子どもがぐんぐん伸びるアドラー流の「言葉かけ」とは?
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「何しているの!」「ダメって言ったでしょ!」「めんどくさいなぁ」。子育て中、ついそんな言葉を発してしまった経験のある人は多いと思います。しかし親が発する言葉は、子どもに多大な影響を与えるもの。せっかくなら、悪い影響よりも、いい影響を与えたいものですね。そこで、子どもに自信を持たせながら育てる「アドラー流子育て」の「言葉かけ」を実践してみてはどうでしょう? 子どもが自信を持って、積極的に行動できるようになれば、子どもはぐんぐん伸びてくれるはず。アドラー流子育てでは、いったいどんな「言葉かけ」が有効なのでしょうか。『幸せ親子になれる 0歳からのアドラー流怒らない子育て』(秀和システム)の著者、三宅美絵子さんに、その心得を伝授してもらいました。
言葉かけ効果は0歳からアリ!
――アドラー流子育ての「言葉かけ」にはどんなものがありますか?
三宅さん:たとえば「ありがとう」「助かったわ」「楽しいね」「よくできたね」といった言葉などです。これらの言葉に共通しているのは、感謝の気持ちや、共感の気持ちがそこに含まれているということです。ですので、ただ声をかけるのではなく、共感している態度を見せる必要もあります。心を込めて言ったり、相手の目を見て言ったりすることで、子どもは勇気づけられます。
――そういった「言葉かけ」が、なぜ勇気づけになるのでしょう?
三宅さん:アドラー流子育てにおける「勇気づけ」とは、単に子どもを励ますということではありません。子どもが自分に自信を持って、積極的に行動できるようになる力をはぐくむことが「勇気づけ」です。簡単なのは「ありがとう」という言葉。「ゴミを拾ってくれてありがとう。部屋がきれいだと気持ちいいね」「(弟や妹と)遊んでくれてありがとう。助かったわ」といったように、「ありがとう」を言う場面は日常にあふれていますよね。共感する言葉を交ぜながら、こういった言葉をくり返しかけてあげることで、子どもは家庭の中で自分の居場所を確かめることができ、貢献できる自分自身のことも好きになれます。その気持ちがベースとなって、積極的行動ができるようなるのです。
――逆に言うと、否定的な言葉をかけていると、消極的になってしまうのでしょうか?
三宅さん:その可能性はあります。「どうしてそんなこともできないの?」とか、「それはやっちゃダメよ」といったことを親は言ってしまいがちですが、そうすると子どもは、「どうせうまくいかないから最初からやらないでおこう」「怒られるからやめよう」といった気持ちになってしまうかもしれません。ですので、このような「ダメ出し」ではなく、「ヨイ出し」をしてあげてください。ヨイ出しというのは、先ほどの「ありがとう」「助かったよ」「よくできたね」など、できていることに注目して声をかける言葉です。そういうことを言えるタイミングは、日常の中にいくらでもあるので、意識して探すようにしてみてください。ごはんを食べたら「たくさん食べたね」、片づけをしたら「あっという間に片づけちゃったね!」といった言葉をかけてあげるのです。
――本当にダメなことをしてしまった場合は、「ヨイ出し」が難しくありませんか?
三宅:命令形や否定形ではなく、「お願いする口調」「肯定文」の言葉をかけてみてください。走ってはいけないところで走ったら、「走らないで!」ではなく、「歩こうね」と言い換えられます。大事なものに触ろうとしていたら、「触っちゃダメ!」ではなく、「ママの大事なものだから一緒に大切にしようね」と言い換えられます。
――意思疎通できない赤ちゃんでも「言葉かけ」は意味がありますか?
三宅さん:もちろん、大きな意味があります。赤ちゃんは自分から意思を発信できなくても、受け取る力はすごくあります。たとえば相手の表情。いつもニコニコ話しかけてくる人がいると、6ケ月くらいから赤ちゃんはその人がいるだけで安心できるようになります。表情でも会話をしていると思ってください。言葉かけのコツは、アイコンタクトとスキンシップを取りながら話しかけることです。たとえば、おむつ替えのときに、「めんどくさいなぁ」と思って嫌そうな顔でやるのではなく、笑顔で「いいうんちが出たね~」「おしりちゃんこんにちは」「ありがとう、おむつ替えやすかったよ」といった言葉をかけて一緒に喜んであげると、赤ちゃんは「自分はこれでいいんだ」と思えるようになり、自信も持てます。肌を通して伝わる感触は一生忘れないと言われるので、ぜひ赤ちゃんのときから、スキンシップを通した言葉かけをしてほしいと思います。
「それやらないでね」「触らないで」「危ないからやめて」などなど、子どもに対して1日1回はダメ出しをしているような気がする筆者。子どものためにと思って言ったことも、そうなっていないこともあると知り、反省してしまいました。「ヨイ出し」の言葉かけは簡単ではありませんが、それができるようになると、自分のイライラも減るハズ。子どものためだけでなく、親自身がプラス思考になるためにも、ヨイ出しの「言葉かけ」を積極的に取り入れてみたいですね。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修/三宅美絵子さん
アドラーカウンセラー、ベビーサイン講師。笑顔の子育て教室「blue bird」を主宰し、アドラー心理学の勇気づけなどによりママと子どもの笑顔を増やすお手伝いをしている。著書に『幸せ親子になれる 0歳からのアドラー流怒らない子育て』(秀和システム)。2児の母。