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麻疹で脳炎、おたふく風邪で難聴、赤ちゃんの死・・。防げる病気で苦しむ親を診続けた、ある小児科医の思い

更新

アジアの新生児の赤ちゃんのクローズアップの肖像画眠っている
paulaphoto/gettyimages

今回のテーマは「なぜ予防接種なのか」。育児雑誌ひよこクラブでもおなじみ、ベテラン小児科医の太田先生が、赤ちゃんとその家族がHappyになるために、知っていてほしい育児の最新情報を発信。
「小児科医 太田文夫先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」第2回

今の健康を守るためにこそ、予防接種が必要

小児科医の仕事は、体調の悪い子どもの診断と治療が主ですが、健康管理のための乳幼児健診と予防接種も大切な仕事です。
病院での仕事は主に前者。後者はクリニックを開業してからかかわりが深くなってきました。勤務医時代は主に心臓に病気をもつ子どもたちを診て来ました。他の病気にもかかって持病を悪化させないためにと、できるだけワクチン接種をしてきたつもりでしたが、開業して通院してくる子どもたちの母子健康手帳を見ると、健康なら当然済ませているはずのワクチン接種が済んでいない子の多さにびっくりしました。
かつて数年おきに麻疹の流行があり、脳炎や重い肺炎で入院する子、中には命を落とした子もいました。ほかにも風疹の脳炎や重症水痘で亡くなった子、ムンプス難聴を発症した子たちも診てきましたので、元気な子にも積極的にワクチン接種を勧めないといけないなと思い始めたのです。
そのうちにまた麻疹が流行し、症状が重くなって入院をお願いする子も出てきました。開業した2000年当時でも麻疹ワクチンは一歳の誕生日から接種はできましたが、今のようにすぐに接種する人は多くはありませんでした。なかには、ワクチンを打たせないまま、きょうだい2人が一度にかかってしまい、つらい思いをさせてしまってから「打っておけばよかった」と後悔された保護者もおられました。

予防接種の大切さを訴え続けたい

2003年には麻疹撲滅を目指す会(一年間に8名の乳幼児死亡が出た沖縄と、多くの患者の対応に追われた北海道の小児科医らが提唱)が立ち上げられ、その活動に私も加えてもらいました。そこでは「接種機会があるのにすぐに打たないのはもったいない、それを改善するためのキャンペーンができないか」ということで、“1才になったらすぐ接種”“お誕生日にワクチンプレゼント”などのキャッチコピーが作られました。この活動は評判がよく次第に保護者にも受け入れられて、1才すぐのワクチンの接種率も上がり始めました。
私自身も何かできないかと思い、親しい小児科仲間と相談して2005年に千葉マリンスタジアム(ロッテ球団のホームグラウンド)に“はしか撲滅”“ワクチン打って麻疹完封!”という意見広告を出すことに。その年はロッテが好調で日本シリーズで勝利したこともあり、この広告のメディア露出度も上がって評判に。一般の方にもワクチン接種の大切さを知ってもらうチャンスがつくれたかなと思っています。

(構成/ひよこクラブ編集部)

※前回記事
産後はすぐに準備を! 赤ちゃんに予防接種はかわいそうじゃない!今、小児科医が伝えたいこと」での予告内容とテーマを変更しております。

太田先生が小児科医仲間と出した千葉マリンスタジアムの広告

監修・文/太田文夫先生

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