役割を果たせばいい、そう認め合えることだと思うんです。互いを認め、攻撃し合わずに共存できるような社会。多様性というのは本当はそういうものだと考えています。

――親自身も、子どもに発達障害があることを認めにくい場合もあるかもしれません。

本田 発達障害の特性がある場合、生活での困りごとを防ぐための工夫が難しい場合もあります。だから、周囲の標準の中に入ろうと合わせるのではなく、標準自体の幅を広げればいいんです。

ADHDの多動性や衝動性は、多くの場合、成長とともに落ち着きます。不注意も「絶対に忘れてはいけないこと」だけ対策をとるなど工夫すれば、子どもの自信を育てることができます。そのためにも健診などで発達障害の可能性があるとわかったら、早くから子どもがのびのびと育つ環境を整えてあげることが大切です。注意されすぎる環境では、自己評価が下がり、その子本来の明るさも失われてしまいます。

私は、すべての子に発達障害の特性と重なる部分があると思って育てたほうがいいと思っています。子ども本人が無理しなくても楽しく過ごせて、結果としていろんなことでほめられるような環境で育てれば、すべての子が心の健康を損なうことなく、明るく前向きに生きていけると思うんです。

お話/本田秀夫先生 イラスト/フクチマミ 取材・文/早川奈緒子 編集・構成/仲村教子(entente)、たまひよONLINE編集部

ADHDがあることを問題視しすぎず、特性に合わせた育て方を考えるためには、環境を整えることが大切です。「すべての子に発達障害の特性があると思って育てる」。本田先生のこの言葉は、すべての親へのメッセージと言えるでしょう。

本田秀夫先生(ほんだひでお)

PROFILE
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。長野県発達障がい情報・支援センター「といろ」センター長。精神科医。医学博士。
1988年東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、1991年から横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授。2023年より長野県発達障がい情報・支援センター「といろ」センター長。

●記事の内容は2026年4月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

「最新 マンガでわかるADHDの子どもたち その子の特性を活かした、独自の処世術」

ADHDの子どもの特性を前向きに受け止め、その子らしさを伸ばしながら生きていくためのヒントをまとめた一冊。子ども期に大切なかかわり方や支援のポイントを、マンガと専門解説で具体的に紹介。本田秀夫・著/フクチマミ・マンガ 1760円(バトン社)

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