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将来の収入にも差が!テストでは測れない子どもの「非認知能力」とは

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rogkov/gettyimages

昨今、で注目されている「非認知能力」は、子どもの就学後の成長、さらには大人になってからの仕事や生活にも深くかかわる重要な能力なのだそう。非認知能力とはいったい、どのような能力なのでしょうか? この能力を伸ばすことで、どんなメリットがあるのでしょうか? そこでたまひよONLINEでは非認知能力を高める育児に詳しい、玉川大学教育学部非常勤講師(乳幼児発達学科)の大豆生田千夏先生にお話を聞きました。

関連:0~2歳は習い事より遊び!注目の“非認知能力”をはぐくもう

熱中する力が子どもの長期的な成長を促す

――「非認知能力」というのは、具体的にどんな能力を言うのでしょう?

大豆生田千夏先生:まず、それ「非認知能力」と対をなす言葉として、「認知能力」というものがあります。これは記憶したり解釈したりする能力で、学校のテストなどを通じて数値で測りやすい能力のことをいいます。「非認知能力」というのは、それとは反対に数値では測りにくい能力のことです。「社会情動的スキル」ともいいますが、たとえば忍耐力や社交性、楽観性、自尊心、思いやりなど、数値化しにくいけれども、生きていく上で不可欠な能力がそれに当たります。

――非認知能力を伸ばすとどんなメリットがありますか?

大豆生田先生:非認知能力が伸びると、物事に熱中したり、集中したりする能力も上がります。がまん強くなり、困難なことにも挑戦できる。まわりの人と仲よくしたり、何かに取り組んだりしたときの満足感も高まりやすい。総じて言うと、一生、精神的にも社会的にも豊かに生きていく力が身につきやすいといえます。

――逆に、非認知能力が低いと、どんなデメリットがありますか?

大豆生田先生:本人が、自分の人生というものをつまらなく感じてしまうと思います。
自分の好きなこと、楽しいことを熱中してやるのではなく、人から言われたこと、客観的によしとされるもの、高い評価を得られるものを追い求めるようになります。そうなると、自分が得られる満足感は低く、挫折したときに粘り強く努力することも難しくなります。

――非認知能力という言葉は知らなかったけれど、子どものころに何かに集中して取り組もう、思いやりや感謝の気持ちをもとうなどと言われたことのある人は多いと思います。非認知能力の重要性は、いつごろから言われていることですか?

大豆生田先生:実は以前から重要だということは言われていました。しかし、教育現場や家庭にはなかなか浸透していませんでした。評価しやすい認知能力のほうにスポットが当たっていたからです。非認知能力というものは、あとあと大切なものだったと気づくものですが、すぐには結果が見えません。経済や効率を優先した社会の中では、どうしても認知能力の陰に隠れてしまいやすかったのです。
2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマン教授が、幼児期に非認知能力がはぐくまれた子は、大人になってから収入が多い、持ち家率が高い、学歴が高いなどの差を数値で示しました。見えづらかった非認知能力が、多くの人に納得しやすい形であらわされたのは画期的なことでした。

――認知能力を伸ばすには勉強をたくさんすればいいと思うのですが、非認知能力を伸ばすにはどうすればいいのでしょう?

大豆生田先生:普段の遊びや生活の中で伸びていく力なので、まずその子自身をよく見ることが大切です。その子がやっていることを否定するのではなく肯定的に受け止めながら、「何ができるのか」という視点ではなく、「この子は何が楽しいのかな」という視点で見る。肯定的に見守られる中で、子どもの中に基本的信頼感が育ちます。自分であることが大好きになり、まわりの世界に関心を持ち、関係を持っていこうという土台ができます。

――子ども自身が好きなことに気づくと、非認知能力が伸びやすいんですね。親が働きながら育児をしていて、子どもと接する時間が少ない場合はどうしたらいいでしょう?

大豆生田先生:保育園でも常に誰かが見ているので、心配する必要はないと思います。親だけでなく、いろんな人の目でその子を見てあげることは大切です。親が気づかないことに第三者が気づくこともある。決して、ママやパパが一人でずっと見ていなくてもいいのです。

――ここまでのお話で、非認知能力を高めたほうがよさそうなことはわかるのですが、やっぱり結果の見えやすい認知能力を求める考え方に慣れていて…。

大豆生田先生:家族が置かれているまわりの環境にもよるでしょう。やはり、認知能力を高く評価する人たちの集まりの中にいると、どうしても認知能力を優先してしまいます。ですので、まわりが非認知能力を評価してくれるようなコミュニティーを探してみるといいと思います。私はそのような家族を支援する活動をしていますし、皆さんの地域にもそういった集まりがあるかもしれません。なければ、地域の児童館などに足を運んでみるなど、外に出て交流を広げてみるといいと思います。

――認知能力と非認知能力の“両取り”は可能ですか?

大豆生田先生:可能です。むしろ片方だけ伸ばす方が難しいかもしれません。ただ、認知能力は見えやすいので、つい目を奪われてしまいがちですが、常に非認知能力に思いをはせるようにするといいでしょう。すなわち、できたかできないかだけを見るのではなく、子どもの気持ちを考えながら様子をよく見ることが大切です。「こういうことは好きだけれど、こういうことは嫌いなんだな」とか、「はじめは様子を見て最後にやってみるんだな」とか、逆に「スタートは楽しかったけれど疲れちゃったかな」とか、子どもの様子を見ると発見が多くあるでしょう。朝から晩までご機嫌がよく何にでも100%集中して頑張る子はいません。自分の状態を肯定的に受けとめてもらえることが、非認知能力も認知能力も伸びることにつながります。

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子どもの就学前から、「どんな習いごとをさせようか」と考えるママ・パパは多いでしょう。「あれはきっと将来に役立つから」とか「ほかの家もやっているから」といった、親目線で考えてしまうことはあると思います。しかし非認知能力を高めるには「うちの子どもは何が好きか」という目線で考えることが大事なようです。普段の遊びの中から、夢中になれるものを見つけてあげたいですね。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)


監修/大豆生田千夏先生
玉川大学教育学部非常勤講師(乳幼児発達学科)、子どもと家族支援研究センター副代表。臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士として、長年子育て相談にかかわる

参考/『非認知能力を育てるあそびのレシピ 0歳~5歳児のあと伸びする力を高める』(大豆生田啓友・大豆生田千夏著、講談社)

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