赤ちゃんを「叱る」べき時はどんな時?プレしつけを専門家に聞く
赤ちゃんは9カ月を過ぎるころから、はいはいや伝い歩きなどで行動範囲が広がりできることも増えてくるので、注意をしなくてはいけない行動も多くなってきます。危険なことをしたとき、お友だちをたたいてしまったとき、イヤイヤをしたとき…。どうやって「ダメ」を伝えるのが正解? 乳幼児期からの親子関係を専門とする、塩崎尚美先生に「ひよこクラブ」が聞きました。
軽い力でも、たたいて教えることは絶対にやめて
『しかる』とは、危険や社会のルールを『教える』ことで、感情的に『怒る』こととは異なります。ただ、善悪の区別がつかない赤ちゃん時代にしかるのは、基本的に危ないことをしたときだけ。危ないものを口に入れようとしたり触ろうとしたりしたら、大人が体で止めて真剣な表情と声で「ダメ」と伝えましょう。1才を過ぎたら「イタイイタイだよ」など、短い言葉でダメな理由を少しずつ教えていきます。
危ない場面に出くわすと、思わず「ダメ!」とたたいてしまうこともあるかもしれません。けれど、たたかれると赤ちゃんは恐怖心が先立ち、何がダメなのかがわからなくなります。軽い力だとしても、たたいて教えることはやめましょう。
2才ごろまでは、事故防止対策を最優先に
0~1才代は「危ない→けがをする→だからしてはいけない」という因果関係を理解できません。「危ない」と伝える必要はあるけれど、何でもかんでも「ダメ」と言っていると好奇心の目をつまんでしまう可能性も。
2才ごろまでは、できるだけ「ダメ」を言わなくて済むよう、まずは安全な環境を整えることを最優先に考えましょう。
お友だちに手を出したときは、しかる必要はなし
0~1才代は、お友だちへの興味から、手を出してしまいやすい時期。赤ちゃんが相手をたたいてしまうのは「かかわりたい」という気持ちがあるため。悪意はまったくないのでしからずに、行動を体でとめながら「パチンはダメよ」と、簡潔な言葉でやさしく伝えましょう。
1才を過ぎたら「お友だちがイタイイタイだよ」とわかりやすく、してはいけない理由も合わせて伝えます。それでも執着するようなら、ほかの遊びに誘ったり外に連れ出したりして気分を変えさせるのがいいでしょう。
ポジティブな言葉がけで「イヤイヤ」は減ってくる
赤ちゃんは離乳食や着替え、おふろなどを嫌がることがよくあります。食べたい気分ではない、動きが制限されるのが嫌、心の準備がまだできていない…など拒否する理由はさまざま。イヤイヤをするときは、赤ちゃんの気持ちを第一に考え、無理強いは避けて。無理にさせても、ますます嫌になってしまい悪循環…。まずは楽しい気分になれるよう、笑顔で話しかける、ゲーム感覚でお世話をする、終わったあとの楽しいことを提案するなど、工夫してみて。
離乳食の場合は、おなかがすくように生活リズムを見直すことも重要なこと。少しでも食べたら「おいしいね」「食べてくれてうれしい」など、ほめて食べる意欲を引き出します。着替えやおふろは、おもちゃで気を引くと、やる気になってくることが多いでしょう。
毎日の生活習慣は、ポジティブな言葉がけをセットにすると、身につ
きやすいもの。おふろに入ったら「さっぱりして気持ちいいね」、おむつ替えをしたら「おしりがすっきりしたね」など繰り返し伝えることで、嫌がることが減ってくるかもしれません。
「“ダメ”という言葉は否定のイメージがありますが、端的で赤ちゃんでも理解しやすいので使っていいですよ」と塩崎先生。危険なことをしたときは真剣に、お友だちトラブルなどのときは穏やかに「ダメ」と伝えましょう。赤ちゃん時代のプレしつけは、わかりやすさが何よりです。
(取材・文/中澤夕美恵、ひよこクラブ編集部)
■監修/塩崎尚美先生
(日本女子大学人間社会学部心理学科 教授)
臨床心理士。公認心理師。専門は乳幼児からの親子関係。育児の悩みや思春期の子を持つ親たちのカウンセリングも行っています。
■参考/ひよこクラブ2019年7月号「9カ月からのプレしつけ」