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自閉症の赤ちゃんの行動特性(症状)と診断方法、サポートの仕方

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発達障害は、脳の機能障害が原因で、その場にふさわしい社会的行動がとれないことが特徴です。発達障害は生まれつきの障害ですが、乳幼児期にその行動特性が顕著になり始め、特に早い段階から保護者や周囲の人たちが障害に気づきやすいのが自閉症です。
※近年、アメリカの精神医学会の診断基準が改訂され、「自閉症」「アスペルガー症候群」を診断名として分類せず、統一して「自閉症スペクトラム(ASD)」と診断するようになっていますが、ここでは従来の診断名である「自閉症」「アスペルガー症候群」をそのまま使用しています。

自閉症の特徴は? 赤ちゃんのときにどんなサインが?

 自閉症には次の三つの特徴があり、3歳頃までに行動特性として顕著に現れてきます。
・ことばの発達の遅れ
・他人とのコミュニケーションでの困難さ
・特定のものや場所、行為への強いこだわり
 ただ、発達障害の中でも、自閉症は赤ちゃんのころから特有のサインを出しています。
・視線が合っても反応しない
・抱っこしたり、あやしても喜んだり、笑ったりしない
・パパやママ、身近な人がそばに来てもうれしそうにしない
・一人でもさびしがらない
・ミルクやおむつ替えなどを泣いて要求することが少ない
・ママをハイハイして後追いすることがない
 自閉症の赤ちゃんは、一人でいることが好きで、親にとっては手のかからない赤ちゃんであるのです。
 なお、自閉症全体の8割には知的障害(IQ70未満)が伴いますが、残りの2割は知的な遅れがありません。知的な機能が高い自閉症を「高機能自閉症」と呼びます。

自閉症の子どもの特徴 成長するにつれて現れる特性

 成長と共に自閉症の子どもに顕著になってくる行動特性があります。ただし、すべての子どもに同じような行動特性が現れるというわけではありませんし、また、いくつかの行動特性が当てはまるからといってその子が自閉症であるということにはならないことを知っておいていただきたいと思います。

自閉症の子どもの特徴的な行動例

・人とコミュニケーションをとろうとしない
赤ちゃんのころに一人でいてもさびしがらず、2、3歳になっても人とのかかわりを好みません。名前を呼んでも振り向かず、同年代の子どもとの遊びにも関心を持ちません。

・ことばの発達が遅く、身振り手振りも乏しい
2、3歳になってもことばが出てこないのは、自閉症の大きな特徴の一つです。保護者の方が子どもの自閉症に気がつくきっかけとしては、ことばの遅れに気がつき、医療機関などを相談することが多いのです。また、身振り手振りを交えて自分の感情を伝えることも少ないのも特徴です。

・道順、手順、物の位置などへの強いこだわり
自閉症の子どもは、変化に対応するのが苦手です。目的地への道順が変わる、電車やバスで座る席などが変わると不安になってしまい、パニックを起こすことがあります。家の中の家具の位置など物の置き場所が変わることに対しても不安を感じます。保育園や幼稚園に行くようになると、1日のスケジュール(時間割)が変わったり、遠足などの特別な行事があったりしたときに、それに合わせた行動をするのが苦手です。

・感覚が過敏(あるいは感覚が鈍麻)
触覚、視覚、聴覚、温度感覚などの感覚器官働きに特徴があります。例えば、救急車のサイレン、掃除機の音、犬の鳴き声など普通の人が平気な音に強い恐怖を感じたり、人に触られただけで痛みを感じたりすることがあります。また、味やにおいに対するこだわりが見られ、偏食が激しく、同じ食べ物しか食べない子もいます。

・迷子になりやすい
自閉症の子どもは外出前などで自分の関心があるものを見つけるとそちらに気を取られてしまい、親とはぐれてしまうことがよくあります。さらに、親とはぐれてしまっても不安がったり、泣いたりしないことがあるため、周囲の人が迷子だと気がつかないケースもあります。

ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)とは?

 自閉症には、ことばの遅れ、対人関係の困難さ、特定のものへの強いこだわりという三つの行動特性がありますが、その三つの現れ方には個人差があります。また、知的な遅れについても、重いケースから知的な遅れがない場合(高機能自閉症)まで、その人によって違います。
 自閉症と似た特性を示しながら、ことばの遅れがないという特徴があるのがアスペルガー症候群です。ことばの遅れはなく、むしろおとなが使うような難しい語句や表現を知っていることがあり、コミュニケーション能力には問題がないと思われることがありますが、ことばを字義通りにしか受け取れないため相手の皮肉や婉曲表現が理解できなかったり、自分が思ったことをそのまま口にしたりするため、コミュニケーションに支障が生じることがあります。また相手の表情から喜怒哀楽を読み取ることも苦手です。
 このように、自閉症、アスペルガー症候群には、実際には知的な発達の状況や行動特性の現れ方は多様で、さまざまなタイプいます。そのためどこからがアスペルガー症候群で、どこからが高機能自閉症かといった分類にこだわるよりも、多様な自閉性障害を包括的にとらえて、ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)という枠組みで考える見方が広まってきています。自閉症の子どももそれぞれに日々発達し、成長していますから、診断名にしばられることなく、その子のその時々の状況と困難さに向き合い、支援の方法を考えていくことが重要なのです。

自閉症の原因は? 赤ちゃんへの接し方、育て方との関係は?

 自閉症の原因ははっきりとはわかっていません。しかし、脳の機能上の障害であり、さらにそれは脳そのものに外傷や病変があるから生まれるものではなく、複数の遺伝子のかかわりが原因になっていると考えられています。
 生まれつき、脳の機能の中で十分に働かない部分があるため自閉症特有の行動特性が現れます。ですから、親の育て方や接し方、生まれ育った環境などが原因のものではありません。乳幼児期のスキンシップ、しつけの仕方などは確かに子どもの育ちに影響を与えますが、自閉症特有の行動特性が生じる原因とは無関係です。

自閉症の診断方法 赤ちゃんのうちに診断できる?

 自閉症の行動特性は0歳児のころから現れています。保護者自身が周囲の子どもと比べて「少しほかの子と違う」と感じることもありますし、また、定期健診などで小児科医が自閉的傾向に気がつくこともあります。しかし、赤ちゃんから幼児期の成長のしかた、スピードはまちまちなので、一時的に自閉症のような行動が見られても、その後消えてしまったり、発達が追いついたりすることがあるため、実際に自閉症の診断が行われるのは2歳時以降になってからが多いのです。
 しかし、すぐに診断はつかないけれど、自閉症の可能性があると判断されることはあります。その場合は、定期的に医療機関を受診し、経過観察を行ってもらうことが望ましいでしょう。それによって赤ちゃんの状況を丁寧に観察していくことができ、適切なタイミングでその子に合った療育(治療教育)につなげることができるからです。

自閉症の治療、自閉症の子への対応方法

 自閉症の原因となっている脳機能の特異性を薬や手術で治すことはできません。日常生活で本人が困り感を感じるようになったときには、周囲の接し方の工夫や本人の社会的技能を高めるトレーニングを行っていきます。それを「療育」(治療教育)といいます。
 自閉症の子どもの脳の中には、通常に機能する部分がたくさんありますから、その部分に適切な働きかけをしながら、うまく機能しないところを補っていくことが可能です。それによって本人の困り感や不安を少なくするわけです。
 時間をかけて療育を積み重ねていくことで本人の困り感が減り、生活が安定し、社会への適応能力が高まっていきます。ポイントは、失敗してもしからない、小さな成功でもほめる、目標は低く設定して一つずつ乗り越える、です。

・療育の柱/行動療法
かんしゃくやパニックなど、その場において好ましくない行動に対しては静かに見守り(叱責や罰を与えたりせずに無視する)、問題行動が収まり、好ましい行動がとれたときにはほめたり、ごほうびを与えたりする。

・療育の柱/構造化
1日のスケジュール(時間割)を表にまとめて明確にしたり、作業の手順を細かいステップに分けて文字や絵でわかりやすく説明したりするなど、今何をやればよいか、なにをやらなくてよいかを明らかにして、情報の取捨選択をしやすくする。

・療育の柱/感覚統合訓練
音や光、匂い、触感など、五感で受けた刺激をどのように認識・反応し、行動すればよいかを指示する脳の働きが感覚統合です。コマ回しやあやとり、折り紙などで手指の細かな動きと目や手の協調運動を促したり、三輪車やボール遊びで身体の複数の部分を同時に使う動きを行い、感覚統合を養います。

 発達障害の療育は、早期に行うほどが有効であると考えられていますが、その療育は、本人の行動特性に合ったサポートであることが前提です。療育の内容は一人ひとり異なりますから、発達障害の心配があるときは、いち早く医療機関を受診することが大切です。
 また、医療機関、療育機関とつながることがきっかけになって、保護者が同じ事情を抱えたほかの保護者と情報交換することができるようになるなど、保護者自身の孤立化を避けることもできます。親の会、サポートグループなどで子どもが自立して社会生活を営めるよう、ソーシャルスキルを養うトレーニングを自主的に行っているところ、自閉症がある子どもへの保護者としての接し方を学べる講座などを開催しているところもあります。保護者が一人で悩みを抱え込まず、さまざまな人たちと連携し、サポートを受けることが子どもにとってもプラスに働くことになるのです。

(取材・文/たまひよONLINE編集部) 

監修/榊原洋一先生
東京大学医学部附属病院小児科医長、お茶の水女子大学副学長などを務める。「子ども学」の研究のため、ベネッセコーポレーションの支援のもと設立されたCRN(チャイルド・リサーチ・ネット)所長。発達障害など子どもの心と体の研究の第一人者。お茶の水女子大学名誉教授。

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