あこがれの“お友だち親子”に潜むデメリット
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子どもとなんでも話せる関係性を築いたり、ママ・パパのことを下の名前で呼ばせてフレンドリーに接したりする“お友だち親子”にあこがれるママ・パパが増えているようです。
日本でお友だち親子が注目され始めたのは1980~1990年代。日本人の親子関係は、従来の親が子どもを支配する関係から、欧米的な子どもを個として尊重する関係のほうがいいのでは!? と考えられるようになりました。しかし日本の場合は、欧米のように自分の意見を主張しつつも互いに尊重し合い、親子でお互いの価値観の違いを認め合う関係には至りにくいという問題点が…。日本の子育て事情と見合わせると、親子関係の欧米化は過渡期にあるようです。
お友だち親子のメリット・デメリットについて、乳幼児期からの親子関係に詳しい、日本女子大学人間社会学部心理学科教授 塩崎尚美先生にお話を伺いました。
お友だち親子が、子どもの成長に与える影響とは…
親子の仲がいいこと自体は悪いことではありませんが、お友だち親子の関係が行き過ぎてしまうとデメリットもあります。メリット、デメリットを比べてみながら、理想的な親子関係を考えてみましょう。
お友だち親子のメリットは!?
お友だち親子は、親友のようになんでも話し合えるため、次のようなメリットがあります。
●子どもの隠し事が比較的少ない
●子どもに何かトラブルが起きても、すぐに気づいてあげられる
こうしたメリットは、とくに幼稚園や小学校などの集団生活が始まり、親の目が行き届かない時間が増えてくると実感するようです。
お友だち親子のデメリットは!?
お友だち親子は親と子が一体化して依存し合ったり、子どもを自分の分身ととらえたりするなど、行き過ぎると次のようなデメリットが!
●親離れ子離れができない
●子どもが親を頼りすぎ、親が何でもしてあげたりすることが習慣になると、自分で解決する力が育たない
●子どもが“親の考えが絶対!”という価値観をもちやすい
●子どもをしかることができず、しつけができない
●子どもに過度な期待をかけやすい
こうした問題点が大きくなると、子どもの心の成長に影響を及ぼしかねません。また親子で依存し合う関係性が強いと、たとえば子どものトラブルに親が介入して大切な友だち関係が崩れるなど、子どもの世界を壊す危険性もあります。
ジブラルタ生命が2016年に行った“親子のつながりに関する調査”によると「子どもにとってどんな親になりたいと思いますか?」とママ・パパに質問したある調査によると、1位は「何でも相談でき、楽しみや喜びを共有できる存在」。つまり、子どもと楽しいことや喜びを共有できる“お友だち親子”のような関係性を望んでいる人が多いという結果でした。お友だち親子を求めるのは、パパよりママの割合が高いという結果も。お友だち親子を求めるママ・パパの中には、自分自身の幼いころを振り返って「親が厳しくて嫌だったから…」など、さまざまな思いや考えがあるでしょう。けれど、大切なのはバランス。親子とはいえ、適度な距離を保つことが子どものためになることを忘れないでおきたいですね。(取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部)
監修/塩崎尚美先生(日本女子大学人間社会学部心理学科 教授)
臨床心理士。専門は発達臨床心理学、乳幼児からの親子関係、子育て支援。一男一女のママでもあります。