日本にもあるワクチン接種の地域差 まずは保護者がワクチンの理解を
ベテラン小児科医として赤ちゃん&家族に向き合い続けている太田先生。予防接種について、赤ちゃんのお世話についてetc.家族みんなでHappyになるために、知っていてほしい育児の最新情報を発信! 生まれて初めての予防接種のポイントって?「予防接種で赤ちゃんを守りたい!小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」第4回
最初の接種から複数を同時接種するのがスタンダード
さて、生後2カ月になりました。最初の予防接種だからワクチンは一本だけなんて、暢気に構えてはいけません。それぞれのワクチンを何カ月から始めたらいいかは、十分に検討された結果決められています。私がおすすめするのは初回接種はロタウイルス、B型肝炎、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌(以下、肺炎球菌)の四種類の同時接種です。ちなみに当院での接種部位ですが、経口で接種するロタウイルス以外は、太ももに接種しています。
2011年4月ヒブワクチンと肺炎球菌の定期接種が始まってすぐに、接種後に亡くなったお子さんの原因が同時接種のためではないかという説があり一時同時接種にストップがかかりましたが、専門家たちがお子さまの死と同時接種との関係はないと力説したおかげで冤罪をまぬがれて早々に接種が再開されました。欧米では、わが国に先んじること10年以上前から同時接種で一気に免疫をつけるという方法が普通に行われて安全性は確認されていたのですから、再開は当然の結果でした。2015年ですでに「ひよこクラブ」読者の90%以上は同時接種を選択しています(※)。なかには「かかりつけ医で一度に2本までしか打ってもらえない(できればもっと一緒に打って欲しいのに)」という意見も出ています。
※ひよこクラブ2015年1月号「予防接種」305人へのアンケート結果より
ママ・パパ自身も積極的にワクチンのことを知って
医師の中にはまだ同時接種に消極的な方もいらっしゃいますが、その多くは年齢の高い方です。この世代の先生たちは若いころからワクチンは一本ずつしか打ったことがないという経験重視派が多いというのが理由のよう。もしくは、小児科医が少なく、小児科以外の専門の先生方の協力を得て予防接種体制が成り立っている地域かと思われます。先日、そういう地域から私の医院近くに転居されてきた方の母子健康手帳を見せてもらってビックリしました。もう3歳を過ぎているのに、水痘ワクチンが未接種だったのです。お母さまに未接種の理由を伺ったところ、「先生が打てと言ったものは全部打ったはず」とおっしゃいました。どうやら接種医が水痘が定期接種になったことをご存じなかったのが未接種の理由だったようです。予防接種は自治体主体の事業ですから、医師会や医師への情報伝達や広報に問題があったためかもしれませんが、お母さまご自身でもっとワクチンに関心を持っておられれば防げたことだったかもしれません。わが子のワクチンについては他人任せではなく、保護者も主体性をもって接種するワクチンの種類や接種時期にも関心を持たないと子どもたちをVPDから守れないなと思いました。ぜひ、ママ・パパご自身に予防接種とワクチンのことについて、もっともっと調べてほしいと思います。
ワクチンはかかりつけ医におまかせ……となってしまう人も多いと思います。けれど、大切な赤ちゃんのこと、母子健康手帳の記録に抜けがないかどうか、チェックするのを習慣にしましょう。(構成/ひよこクラブ編集部)