「子どもが覚えるシンプルな言葉は美しい」 Charaが語る、初の絵本に込めた想い
撮影/清水将之(mili) スタイリング/岡部俊輔(UM) ヘア&メイク/杉田和人(POOL)
なつかしいような、切ないような、不思議な空気感を持つCharaの音楽。
今回、初めて制作した絵本『LITTLE HEARTBEAT』も、Charaらしさが詰まった、オリジナルな世界が広がる1冊です。
実はこの絵本、ストーリーをCharaが、絵を実妹の綿引光子さんが担当しています。
絵本を作ることになった経緯と、自身が子育て中に読んだ絵本の思い出を教えてもらいました。
絵本制作のきっかけは、父の死
『LITTLE HEARTBEAT』
著者:綿引美和+綿引光子
発行:ビームス株式会社
(5400円)発売中
本書のために書き下ろした楽曲「まだみぬあなたへ」もセット。
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私が育った埼玉県・川口市は、鋳物で有名なファクトリータウン。亡くなった父も、アーティストがつくるものをサポートする美術鋳造業という職人でした。
妹が1人いるんですが、小さいときから一緒に、父の仕事関係の展示会や絵画展に連れていかれました。でも、小さいからよくわかんないんです(笑)。
すごく大きな作品を見て、「よくわかんない…、でも、おっきいな~!」って。
そのときはわからなかったけど、私たち子どもにたくさんの“点”をつけてくれたんだと思います。
妹は大学で美術を専攻して木版を学び、私はシンガーソングライターになったわけです。
父が亡くなったときに、“二人で何か一緒にやりたいな、やるとしたら絵本かな”と、自然な流れで決まりました。
人間だから、根底には光と影がある
私にはいつも、“歌うように話して、話すように歌いたい”という気持ちがあります。
今回も、そうやって言葉をつむげればいいなぁ、と思っていました。
一筆書きのような感じで、ワーッと書いたストーリーがあって、それをあとでページ分けしたり、整理したり。
絵に関しては、みっちゃん(妹・光子さん)じゃなかったら、ここまでできなかったと思うくらい、けっこう厳しくダメ出ししました(笑)。
でも、そうしたことで、二人のアーティスト性や、クリエイティブしたものを最終的に守ることになったと思っています。
帯にコメントをくれた満島ひかりちゃんからは、“バロック姉妹”って呼ばれてて。
「Charaさんの音楽も、妹さんの絵もバロックを感じる!」って。
確かにそうなんですよね。
めちゃめちゃ明るい姉妹なんですけど、やっぱり人間だから根底には光と影がある。
それを感じてもらえる作品になったと思います。
子どもができて、私も一緒に成長した
育児中はたくさん絵本を買って読んでいました。
オリジナリティを入れない読み方もあると思うんですけど、私は内容や状況によって変えていました。
ライブと同じで、お客さんの反応をみて変化させる感じです。
たとえば、
“卵落としちゃった、あ!”
というフレーズがあったとして、そのママの読み方がおもしろくて反応したときは、次に進まず、もうちょっと繰り返す。
“卵落としちゃった、あ!”
→“ゲラゲラゲラ…”
→“卵落としちゃった、あ!”
って、コールアンドレスポンスをつなげていく(笑)。
自分も楽しんでいましたよね。
子どもって、大人が忘れていたような、シンプルな言葉から覚えていきますよね。
そのへんに落ちているようなありきたりな言葉なんだけど、すごく強い言葉。
私は音楽を作るとき、シンプルすぎる言葉は避けていたんですけど、子どもを持ってから、そういう言葉が“美しいな”と思って使うようになりました。
子どもができたことで私自身が強がらないでいられて、一緒に成長できたんだと思っています。
『ひよこクラブ』2019年2月号では、絵本の内容に迫ったインタビューを掲載! こちらもあわせてチェックしてみてください。(取材・文/ひよこクラブ編集部)
New Album
『Baby bump』通常版
ユニバーサルミュージック
(3240円)発売中
■Profile/Chara
1991年、シングル「Heaven」でデビュー。オリジナリティあふれる楽曲で人気を得、’97年のアルバム『Junior Sweet』は100万枚を超えるセールスを記録。ファッションやライフスタイルも注目される唯一無二の存在として、幅広い分野で活躍中。
公式サイト:CHARA Official site